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第9話  作者: うきぐも
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第9話


まったくゲームに縁とかなさそうな大学の同級生がまさかのMMORPGプレイヤー?

さすがの予想外な事実に驚きが隠せない


「ヒエさん、うちに来てくれない?」

「え。ミナト君の家?」

「うん」

「……まあ、そこに何かがあるからなんだろうね。行くよ」


はっきり言って俺の学校での生活態度は真面目だし、そもそもに我々の学科は偏差値も高く、勢いで異性に対して何かをするような人間も基本的にほとんどいないので、そこは信頼があったようだ


彼女は徒歩だったため、俺は自転車を押して彼女を家にまで連れて行った


そして……なんとなく予感があったのだが確証はない『あの事象』について考える

「ちょっとここで待ってて」


そういってアパートの階段の前で待ってもらう


地方都市の学生アパートなのでロビーなど存在しないおんぼろだ

俺は家に入ってすぐに浴室のドアを開けた


やはりあった

風呂場のドアを開けると、そこにあるのはそう『淡く輝く扉』


俺はすぐに外に戻ると、日枝さんを呼んだ


……

……



「どういう現象なんだろうねこれ」

「さあ……」


見えている

彼女には扉が見えることはまずはっきりした


頭のいい人間は状況判断が早くて助かる

変に驚いたり疑ったりされても面倒なだけだ


「開けていいの?」


彼女は俺の方を見ながらためらいがちに聞いてきた

俺にはそれに答える権利もないと思うが、連れてきたのは自分だ

別の人間が開けるとどうなるのかを知りたい


「いいんじゃない?」


彼女の手が淡く輝くドアノブを掴んだ

そして少しずつ白い輝きがあふれてくる


吸い込まれるように歩いていく彼女の背中に俺はゆっくりとついていった




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「おかえ……誰!?」


庭の植物に水をやっていたマリチはこっちを見るなり言った


「え、あ、初めまして……私はミナトくんの友人で日枝薫と言います。ヒエ、カオル」

「おっと。私はマリチ。魔妖精族で、輝く森のマリチ=マコチ」


きちんとお辞儀をしつつ、にこやかには答える

基本的にマリチはいいやつなのだ


「すごい……これは仮想現実?それともほんとにこんな世界が…」

日枝さんは横に生えている草をつまんだり、花の匂いを嗅いだりしている


その様子をまじまじと観察しつつ、マリチは呟いた


「ヨーイチと同じ、異世界から来た人間だねえ」

「わかるんだ」


ソーファンのプレイヤーだからこの世界に来ることができたのか?

