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第四話 屋敷のメイド

「こちらが今回仕入れた物品でございます」


 私たちが通されたのは客間ではなくお屋敷の裏側にある物置の様な場所だった。そこには麻袋や木箱が煩雑に置かれていて中身は確認できないがおそらくホスキンスさんがこれまでに仕入れてきた何かしらだろう。


 ホスキンスさんは1つ1つ丁寧かつ簡潔に仕入れてきた物の特徴や用途を説明した。それにマクマーン家のお二方が時折相槌や質問を入れる形で話は淡々と進んでいき正直私が入る余地などどこにもなかった。ただ終始気がかりだったのはマクマーン家の当主と息子の2人そろってどこか意識が上の空だったことだろうか、決して話に興味を持っていないというわけではないが何か集中できないような事態に直面している様子に見えた。まあ国の運営に関わっているともあればいろいろと気がかりな事は絶えないのだろう。


「ここからは3人で話す、今度こそお前はどこかに行っていろ」


 話も大方片が付きいよいよお開きかというところで党首殿から本日2度目の邪魔者宣告を受け私は部屋から放り出されてしまった。


(しかしまあこれで今日の役目は終わりかな、本当に何もしてないけど)


 私はあえて案内された道ではなく屋敷の外を周りながら正面玄関へと戻っていた、率直に栽培されている食物に興味があったからだ。

 農地の傍を歩きながら順に様々な植物を眺めていると畑で実った果実を収穫しているメイドと目が合った。


「ど、どうも。お邪魔してます」


 私のコミュニケーション能力が疑われるような何とも素気のない挨拶をすると、これが手本だぞとばかりにメイドははっきりとした発音ときれいな角度で頭を下げて挨拶を返してくれた。


「お世話になっております。ホスキンス様のお連れのかたと伺っておりますがこのような場所でいかがなさいましたでしょうか」


「いや別に用事とかは、たまたま通りかかっただけでして」


「そうでございましたか、よければ私が荷馬車まで案内いたしますが」


 はぐれたと思われたのか、ウロチョロされては困ると思われたのか定かでないがメイドは道案内を申し出てきた。


「いえ、道はわかりますので。それよりもここのメイドさんは作物の世話までするのですか?」


 家事手伝いのメイドは多いが作物の手入れを任されているメイドは見たことがない。


「はい、一部のメイドは栽培する作物の管理を担っております。私はこの果実トワイライトオレンジの管理を任されております」


 メイドの隣に置かれた籠や植えられている木々には確かに夕焼けのように熟したオレンジの様な果実が確認できる。どれもみずみずしく皮には張りがあっておいしそうだ。


「よろしければお1ついかがでしょうか」


 私の目線が果実へ釘付けになっていることを感づかれたのかメイドは籠から果実を1つ取り出してナイフで切って渡してくれた。

 表面だけでなく中身も濃いオレンジ色で断面からはみるみる果汁が溢れ出し、見ただけでその管理の行き届いている事がよく分かった。

 1つ手で掴み口に入れると舌から深い甘みとほのかな酸味が脳へと伝わり、旅で疲れた私の体がこの高い糖度を誇る果実を必要な栄養素と認識しているのがよく分かった。


「おいしい・・・」


 思わず感想が口から洩れてしまう。


「そう言っていただけて光栄です。トワイライトオレンジは太陽光を浴びれば浴びるほど糖度を増す果実。如何にして効率よく日光を当てるかには随分苦労したものですから」


 確かにこの味は苦労無くしてはあり得ない。何気ない一房だが詰まっているものは糖度だけでなく彼女の努力と才能そのものだろう。


「そういえば名前言ってませんでした。私はアルマ、アルマ・イエリチです」


 どうにも私には名乗るのが遅れてしまう癖がある、早く直さなくては。


「これは失礼いたしました、本来ならば私から申し出るべきところでしたのに。私はマクマーン家のメイドをしておりますアリアナと申します」


 今度は私も深く頭を下げて挨拶を交わす。さてこれ以上仕事の邪魔をしては迷惑だ、私はさっさと荷馬車へ戻るとしよう。

 挨拶もそこそこにメイドと別れ再び入口へと向かっているとホスキンスさんが後ろから小走りでこちらに駆け寄って来るのが見えた。話とやらが終わったのだろうか。


 ホスキンスさんは私に追いつくなり両手を膝に置き肩で呼吸を整えている。そこまで急がなくても荷馬車で勝手に帰ったりはしないのだが、それとも私が何かやらかさないか不安だったのだろうか。

 一先ず呼吸が整うのを待っているとしばらくの後ホスキンスさんはグッと顔を上げ右手で私の左肩をがっちりと掴んでくるではないか、なんだなんだ一体。


「俺の勘は正解だ、やはり一緒に連れてきてよかった」


 そう言って口角を上げにッと笑っているが私には何のことかさっぱりだ。


「といいますと・・・?」


「出番だお嬢ちゃん。あんたの≪特技≫を生かす時が来た」


 見るからに厄介ごとの匂いがする。どうも世の中楽をして金に在りつく事は中々できないらしい。

ご清覧ありがとうございます!

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