類は友を呼ぶ
魔法少女ココは新しい技を手に入れた。
肉球つき犬の手型グローブで上から下に叩き落す。これはどうみても……
「お手、だな」
「まさか、それを技の名前にするんじゃないでしょうね」
朝の登校中(もちろん近所の犬っ子巡りを終えてから)右隣にいる茶色髪をした柴犬系美少女で魔法少女の相方メニは見上げていた。
「犬好きにはもってこいの名前だろう」
「だぁ、健斗にはネーミングセンスがないんじゃなくて、センスそのものがない」
「どういう意味だよ、それ」
「お願いだから、ライトハンドとか、ホーリーハンドとか。もうちょっとマトモな技名にして」
「けーんーと、くんっ」
俺達の会話をさえぎったのは後ろから来た奴だった。
「タケか。おす」
「って、あれ? 今までいた子は?」
「今まで? さっきから俺1人だけど」
メニは誰かが来るとスマホ(これが本来の姿)になってポケットに納まってくれる。誰にも目撃されないのはすごいと思う。
「いいや、俺は見た。健斗の右横に明るい茶色髪をした美幼女がいたのを」
竹谷岳流通称、タケ。1年の時から友達をやっているが、こいつは幼い子供を見ると幸せになれるという……そういう趣味を持っている奴だった。とはいえ二次元とかがメインで、やってはいけない事まで手をだしていない。
『類は友を呼ぶってやつだね』
メール着信を鳴らし、メニが画面に今のメッセージを出した。当たっているけれど、こいつに言われるとカチンとくる。
「健斗、俺との約束を忘れたわけじゃないだろうな」
タケを忘れてた。少し放置しただけなのに、奴の暴走は進んでいた。
「覚えているよ。タケがかわいい犬っ子を情報を提供する代わりに、俺は美幼女情報を教える」
「そうだ。酒を酌み交わして結んだ類友(類は友を呼ぶ)の契りを」
「飲んだのはイチゴミルクだろ」
もちろん、イチゴミルクはタケが好きだからで、俺が選んだわけではない。
「まあ、忘れていないならばいい。で、さっきの美幼女は?」
「だから、いないって。幻でも見たんじゃねぇのか? あ、ごめん、着信鳴っている」
俺は少し走り、距離をあけてから通話着信を鳴らすスマホに出た。
「話が盛り上がっているところ、悪いんだけれども事件発生」
「いや、中断してくれて、ありがとう。場所は?」
「後ろ」
「へ?」
「うわあああ」
メニが言うのと同時に類友、タケが悲鳴を上げていた。
振り返ってみると、そこには灰色の物体がいた。人ぐらいの大きさをした山の形をした物体だった。
「何だあれ?あんなモンスターなんているか?」
記憶にアクセスし、モンスター検索をしたがゲームで見るモンスター情報にひっかかることはなかった。
「ゼリーみたいにぷるんぷるんしているから、しいて言えばスライムか? 洋ゲーで出てくる方の。とにかく……」
俺は友人を見捨てて人目がつかないところまで走った。
「メニ、変身準備を」
「OK」
俺は毎度おなじみにスマホ画面に現れた『PUSH 変身』ボタンを押して光に包まれた。
数秒とたたず、犬耳尻尾を持つ魔法少女に変化した。
「柴犬を愛する気持ちは誰にも負けられない。柴犬ラブピュアファイター ココ。参上」
誰もいないとわかっていても決め台詞とポーズをとるのは魔法少女にとってお約束。
「……ふふふ」
声がした。どっと汗が拭き出す。
「美幼女センサーを感知したから着てみたら、かわいい子、発見」
タケ。いつの間に、というよりもさっきのモンスターから良く逃げられたな。
と関心している場合ではない。この怪しい奴から逃げなければ、というよりモンスターを戦うのが魔法少女の役目。
そうだ、世界中の犬っ子が『えへ』と笑える世界にするため、俺は悪と戦うのだ。
「じゃあ……」
これ以上、奴と関わりたくないので軽い体を使って、近くの塀にジャンプして、それから屋根に飛び移った。屋根を飛び移り、モンスターがいる目的地に進む。
「登場したばっかりで悪いけれども、ホーリーハンド」
屋根から飛び降りた俺は肉球付きグローブを出現させ、新技をよく分からないモンスターに振り下ろした。
ゼリー特有の柔らかい感触がしたかと思うと、灰色の塊はあっという間に消滅した。
「勝利」
勝利の決めポーズをとりたかったが、飛び降りた反動でそのまま高く飛び上がった。
もちろん、類友から逃れるため。