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似地の現状と覚悟

次の日。

目が覚めると、あたりはまだ暗かった。

しかし、下から物音がする。

ナツは不思議に思って下におりると、せっせと朝ご飯のしたくをするミカンの姿があった。

「あ、おはよう」

「早いんだね?」

「そうでもないよ?」

不思議そうにミカンがいう。

「・・・今何時?」

「朝7時。」

「・・・7時?!」

にしては、外は暗い。

「あぁ、そうか・・・似地は、星の角度の問題で太陽の光はそうそうさしてこないんだ;」

「そうなの?!」

「まぁな・・・ほら、できたぞ。」

「あ、ありがと・・・」

こちらにきてから、驚くことばかりである。

「・・・星の角度って・・・何かにさえぎられてるとか?」

「ん~・・・ま、そんなとこかな?深く考えたことないからよくわかんないや。」

「でもさ、それでよく植物とか育つね?」

食料や料理は、地球とさほど変わりはなかった。

「室内栽培なんだ。」

「あ、そういうこと・・・。」

「物心ついたときからこんな感じだったからさ、太陽の光とかよくわかんなくて。」

「へぇ・・・いいものなのに・・・」

ナツが、残念そうに言う。


「・・・ただ。」

「ん?」

「ナツが来たとき、一瞬だけ外が明るくなったんだ。多分、そのときだけ日がさしたんじゃないかな?」

ミカンは思い出していた。

ナツが来る少し前、窓から光がさした瞬間を・・・

「・・・そうかもね?あたし、あの木の下にいてさ、やけに木漏れ日がまぶしく感じて・・・気づいたらここにいたから。」

「200年に1度日がさして、地球とつながるってわけかもな。」

「なんかすごいね・・・」

ナツが感心したように呟く。

「本当にそうかわかんねぇけどな;本当にそうだったら、外でてればよかったなぁ・・・太陽の光ってどんな感じ?」

「ん~・・・とにかく暖かい!あと明るいし・・・落ち着くかな?」

「へぇ、見れる日はくるかな・・・」

ミカンは羨ましそうに呟いた。

「・・・きっといつかみれる!」

とは言ったものの、その言葉に根拠などない。

「・・・テレビでも見るか。」

ミカンはそういい、リモコンを持った。

テレビをつけても、ニュースばかり。

バライティなど放送する余裕もないのであろう・・・。

ニュースも、いいものなど一つもない。

どこかで地震でもあったのか、災害の情報と、異火の状況を流していた。

「おもしろいもんねぇな・・・っていつものことだけど。」

「話題暗いね・・・」

「まぁな;でも、しょうがねぇか・・・」

テレビを消す。

「よっしゃ、ゲームでもやろうぜ?」

ミカンが笑顔で言った。

「いいよ~、なんのゲーム?」

「これ!ここまでひどくなる前に流行ってたやつなんだけどさ、案外おもしろいんだ。」

そういってミカンが出してきたのは、なにやらボードゲーム。

「「じゃんけんぽい!」」

ルールは複雑で、でもやってみると意外とおもしろく、飽きなかった。

最初はずっとミカンが勝っていたが、3、4回続けていると、ナツも慣れたのか、勝ち始めた。

結局この日はずっとこのゲームをやり、10-10で同点となった。

「ふぅ・・・ナツ、強いな;」

「へへっ、でも楽しいね、これ♪」

「だろ?」

そんなこんなで、1日が過ぎた。

次の日は、ミカンがなにやら本を購入し、それを2人して黙読。

その次の日は、また違うゲーム・・・

なるべく頭を使うようにする。


そして、あっという間に一週間がたった。

・・・ナツはまだ悩んでいた。

ミカンの頼みを聞くか聞かないか・・・。

この世界をどうにかしたい気がないわけでもない。

ただ・・・いまだに現状がよく分からなかった。

ニュースは毎日欠かさず見た。

いろいろと大変だということも分かった。

だが・・・実感がわかないのだ。

自分がテレビに映る世界と同じようなところにいて、自分と接点があるという、実感が。

「今日、かぁ・・・」

・・・締め切り。

最近はナツがご飯を作ることになっている。

朝飯を作り、並べていると・・・

「ナツおはよう・・・どう?」

「・・・どうしようかな・・・」

ナツは申し訳なさそうに、うつむいて言った。

ミカンは少し考えると、意外な言葉を口にした。

「・・・今日さ、ちょっと外でてみるか?」

「え?大丈夫なの?」

この世界で外にでるのは危険なことで、食料もなにもかもそれようの端末を使って取り寄せる程である。

それなのに・・・

「ちょっと位大丈夫さ。あ、念のためこれもっといて。」

そういってミカンが出したのは、最初に会ったときミカンが持っていた銃だった。

「・・・これ?」

「護衛用。つっても、あたって死ぬことはない。ただの目くらまし。撃つと煙がでるんだ。」

「あ、なんだよかった;ありがとう」

ナツがほっとして笑うと、ミカンもつられて笑った。

「ところでさ、この家いいよな・・・俺ん家ももともと周りの家とおなじ感じだったんだけどさ。ちょっと周りの状況確認して戻ったら、急に俺ん家のあったところにドォンとナツの家があって。」

