悪寒
類友は俺が変身した魔法少女を気に入ってしまった。
もしも、俺が魔法少女ココだとタケにバレたら……
1、友人として応援してくれる。もちろん待ち受け画面は削除してくれる。可能性1パーセント
2、夢を壊したとして、友達の縁を切られる。可能性4パーセント。
「いや、やっぱり」
3、暴走する。魔法少女も今の姿も見境なくなってしまる。可能性95パーセント
「おしまいだ……」
何か全身が寒くなってきた……震えがとまらない。
「おーい、柴沼、大丈夫か?」
忘れていたが、あれから時が流れて今は授業中。いつもは小言のうるさい国語の教師が心配そうに見つめていた。
「真っ青だぞ、保健室に行ってこい」
あの教師に言われるなんて、どうやら末期症状のようだ。
「先生」
ハスキー犬系の美人ハナが手を上げた。
「そうだな、保険委員に連れてってもらえ」
「は? 1人で行けます」
「ばかもん。ハナの付き添いはお前が本当に体調が悪いと証明するためだ」
うーん。俺、今まで健康だったからわからないが、高校生でもつきそいが必要なのか? いや、おかしいだろう。
「…………」
とはいえ授業中の静まった廊下を得体の知れない奴と2人で歩くハメになった。
ハナという奴は俺の前をスタスタを歩く。灰色の長い髪と短めのスカートが揺れ、それをしばらく眺めてしまったが、さすがに階段を降りる辺りで口を開いた。
「おい、そろそろ。話してもいいんじゃないのか?」
「話す?」
水色の目がまっすぐ俺を見た。犬っ子が何か言いたげに見るのと同じものだった。
「昨日いない奴がクラスメートとして何食わぬ顔をしているのは、おかしいだろうが」
「……具合は、大丈夫なのか?」
「え、えーっと。俺の話に答えてくれる?」
「具合、大丈夫なら、話す」
「具合か、そうだな……そもそも問題(類友の暴走についての恐怖心)が一時的なものだったから、大丈夫だ」
「そうか。保健室とやらで話す」
ハナは向きを戻ると階段を降りはじめた。何か、独特な奴だな。
保健室
ノックして開けた後、ハナはズカズカと中に進むと年配の保険教師を水色の目でじっと見つめた。
「あらあら、いけない。校長先生とお茶する約束だったわ。ハナさん、留守番頼めるかしら」
「もちろん」
「じゅあ、よろしくね」
年配同士のお茶か……って、授業中に生徒を留守にしちゃいけないだろう。
しかし、俺が突っ込むよりも早く、いそいそと教室を後にしてしまった。
「…………」
いや、ハスキー系美人、こいつのせいだろう。水色の目で見つめるだけで人を洗脳できるのか。
「さて」
ハナは保健室の鍵を閉めた。
えーっと、これってヤバイ状態じゃないか? 魔法少女的に考えれば戦闘的な問題があるし、男的に考えればロマンという青春が。
どっちだ、これはどっちなんだ?
来週に続く……嘘です。




