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俺が魔法少女になったら  作者: 楠木あいら
魔法少女の日常
3/28

相方をカスタマイズしよう

 魔法少女デビューした日の夕方。帰宅した俺にメールが届いていた。


「スマホにメール?」


 スマホの番号やメールアドレスを友達や家族に教えた覚えはない。

 まだ慣れない指裁きで受信されたメールを開いてみた。宛先が魔法少女育成協会……わかりやすいけれども夢がないよな。


「なになに。柴沼健斗(しばぬまけんと)様、このたびは魔法少女の登録ありがとうございます。そして魔法少女、柴犬ラブピュアファイター ココのデビューおめでとうございますって何で『魔法少女育成協会』が知っているんだ?」

「そりゃ私が報告しているもん」


 スマホがしゃべった。魔法少女の相方メニなのはわかっている。前回まで電話着信が鳴って会話していたのだが……


「あのね健斗、あたしは魔法少女の相方なのよ。スマホからかけているどこかの人間職員というオチはないからね」


 それを指摘してみたら、怒られた。メニは本当にスマホの中にいるのか、スマホそのものらしい。


「それより健斗、メールの続きを読んで」

「はいはい。デビューおめでとうございますの後だったな。闇の力も増し始めてきた今、ココ様のご活躍を我々一同、心より願っております。……何かビジネス文書だな」

「重要なのはその後」

「なお、ココ様が魔法少女デビューしたことにより、相棒メニのカスタマイズのロック解除となりました」


 メニはそこを待っていたようだ。


「というわけで健斗、スマホのボタンを押してね」


 スマホのメールモードから『PUSH カスタマイズ』と出ていたが、数秒でボタンが消えた。


「重要な事を忘れていた。健斗、このカスタマイズボタンは1回しかできないからね。ピュアな心で押さないとじゃないと私が変な姿になって出てくるから。変な姿になったら、とんでもないイヤガラセするからね」

「魔法少女の相方の言うセリフじゃねえよ、それ……」


 変な姿ね……ん?


「なって出てくるって」

「うん、実体化してくるよ」

「スマホから」

「そう」

「…………」


 ん、まあ、ファンタジーだからいいか。ここで驚いていたら、先に進まない。


「改めて、健斗、かわいいカスタマイズよろしくね」


 スマホ画面に『PUSH カスタマイズ』と現れた。

 ピュアな心で魔法少女を可愛くカスタマイズ……それをやるのが男子高校生。ものすごい映像だな。

 俺はスマホに指を伸ばす。

 メニは可愛くっていうが、別に魔法少女の相方ってきれいなお姉さんでもいいんだろ。そうだよな、犬、特に柴犬が大好きでも、そこは男子高校生。セクシーな相方を希望したい。


「…………」


 ボタンに触れる瞬間、俺の脳裏に何かの視線を感じた。まっすぐな目で見つめる、可愛い柴犬が


「はぁっ」


 ごめんよ、心のなかに住むピュアな俺……というより心の中に住むピュアな柴犬っ子(意味不明)


「俺が悪かった。そうだよ、柴犬っ子を想う心に邪ま(よこしま)な心なんてないんだよっ」

「おーい、健斗……戻っておいで」


 閑話休題(かんわきゅうだい)


 取り乱してしまった心を沈めてから目を閉じた。何も考えず心をキレイにしてスマホのボタンを押す。

 ぼわんと音がした。そして少々の煙がスマホを包む。


「……どーなっているんだこのスマホ」

「お、やったぁ。とうとう実体化できた」


 スマホの謎はおいといて、気になっていた実体化したメニはというと。


「ふむ」


 我がピュア心ながら、なかなかの出来だった。肩にかからない長さの茶柴色の髪にくりっとした目を持つ、柴犬感のある美少女になっていた。

 俺の魔法少女姿のと違い犬耳や尻尾ははえていないので、外を普通に出歩いても仲の良い兄妹として、変な目で見られなさそうだ。


「初期装備は真っ白いワンピースだけれども、色々着替えられられるし。ありがとう、健斗」

「お、おう」


 元スマホとはいえ、まっすぐ見つめられると嬉しいものである。


「では、さっそく健斗の家を探索しよう」

「何がというわけでだよ、というより勝手に部屋をで……」

「ただいま……」


 話を聞かないメニはドアを開け、後を追う俺は階段を上がってくる妹と目が合った。1つ補足しておけばメニは中学生の妹より年下、小学生くらいにしか見えない。

 マズイ、これは非常にマズイ。俺の部屋から見知らぬ小学生が出てきたのを目撃されたのだ。


「いや、絵里奈(えりな)これは違うんだ」


 って、俺の言い方もマズイ。これじゃあ、浮気現場を目撃された痛い男でしかない。


「えーっと……」


 妹の表情が明らかに変わっていく。もう、おしまいか……だらしないがちょっと格好良いアニキ(そう思っているはず)という俺の立場が音を立てて崩れてゆく。


「こんにちは、私、メニっていうんだ」


 そんな中、メニは妹の前まで近づくと無邪気な笑みを見せた。


「うちのお兄ちゃんと健斗お兄ちゃんが友達でね。今日は家のお兄ちゃんの相談で来たの」


 …………

 メ、メニ。なんて素晴らしいフォローなんだ。


「あ、そう。そうなんだ。こんにちは、メニちゃん」


 しかも、メニの笑顔は犬っ子の無邪気笑顔と変わらず、皆を笑顔にさせてくれる。妹の怪訝(けげん)そうな顔がゆるんでいった。


「メニちゃん、ココア飲む? 頂き物のバームクーヘンもあるよ」

「ほんとっ、食べる、食べる、食べる」


 どうやらメニは内面も犬っ子のようだ、それも食いしん坊なタイプの。

 犬っ子みたいな美少女で、俺、魔法少女やっていけるのかな、少し心配。




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