「で、ラッキーってわけ?」

「あぁ。ただ、カモフラージュはしてある。」

「え?」

「ほら、ナツもこれつけて。」

「・・・え?」

渡されたのは、なにやら箱。

「コンタクトレンズ。」

「・・・あたし目悪くないよ?」

ナツがそういうと、ミカンはあきれたように笑った。

「そういうんじゃないよ・・・人を感知するんだ、これ。目に映った人に丸がつくんだけど、緑は普通で、赤は敵の可能性ありってわけ。」

「へぇ・・・ハイテク!」

「ここら辺は物騒だからな。これは敵もつけてるもんなんだけど・・・だからこそ、ラッキーなんだ。」

ミカンは意味深にそういった。

「・・・どういうこと?」

「これをつけると、この家もぼろくみえるようにしかけてある。」

「!」

「食べ終わったらいこうぜ。いっただっきま~す♪」

食べ終わり、片付けも済ませて、2人は外に出た。






挿絵(By みてみん)

コンタクトごしに見た世界は、若干青がかかっている気がする。

でも、肉眼とさほど変わりはなかった。

ただ・・・

「・・・ぼろい!」

家の外側が、本当にぼろく見えた。

周りの家と同じように・・・

「やっぱすごいね・・・コンタクトも、周りの家も。」

「技術はあるんだけどな・・・すさまじいだろ?」

どこもかしこもこげた建物ばかりだ。

人はほとんどいない。

「ここら辺の人たちは?逃げたの?」

「逃げたというかやられたに近いかもな。もしくは異火に兵士として行っているか。」

「・・・そっか。」

まるで映画の話だ。

・・・というか、移動した時点で、もはやSF映画の中にいる気分である。

もともと国道かなにかだったのか、広い道を歩く。

10分ほどいくと、前から人が来た。

緑色の丸がつく。

「(緑は普通の人だよね。)・・・ところで、このコンタクトとかって誰が発明してるの?」

「ん?科学者。」

「・・・この状況で科学者なんているの?」

「うん。ほら、戦闘器具とかの発明もしないと勝てないし、優良な科学者は国が大事に守ってるんだ。」

「へぇ・・・でも、なんかすごい狙われそう;」

「あぁ、かなりね。だから、科学者になったら家には帰れないんだ。」

「大変なんだ・・・そういえばさ、どこ行くの?」

ナツは先をずかずかと歩くミカンに、疑問を投げかけた。

「ちょっとね。」

「・・・?」

「ほら、こっち」

ミカンは家と家の間を指さした。


広い道を抜け、裏路地に入っていく。

そして、扉の前で立ち止まった。

「ここ」

「・・・ここ?」

ボロボロのコンクリートの間に、ボロボロの木の扉。

・・・いや、実際扉位は新しいのかもしれないが。

コンコン

「ミカンです、おじゃまします。」

ガチャッ

「こんにちは~」

「おぉミカンか、久々だなぁ。」

中からかすれ気味の男の声がする。

ナツはミカンに続いて恐る恐る中に入った。

・・・緑。敵ではない。

木の古そうな椅子に座っていたのは、50歳前後位のレトロな雰囲気の男だった。

「そちらは?」

「ナツ。地球から来たんだ。」

「おぉ、地球から・・・」

「は、はじめまして・・・」

「俺はイヨカンだ。よろしくな。」

手を差し出され、ナツはビクビクしながらも手を握った。

ナツはそれなりに、大人に対しての人見知りが激しいのだ。

「よ、よろしくお願いします・・・」

「ははっ、もっとリラックスしていいぞ」

「ナツ硬くなりすぎ」

「・・・はは♪」

なんだか優しそうな人である。

イヨカンの笑みを見ると、初対面なのになんだかホッとした。

「俺の育ての親なんだ。」

「へぇ・・・」

育ての親・・・生みの親は?と聞こうとしたが、ナツは言いかけてやめておいた。

この世界のことだ、なにかあったのだろう。

仲間とはいえ、よく考えてみれば出会ったのはたった一週間前で、まだ完全になじんだわけでもない。

あまり深入りすると、さすがに失礼だと思ったのだ。

出されたクッキーをつまみながら、ミカンがこれまでのことを話した。

「ナツの家族がみあたらないんだ。しかも、別々できている。」

「ほぉ・・・」

と呟き、興味深げにナツをみるイヨカン。

「帰ったら家も家族も消えていたらしい。」

「ん~・・・そうか・・・それは心配だな・・・」

「家はこっちにあったんだけど、まぁそこを俺たちの住処としているわけで。」

「・・・あの、」

ナツが申し訳なさそうに口を開く。

「なんだい?」

「・・・トイレありますか?」

「あぁ、あそこにある。」

比較的綺麗な木の扉をさすイヨカン。

ありがとうございます、と呟くように言い、ナツがトイレに行った。

2人は顔を見合わせ近づけると、声を押し殺して話しはじめた。

「・・・俺はさ、他の家族は異火に行ったとおもうんだけど・・・」

