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保健室

「…………」


 ハナは俺に近づくと水色の目でじっと見つめ続けた。シベリアンハスキー系美人に表情の変化はなく。犬っ子が何か言いたげに向けるものと同じ気がする。


「やはり、効かない」


 ぽつりと言うとハナは視線をそらし、俺から離れた。


「どういう事だ?」

「今、お前に、『私の下僕になれ』と洗脳視線を送ったが、無理だった」

「おいおいおい。人が淡い希望に期待していた時に何、とんでもない事をしてんだよ」

「淡い期待?」

「ああ、いや。俺の話はいいから。それより洗脳って、クラスメートに何食わぬ顔でいられたのも」

「そうだ。属性のない人間は我々『灰色の民』が持つ灰色の属性はたやすく効くが、お前は効かない。魔法少女の力があるからだろう」

「灰色の民? 属性?」

「説明する」


 ハナはベッドに座ると制服のポケットをゴソゴソとさぐり、4つの指人形をシーツの上に置いた。フェルトの胴体にピンポン玉の頭をつけて油性ペンで顔を書き、毛糸の髪をつけている。


「お前のために徹夜した」

「それはありがとう……」


 ハナは最初に白い胴体に白色の髪とヒゲをつけた老人顔の指人形を右手の小指につけた。


「これが光の属性。天使や妖精とかだ」


 黒い胴体に三角目とギザギザの歯をむき出しにした黒い髪の指人形を親指につける。


「これが闇の属性。闇の王、魔王とか呼ばれている」


 3番目は白色の胴体と黒髪。点を3つつけただけの指人形を、床に落とした。


「これが人間」

「こらまてっ、人間の代表として言う。粗末にするな」

「それだけ離れているという意味だ。人間は光も闇も属性がない無。その逆が我々、灰色の民だ」


 ハナは灰色の胴体と髪を持つ指人形を取り出した。頭はピンポン玉ではなく、フェルト生地を丸く縫い合わせて顔は刺繍で縫い、灰色のマントと万歳した腕まで着いている。明らかに徹夜はこの人形のために費やしたんだろうと思われる灰色の指人形を中指につけた。


「灰色の属性は、光と闇、両方の属性を持っている。中立の存在だ。

 中立なのを利用して光と闇、両方の情報を集めてビジネス的な事をしている。お前のところに来たのもそのため」


 ハナは闇と光の指人形をシーツに投げつけて、中指の灰色の民人形を俺の前にずいっと近づけた。


「上の者から、お前の情報を集めて来いと言われた。妖剣部隊長ガルハンワー(第6話、参照)を倒した魔法少女はどんな奴なのか興味がある」

「妖剣隊長って……ああ、あいつか。そんなにすごいのか?」

「名だたる武官の片腕として光側を恐れさせているようだが、ピンだとほとんど役にたたないモンスターだ」

「……。俺が勝ったのはそれだと思う」

「……そうか。なるほど、そうだな。ガルハンワーの持ち主があれだからな」


 面倒くさがりやか、やる気のない武官のお蔭で助かったようだ。


「疑問は解決した」

「解決したならば、元の世界に戻ってくれないか」


 これ以上、トラブルに巻き込まれたくないのだが、ハナは首を振った。


「上が1週間の調査しろと言われたから。しばらく滞在する。よろしく頼む」


 ハナは中指にはめていた『灰色の民』の指人形を渡した。


「さて、話は終わった」


 ハナは伸びをすると座っていたベッドに横たわり丸くなった。


「昼になったら起こしてくれ」


 マイペースな奴に突っ込みをいれようとしたが……


「メニも寝る」


 魔法少女の相方で今まで本来の姿、スマートフォンになっていた子供、メニがハナの横で寝ようとしていた。


「ちょっとまて、メニ。お前、出てきていいのか?」

「どうして?」

「どうしてじゃないだろうが、属性が違うのに。問題があるだろうが、俺でも分かるからな」

「大丈夫。健斗とハナが会話している時、魔法少女育成教会に問い合わせたら、ハナと仲良くしていいし、知っていることは話してもOKだって」


 こいつ……のほほんとしているのに手回しが早い。


「そいういうわけで、よろしく、ハナちゃん。そしておやすみ」

「ああ。おやすみ」


 2人仲良く保健室のベッドで眠り始めた。


「…………」


 俺は1人窓に向かうと青い空を眺めた。


「旅に出たいな……」


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