それなら俺と同じように…


「日枝さんこれできる?」


俺は彼女に声をかけ、目の前で大剣をシュポンと取り出した


「なに!??」

「頭の中に自分が持っている装備を思い浮かべて装備するだけだよ」

「何言ってるかわか……あ、ステータス画面をイメージするって事?」


シュポン


彼女の手に大きな杖が現れた


「これ、もしかしてソーマファンタジーの……?見覚えのある装備だ」

「ここがソーファンの中かって言われると少し違う気がするけど、似てる世界だなとは思うし、ステや装備が何故か反映されているのは確か」


彼女は小さく呪文のようなものを詠唱し始めた

やがて、ボッっと目の前に火柱が上がる


「魔法とかもつかえるんだ…!楽しい…」


「ちょっと失礼」

俺は日枝さんのステータスを分析した


ステータスの分析はされた方にもそれが分かるようになっている

なのでいちおう声はかけておく


中堅冒険者だな

俺のようなガチ廃人プレイヤーではないが、今のこの世界だと一般の冒険者よりはだいぶ腕が立つだろう


「日枝さんってどのクラス使ってた?」


自分にできることを色々と楽しそうに確認している彼女に声をかける

今後この世界で……そして現実世界でも戦っていかねばならないとすると、できることを確認しておくことは大事だろう


「え?あ、えっと……魔法剣士かな」


魔法剣士は細身の剣や短剣を扱い、自分や仲間に付与魔法をかけて強化するのが得意なクラスだ

よく言えば万能、悪く言えば器用貧乏


「あ、そうそう。基本的に鎧も常時装備して、ステータス画面で非表示にしとくといいよ」

「え、そんなこともできるんだ?……なるほど何が起こるかわからない異世界だしね」


物分かりが早くて助かる


「まあ驚きの連続だろうけど、結論をここで言っていい?」

「え、なんの?……いいけど」

「こっちで敵倒すと、現実世界にもたまに倒した敵が出たりする」

「大変だ」


彼女はものすごく真顔でこっちを凝視してきた

そしてそこから思考モードに入り、一人でなるほど…とかいろいろ呟いてる


俺にもわからないことだらけなのだが、頭のいい彼女なら俺の今までの不審な態度も理解してくれたことだろう。あと伝えておくべきは


「ちなみになんだけど、この世界と現実世界、行き来自由じゃないよ」


ギギギギっと日枝さんはゆっくりと顔を上げた


「それ……とても困る……!」


なるほど俺みたいな家と学校を往復するだけの引きこもり気味ゲーマーと違って、勉学もバイトもサークル活動もそつなくこなす彼女にとってはそっちが死活問題だったか


「さっきくぐってきた扉、ある時とない時があるんよ」


それを聞いた彼女は慌てて大樹の根の方に走っていく

そしてしばらくしてトボトボと足を引きずるようにして戻ってきた


……もう消えてしまったか


「条件とかあるの?」

「いやそれは今のとこホントわかんなくて。でもこっちの一日は向こうの1時間だからそこまで向こうの生活に支障はきたさないよ」


ややうなだれている彼女に対し、おれは淡々と付け足した


「とりあえずこの森を出た山の向こうに街あるし、行ったことのあるとこならワープできるよ」

「私、空間転移の魔法つかえるクラスじゃないんだけど……というかちょっと待って、放置する気なの?」

「え!」

「そんなに驚く?」


俺は基本的にソロゲーマーだった。だからこそ2アカウント目のマリチとの二人旅をしていたのだ

誰かと一緒に組むと自由度がなくて面倒になることもしばしばだし、冒険が義務になると作業化してつまらなくなるものだ


「多分だけど今のここはまだソーファン初期の世界だから、日枝さんはかなりの高レベル冒険者だよ。なので街でギルドに参加すればソロでも余裕だろうし、ptも組みやすいよ」

「いやそういう事じゃなくて、さすがに慣れるまでは色々教えて欲しい」


くっ。めんどくさい

ゲームを優先しすぎて交際相手と別れたことがあるカスすぎるにはめんどくさすぎる!


ちなみに日枝さんは美人である。そして頭もよく社交性もありきっとモテている

それゆえに人種が違い過ぎる


思うところは色々あったが連れてきたのは俺なので

まずは町を案内し、ギルドまで一緒に行くことにした


「カオル様は未登録ですね。ではEクラスからスタートになります」

「そうなのね.。これで仕事が依頼できるようになるわけか」

「左様でございます。仕事はランクごとに難易度が分かれていて、壁のボードに基本張り付けてあります。低ランクの方でも高ランクの受託は可能で、高ランクのものをこなす方がポイントは多くもらえますよ」


指差された方向には複数人の冒険者たちが集まっている

店内には食事をしているものや雑談、口論をしている者もおり、にぎやかだ


「ファンタジーだね~!色んな種族の冒険者もいるし、楽しい…!」

「そうなんだよね」

「帰れないわけではないみたいだし、なんだかんだで私ここに来られてよかった」

「それならよかった」


そして彼女は壁の方に歩いていき、一枚の依頼書を指差して言った


「私、これ行きたい」


ザワ……


ボード前に集まっていた冒険者たちが一斉に注目した


彼女が指さしたのは依頼が達成されずにずっと残っている依頼

通称『アンタッチャブル』

もちろん高難易度で長らく達成されないため放置されてきた為である


『天壇山脈の双竜退治。難易度SSS』


「ぷ。お嬢ちゃんEクラスで何言ってんだ」

「国家プロジェクトでも解決できなくてギルドに丸投げされてずっとこのままだぞ」


誰かが言ったのを皮切りにたくさんの失笑が起こる


「……」


恥ずかしそうにうつむく彼女に対し、それまでテーブルに座って謎の果物を食べていたマリチがすたすたと歩み寄っていった


「おもしろいそうだねカオル。やろう」


いや待って。すべてのクエストを制覇した俺も聞いたことないクエストなんだけど

カッコいい感じの好奇心とノリで言われても



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