「俺も同感だ。あの子に異火の話は・・・?」

「した。あの家族の話も。だからこそ言えねぇんだ・・・」

目を伏せるミカン。

「何で話したんだ?」

少し険しい表情で問うイヨカン。

「聞かれたし、どうせいつか言うことになるだろうと思ったから。」

「そうか。まぁいいんだが・・・」

厄介なことになりやがったな、と呟く。

「・・・だからさ、俺はナツと一緒にこの戦争をとめようと思って。」

「?!」

イヨカンが目を丸くしてミカンを見た。

ミカンはかまわず続ける。

「前は家族が別々になったことで戦争が始まった。じゃあ、終わらせることもできるんじゃないかって思うんだ。」

「・・・お前、正気か?」

「このままは嫌なんだ。」

「でも、あの子をまきこむことはねぇだろ・・・」

イヨカンが説得するように言う。

「どうせこっちに来たんだし。一応話しはしてある。今は1週間の猶予期間だ。今日の夜締め切りだけどな。」

ガチャッ

ドアが開いた瞬間、2人は離れてクッキーをかじった。

「お借りしました;」

「あぁ、いいんだよ別に。」

「ナツ、そろそろいこっか。」

「え?あ、うん」

「じゃあな、イヨカンさん」

「おじゃましました」

「あぁ、またこいよ♪」

ミカンはイヨカンの視線に気づいていたが、無視をしてそそくさとその場を離れた。


「なんだか優しそうな人だったね。」

「良い人だぜ♪」

「ね、クッキーおいしかった!」

「だろ?あれイヨカンの手作りなんだぜ?」

「そうなの?!意外・・・」

「やっぱそう思うだろ?」

ミカンはニヤニヤとナツを見た。

ナツはその視線に気づき、顔をひきつらせた。

「え、あ、別に変な意味じゃないからね?!けっしてあの歳の人がとおもったわけじゃ・・・あ。」

ほぼ言ってから、ナツは口を押さえた。

「ははっ、いってるし♪やっぱそう思うよな!」

「本人に言わないでよ~?!」

「分かってるって♪」

2人でわいわい裏路地を進む。

・・・と、その時。

”ピッピッ・・・”

ドンッ

「・・・なんの音?」

なにかの機械音と大きな爆発音が聞こえた。

「!・・・敵かもしれない」

「!!」

その時、後ろから怒声が聞こえた。

「子供だけは・・・」

真っ青な顔で子供をかばう母親と、泣きじゃくる子供。

そして、その2人を・・・

ドコッ

「?!?!?!?!」

「チッ・・・」

なんの感情もなく殺す大きな男。

ヒュンッ

「!!」

なにかが後ろから飛んできた。

とっさによけ、後ろをみると、もう一人同じような男がいた。

そして丸は・・・赤。

「敵・・・」

「ナツ、俺につかまってろ!」

「!うん!」

ナツはとっさにミカンの腕をつかんだ。

ビュンッ

ミカンがすごい速さで走り抜ける。

「ナツ、それ撃って!」

「わかった!」

少しあせりながらも、冷静に男に銃を向ける。

パンッ

男に発砲すると、白い煙がもくもくとたちこめた。











そして、あっという間に家の前。

「間一髪だったな・・・」

「うん・・・」

ナツは返事をしながらも、気はどこか遠くへいっていた。

見てしまった。

人が殺される瞬間を・・・。

「・・・ひどいね、あいつら」

「あぁ・・・ずっと、あぁやって人を殺し続けている。」

「・・・」

「・・・異火人もだけど、似地の兵士だって向こうから見れば同じなんだよな、きっと。」

異火と似地・・・どちらもそれなりに強く、レベルは一緒。

だから、どちらの現状もそんなに変わらないのだ。

異火にも、このような風景が広がっている・・・。

一体、この戦いに何の意味があるのだろうか?

ナツの頭に疑問が浮かんだ。

そして、分かった。

似地(ここ)にきてしまった以上、この戦争は自分とは無関係だと言えなくなってしまったと・・・。

「・・・あたしさ、ここの現状をよく知らなかった。実感もなかった。だから、迷ってた。」

「・・・」

ナツは、ミカンをまっすぐみた。

「・・・とめるよ、一緒に。」

「!」

「この戦争、終わらせよう。」

しっかりした声で、そういった。

「!!!!!ありがとう!」

また、ミカンが二カッと笑った。

「よろしくな!」

「うん!こちらこそ!」

夏みかんの甘酸っぱい香りが広がっている庭で、笑いあう。


まだ、結果はわからない。

もしかしたら、死ぬかもしれない。

だけど・・・希望はある。

まだ、どうにかなる。

・・・いや、どうにかするんだ。

そして、2つの星を平和にする。

2人は、手を取り合ってまっすぐに前をみた。

・・・つもりだった。

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