灰色髪のクラスメート
登校中に良く分からないモンスターを倒し、美幼女が大好きな友達から逃れるために逃走してきた。安全確認してから魔法を解き、もうダッシュで学校まで走ってきた。
「はぁ、間に合った……」
「おい、健斗、大丈夫か?」
教室のドアを開けようとした時、後ろから呼ばれ体がビクッと震えた。
「何だ、驚かすなよ」
おそるおそる振り返ると、類友タケではなくクラスメートの1人だった。
「健斗が遅刻なんて珍しいな」
「俺だって、色々あるんだ。それよりタケ、見かけなかったか?」
「いいや」
「ならいいんだけど」
そう言って俺はドアを開いた。
「……」
そして閉めた。
「どうした健斗?」
「……」
俺はもう一度、ドアを開けて教室を見回し。そして再び閉める。
怪しい友人はいなかったが……あきらかに昨日、いなかった変な奴がいる。それも女子と何気なく会話してるのだ。
「おい、健斗。先、入るぞ」
クラスメートAはドアを開けた。
「おはよー」
そしてクラスメートAは何事もなく中に入ってしまった。
おいおいおい。何で、気づかないんだ? あんな灰色の髪をした女を、あきらかにおかしいだろ。
「…………」
「どうしたの柴沼君?」
近くの女子は中に入らない俺に首をかしげていた。
「えーっと」
俺はおそるおそる灰色の女子生徒を見上げようとしたら……背後から声した。
「あ、健斗。我が、る・い・と・も、の健斗くぅん」
しまった。タケが上機嫌でやってくる。
どうする、健斗。これでは前方の狼、後方の虎だ。
後方からやってくる虎こと類友は関わりをもちたくない。となれば襲い掛かってくるとはわからない前方の狼がマシだ。
俺は教室に入ると急いでドアをしめた。同時にカエルが潰れるような声がしたが、気にせずに力を込めて開かないようにする。
「あれ、開かない。誰だ鍵をかけたのは……」
ナイスな事を言う類友だ。鍵をかければ、ドアに力をこめなくても済む。俺は近づいてきたクラスメートに頼むことにした。
「悪いんだけれ……どわっ」
頼む前にそいつはドアを開けた。2対1で耐えられるほど腕力はないので手を離し、教室のドアは勢いよく開いてしまった。
「ぐわっ。急に開けないでくれ」
急に開いたのでタケ側も体勢を崩して倒れていた。
「…………」
友人はほっておいて開けた奴に文句を言おうとしたが……奴、後方の狼だった。
灰色の長い髪。鋭くて水色の目をした長身の女子生徒……見た目で恐いと思われてしまうシベリアンハスキーのような感じだ。
「あれ、おはよう、ハナさん」
「……」
ハナと呼ばれた見知らぬクラスメートは無言のまま手を上げてタケの挨拶の返事をした。
「さあ、それよりも健斗。俺は今日、劇的な出会いをしてしまったんだ、見てくれ」
しまった、怪しい友人を忘れてた。タケは俺が逃げ出すよりも早く携帯を開き待ち受け画面を見せ付ける。
「魔法少女だよ。現代に魔法少女が光臨したんだよ」
「…………」
俺から大量の汗が噴出した。
悪夢だ、これは悪夢だ。混乱した僧侶が仲間に即死魔法をかけまくるほどの悪夢だ。
画像は変身した魔法少女ココが一撃必殺ホーリーハンドをくだした瞬間だった。しかも後ろ側から。
揺れるスカートとチラリと見えしまった乙女の恥じらいがしっかりと撮られていたのだ。
「タ、タケ。お前、それ、待ち受けにするつもりか?」
「もちろんさ」
「…………」
俺は空を、いや、室内なので天井を仰いだ。
恐ろしいことが起きてしまった。