死神と病気の少女
一週間に一話ずつくらいの頻度で更新いたします。
この物語が、多くの人の心に残ることを願って。
病院内を漆黒のフードを被った少女が歩く。
誰も少女を見ない。
誰にも見えない黒き少女は、“死神”。
そう、その死神こそ私です。
誰も見ないというか、見えないのです。
目的の部屋に着きました。
ドアをすり抜けて部屋の中に入ります。
その部屋のベッドでは、やせ細った一人の少女が本を読んでいます。
・・・そして、彼女の頭上には、弱く揺らめく、
一本の蝋燭が。
人は死期が近くなると、死神にしか見えない蝋燭が頭上に現れます。
つまり、この少女はまもなく死んでしまうのです。
「琴葉!」
彼女の両親が来たようです。
辛そうな顔をしています。
彼女がもうすぐ死んでしまうことを知っているのでしょう。
部屋の中は、シン、と静まりかえっています。
「おとーさん、おかーさん、聞いてくれる?」
唐突に、その少女は喋りだしました。
病人らしい、掠れた声で。
「私ね、もうすぐ死んじゃうんだって。
死ぬ前に、おとーさんとおかーさんに言っておきたいんだ。
私ね、小説家になりたかったんだ。
本が好きだし、文字も好きで。
本の中だったら、なんでもできるの。
異世界へ行って、空を飛んだり、信じられないような恋をしたり、美味しいものを、食べたり、ね。
私は、本に救われたから、私と同じ思いをしてる人に、私も、そんな世界を届けたかった。
・・・ねぇ、おとーさん、私、死にたくないよぉ!
おかーさん!私、まだ生きていたい!
生きて、いたかったな・・・」
少女は静かに涙を零す。
ベッドの白いシーツが涙で濡れていく。
・・・そろそろ時間です。
少女の蝋燭が大きく揺らめきました。
ベッドに寝ていた少女の呼吸が荒くなっていきます。
「琴葉、琴葉っ・・・!」
ご両親は、少女の手を握り、声をかけ続けています。
蝋燭の火がだんだん弱くなっていきます。
私は、少女に近ずき、頭の蝋燭を優しく吹き消しました。
その少女は、一瞬、少しだけ笑って、息絶えました。
病院の外に出ます。
少女の両親は、まだ泣いていました。
病院を振り返って、手を合わせます。
ーー天国に、行けますように。
ひとつ、そう祈って、私は病院を離れました。
丘の上から、フルートの音が聞こえてくる。
切ないその曲は、風に乗り、夕日に溶け込むように、
町の人々の心を落ち着かせる。
しかし、誰も演奏者に気をとめない。
そんな曲を吹く、黒いローブを纏った死神は、
そう、私です。
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