3人目の魔法少女
「これじゃあ、埒が明かないわ」
魔法少ココになった俺は女の子口調で今の現状を口にした。
小さな公園に現れた数匹のカエルモンスター。カエルにしては大きいが膝下サイズでそんなに強くない。肉球グローブを降り下ろす『ホーリーハンド』で簡単に片付けられるのだが……1匹倒すごとに、どこぞのゲームで見られる。仲間を延々に呼んでくるのだ。
「じゃあ、援護要請メールをかりんちゃんに送るね」
首辺りからから声がした。普段はスマホだが、変身時は首輪っぽいチョーカーのチャーム (ネックレスや腕輪につける小さな装飾品)になる便利な魔法少女の相棒メニだ。 チャームにいる時でも通信は使えるらしい。
「かりん、ちゃん……」
この前、仲良くなった魔法少女かりんは中学生で戦闘能力は低い。俺がオトリになってかりんに一撃必殺をかけてもらう方法があるが……
「いや、メニ。もう1人に送信して。アドレスとか知ってる?」
魔法少女は俺を含めて3人いる。3人目はまだ会った事はない。賭けてみようと思ったし、まだ見ぬ3人目に興味があった。
「この前、バージョンアップした時に教えて貰ったたから大丈夫」
その前に来てくれるのかが問題だったが。いや、魔法少女をやる上で正義心というものはあるだろうが、その前に、生活面での事情がある。食事中だったり風呂とか。
その考えは必要なかった。数分とたたず3人目は姿を現した。
現れた3人目は……金色の髪をポニーテールにした背の高い少女。
「初めてまして、私はココ。さっそくで悪いんだけれども敵が多くて困っているの。一緒に戦ってくれる?」
「……」
中高生ぐらいの顔立ちをした3人目は俺の目をじっと見つめた。その顔に笑みはないが、怒ったりあきれ顔でもなく、普通の表情をしていた。
「……」
水色の魔法少女服が揺れる。3人目の魔法少女は敵に向かって駆け出した。
「速い」
疾走。その言葉がピタリと当てはまる。まるで4本足で走る犬っ子のように名なの知らない者はモンスターに近づいた。
その手には、ナックルが握られている。金色のシンプルなデザイン。それが彼女の武器だろう。
敵に近づいた時、彼女の武器が鋭く伸ばされていた。あっという間に1匹のカエルが消えてゆき、敵が仲間呼び出しの口を開くよりも早く2匹目は、名の知らない魔法少女の餌食になっていた。
乱舞するような戦闘。
俺が調子の良い時に『踊るように敵を倒す』と表現した事があるが、彼女の乱舞はさらに鋭いものがあった。同じ乱舞でも盆踊りと、ブレイクダンス程のリズム差がある。それほど彼女の戦闘はすごかった。
「……」
カエルは仲間を呼び出すことなく、風のように一掃され。後は、2人の魔法少女だけになった。
「……」
戦闘を終えた3人目の魔法少女は俺を見つめ、そして消えていった。彼女の表情は怒りも笑いもなく、普通の顔をしたまま。




