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第80話:常夏の終焉と、ただのログ確認

概念すらも掌の上で手懐けた俺たちの前に、天から「一冊の分厚い革装丁の記録書(世界の記述者)」が静かに降り注ぎ、空間全体の『舞台定義』を急速に書き換え始めた。

その記録書が最後のページをめくるように明滅した瞬間、コパカバーナの砂浜も、アマゾンの密林も、あの熱狂したサッカースタジアムの残像も、すべてが美しい光の粒子となって空へと昇り、周囲の景色は一瞬にして「見慣れた原初のファンタジー世界の石造りの王宮、その静かなバルコニー」へと完全に描き戻されていく。


世界の調停機構が発動した、一連の異郷の物語を締めくくる最高位の時空帰還――『舞台終幕・原初帰還ワールド・リターン』。


『――長きにわたるブラジルの試練はこれにて終幕だ。汝らを本来のファンタジーの理へと送り返す。どれほどあの情熱の地で無双の栄華を誇ろうとも、元の世界に戻れば、それはただの一時の白昼夢。異郷の記憶を胸に、再び過酷な運命の地を歩むが良い』


天の彼方から響く調停者たちのどこか安堵したような声と共に、世界の階層を完全に元通りにする帰還の波動が、元の美しい旅装束へと戻ったルナの身体を優雅に包み込んでいく。


「主様……! 私たちの服が元に戻り、空気の魔導濃度も、私たちが旅をしていた本来のファンタジー世界のそれへと完全に復元されています! 謎の調停機構の手によって、長く続いた『ブラジル編の全舞台』が物理的に正常化されました。……なんだか、あの大地でゴリラをペットにしたり、世界最高峰のクラブを丸ごと買い取ったりしたあの日々が、本当に夢だったかのように思えてしまいますね……」

ルナはいつもの大騒ぎをすっかり潜め、どこか寂しげに、しかし慈しむような黄金の瞳で、遠く広がる異世界の山々を見つめながら俺の隣で呟いた。


混沌たる南米の熱気が去り、静けさを取り戻した王宮の夜。

だが、その急な幕引きと、思い出をただの過去にしようとする世界のシステムを前にして、俺はバルコニーの手すりに身をもたれ、退屈そうに夜空を見上げて鼻で笑った。


「ブラジル編が終了して回想ねえ。調停機構とやら、すべてを終わらせて綺麗に元の鞘に戻したつもりだろうが……。これ、俺が昔、まだ巨大な魔導シナリオの全ルートを設計してデバッグしてた頃に、特定のエリアのイベントが全部終わった後に、プレイヤーがいつでも読み返せるようにこれまでの会話や実績をテキスト形式で保存してた時の『ただのログ確認(あるいはただの回想モード開放)』の構造そのまんまじゃねえか。ガワだけ壮大な旅の終幕っぽく見せてるけど、根本にあるのは俺がいつでも引き出せるようにしたただの記録データだぞ」


『――警告。データの最深部から、記述者による「異郷実績の永続能力化」を検知。な、何だと……すべてを無へと還したはずのブラジルの全権能が、ただの「回想ログ」として汝の肉体に定着しているというのか……!?』


「俺の残したログデータなんだから、どれだけ元の世界に戻されようが、俺が一言『――あ、このブラジルで手に入れた全権能、常時パッシブ(常時発動)で固定な』とシステムに決定を落としてやれば、ファンタジー世界にいながら『ブラジルで手に入れた絶対出力の無限、概念の支配、そしてサッカーで培った世界の重心の掌握すらすべてを完璧に内包した絶対至高の異郷超越状態(存在価値の強制無限化)』として、この世界をさらに数段上の解像度で無双することなんて、朝飯前だろ」


指先で空中の見えないシステム領域をスッと軽やかにフリックする。

次の瞬間、世界を覆っていた帰還の余韻は一瞬でパチパチと音を立てて砕け散り、俺の肉体とルナの絆に「ブラジルの情熱の全特権」を完全に永続固定する美しい金色の勲章紋章マスター・トロフィーへと再構成されていった。調停機構の用意した終わりの術式は、俺にとってはただの「クリアデータを読み込んでニューゲームを始める」ような手間で、一瞬にして俺たちの新しい無双の糧へとデグレードさせられた。


「……異郷でのすべての戦いを、昔のただのログ確認扱いして、一瞬で私たちの思い出ごと、全宇宙最高の絶対の力へと自動固定させたのですか?」

ルナが、ツッコミを忘れた虚無の目(しかし瞳は黄金に輝いている)で、元のファンタジー世界のはずなのに、俺の身体からあの常夏の国の太陽をも超越した「無限の覇気」が絶え間なく溢れ出し、彼女自身の魔力も爆発的に跳ね上がっている己の状態を見上げる。ルナは、世界がどこへ移り変わろうとも、1秒前よりも深く俺を崇拝していた。


「おいおい、そんなに焦らなくても、この世界のすべての旅路は俺の執筆ノートみたいなものさ。調停機構の用意したバグの修正も終わったことだし……」


俺が微笑み、指先を一突きして王宮の「夜空の空間」を軽やかにスワイプすると、唯一の美女であるルナの視線が一斉に俺の指先に引き寄せられる。静かなバルコニーの奥に、次なる大無双(第5部・新章ファンタジー覇王編)へと続く「黄金のキャットウォーク(絶対無双の特等席)」が、極上の光の粒子を散らしながら自動生成されていく。


「さあ、お前の席は元の世界だろうと世界の果てだろうといつでも俺のすぐ隣だ。完全に俺の支配下となったこの最高品質な真のステージで、次はどんな極上の退屈しのぎを見せてくれるのか、特等席からじっくり楽しもうじゃないか」


俺を中心に、完全掌握した元の世界にして、すでに最高の配置で寄り添う唯一のヒロイン・ルナ。その圧倒的な調和の輝きを纏ったまま、俺たちは世界の規則(調停機構の法)すら完全にプライベートな玩具としたその先へと、優雅にステージを移行させるのだった。

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