友人と襲撃者
闇の副将軍チワンティーヌが俺を襲撃する。
確かにインスタントラーメンみたく簡単に変身した魔法少女(しかも人間)に片腕となる部下(武器)と精鋭暗殺部隊を倒されては闇の面目丸潰れだ。
だからといって、倒されるつもりはない。つもりはないが相手は副将軍、力の差は歴然としている。
「健斗、今日はどこに案内してくれるんだ?」
しかも、倒しにくる本人が横にいた。腕に手を回して、胸、当たっているんですけど……
闇の副将軍チワンティーヌは、クリスマスのゴタゴタに巻き込まれて友達になった。
友達であるチワンティーヌは放課後の生活を堪能したいと言い出し毎日、カラオケやらゲーセンやら連れていかさせる。友達だからであり人間界を知らないからであるが、何よりもチワ、ハナ、メニ全員人間界のお金を持っていないからでもある……。
お陰で財布は冬眠したいくらいだ。
しかしチワンティーヌは友達であり襲撃者でもある。
「……」
俺は財布から最後の一枚、千円札をハナに渡した。
「ハナ、チワ。お前ら、久しぶりに再会したんだから、2人だけで話たらどうだ? ファーストフードなら安いし、一昨日行ったから買い方も分かるだろう?」
「ファーストフード……パンと肉が挟まっているやつだな。大丈夫だ」
「いいか、1000円分だからな1円でも越えたらアウトだからな」
俺は重要事項を言い、2人を見送った。
チワと再会したばかりは、襲撃という単語に実感がわかず、チワの人懐っこい性格により、ズルズルと巻き込まれてしまった。
しかし、日一日と過ぎてゆくうちに、チワから距離をおきたくなった。襲撃をかける奴が近くにいるというのは、いつもの笑顔ができない。友達であってもチワは闇の重鎮たる副将軍。面目を保つため俺を仕留める。消されるかもしれない。『かもしれない』と言うのは、俺と友達だからで何か手加減ないし。何か軽い処置にしてくれるかもしれないという考えであった。
「…………」
とはいえ、親友のハナと約束した事が不安をよぎる。2人は襲撃されても助けないという約束をしているのだ。
「健斗らしくないね」
河川敷でぼーっとしていたらメニがポケットから現れた。(スマホなので普段はポケットにいる)
「メニはどう思う? チワンティーヌの事」
「チワたんは友達だよ」
メニは犬っ子のように真っ直ぐな笑みを向けた。
「襲撃者なのにか」
「うん」
メニの笑みはさっきと変わらなかった。
「メニはチワたんを信じるよ。それよりも大切なのは健斗の相方だって事」
メニの笑顔は変わらなかった。
「……」
メニの笑顔に俺もつられて笑みになっていた。
「メニって、犬っ子の『えへっ』と笑う笑顔みたいだな」
俺は立ち上がった。
「ホームセンターのペットコーナーに行くかな」
「うん」
来るべき時は来る。その時まで悩んでいても、変わらない。




