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俺が魔法少女になったら  作者: 楠木あいら
新たなる仲間
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魔法少女ラスティ

 暇で歌好きな友人がいたおかげで3時間のカラオケ大会は無事に終了する事はできた。財布は北極圏並みになったが……




 新たなる事件が起きたのは晴紀とカラオケ事件が終了して10日後。

 部屋でスマホから可愛い犬っ子の動画に心を癒されていたら、メール着信が鳴った。


「晴紀から?」


 メール内容は『問題が発生した。来てほしい』と、住所のみ


「単独行動じゃなかったのか?」


 とりあえず変身しないで目的地にたどり着くと、制服姿の晴紀は困惑した顔をしていた。

 到着した場所は見知らぬ住宅街だった。夕焼けのオレンジ色が1日の終わりを教えている。


「トラブルが起きた。ラスティ様が逃げたした」


 晴紀から出た言葉は、まるで外国語のように理解できなかった。


「えと……」

「事情があってお前には隠していたが、魔法少女ラスティは俺ではない。上司であるラスティ様なんだ」

「……。魔法少女は晴紀じやないのは、わかった……上司ってどういう事なんだ?」

「菅原晴紀というのは仮の名前。本当はガルディアン=サン。光の精鋭隊長ラスティ=ミラード=トスバ様に仕えるのが俺の正体だ」


 闇の副将軍(第2章闇の友達参照)の次は光側のお偉いさんの登場のようだ。


「光側の者が魔法少女って……」

「闇側の一方的なモンスター召喚の対抗策として、我々は魔法少女という力を選ばれた人間に与えた。しかし、偶然に近い状態でなった人間だけでは戦力はあまりにも心細い。万が一レベルの高いモンスターが現れた時に備えて、ラスティ様が魔法少女として戦うことになったのだが……」


 晴紀ことガルディアンはため息をついた。


「ラスティ様は……ラスティ様こそが、異様なほど戦うのが好き過ぎる御方なのだ」

「暴走するのか? 光側の者なのに……」

「恥ずかしい話、そうだ。ラスティ様は戦う事に生き甲斐を持ち、それ以外は気まぐれで無口な方。俺が監視役としてついていたが……」

「逃げたした」

「ああ。ラスティ様は新たなる戦いを求めてしまった」

「……。それってマズイだろ」

「ああ……空腹か疲れて、くれればおとなしくなる……しかし」

「まだ、何かあるのか?」

「ラスティ様はスマホを持ってかれた。俺ではラスティ様がどこにいるのかわからない」

「なるほど、だから、俺を呼んだわけか」

「光の失態を誰にも気づかれず処理したかったが。頼む、お前のスマホだけが今は頼りなんだ」


  なかなかな事を言ってくれたよ。本当の事だけど。


「大丈夫だよ、ガルディアンさん。スマホにはGPS機能がついているから。ラスティ様がどこにいるのか、すぐに行けるよ」


 スマホから柴犬系美少女の姿へ変身してメニは、ガルディアンに微笑んだ。


「ありがとうメニさん。俺は、光側に報告しなければならない。2人はラスティ様に会って、再度逃げ出さないようにしてほしい」

「いいけど」

「助かる。ラスティ様は戦闘以外興味のないお方だから。話を聞いてくれないと考えてくれ」




 メニに、ラスティ様の居場所を調べてもらい、たどり着いた先はどこかの商店街だった。


「この地点にいるはずなんだよなあ」

「ああ……いたよ」


 見つけた俺は、足を止めた。

 金色の髪を高く結わえた中高生ぐらいの少女ラスティ様はいた。焼き鳥の露店前で……。

 光も闇も高位になると焼き鳥に魅惑されるのか? (第2章クリスマス参照)


「おいしそう」

「そうじゃないだろう、メニ」


 金髪に魔法少女のヒラヒラした服で目立つのに、露店の商品をガン見しているので人々の視線を浴びまくっていた。そんな中を連れ戻すとなると……かなりの勇気がいる。


「メニ、良い考えがあるよ。焼き鳥3本買って、ラスティ様に1本あげるの。もっと欲しければ、と言って移動する」

「お前が食べたいだけだろうが。この前のカラオケ3時間で焼き鳥買う余裕はない」

「じゃあ、普通に呼ぶしかないね」

「……」


 そうするしかないと思った途端、右横にいたメニの姿が消えた。

 焼き鳥が食べられない上に恥ずかしい思いをしたくないからだろう。同じ立場なら俺もそうしているので何も言えなかった。

 しかし、人の多い中で目撃されずにスマホに戻れるのは相変わらずすごい奴だ。


「ら、ラスティさ、ま」


 小声で呼んだものの、視線を一気に浴びた。帰りたい。帰って犬っ子の動画で癒されたい。


「……」


 とはいえ、ラスティ様の耳に届いてくれたらしく振り替えってくれた。


「……」


 ラスティ様は、初めて会った時と変わらない。困惑も怒りも悲しみもない表情。

 俺を見つめ返すエメラルド色の綺麗な目が透き通っていた。


「ラスティ様、探しましたよ。もう少しで本番ですから。撮影現場に戻ってください」


 その場で思い付いた『この方ががこんな格好しているのは撮影しているからです』という設定を実行するため、俺は撮影スタッフを演じる事にした。これなら周囲の視線を和らげるだろうか? いや、撮影だと余計目立つか? でも、それ以外、魔法少女格好の人を何とかできる設定なんてないし……


「ラスティ様、タクシーを捕まえましたから、早く現場に戻りましょう」


 ラスティ様の手をつかみ、つかつか歩き出した。

 高位なる方だから『無礼者』と怒られると恐れていたが、すんなりと歩いてくれた。

 とにかく商店街を抜けて一目がつかない所に行ったら、瞬間移動してガルディアンの所に戻ろう。


「メニ……」


 俺はポケットに手を突っ込んでスマホを取り出す。はずだった。


「ない……」


 いつも人間姿からスマホに戻った時、必ず右側のジャケットかズボンにいるはずなのに……手は何もつかめない。左側のポケットも探ったがスマホの感触はなかった。


「落とした?いや、あいつならついてくるはずだ……盗まれた?」


 ……何にしても俺は知らない土地で移動と通信手段を失ったのだ。


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