トライアングルレッスンD 〜ヒロシの嫉妬〜
『小説家になろうラジオ』看板企画、『トライアングルレッスンD』で朗読していただいた作品の続きです。
「嫉妬するヒロシが見たい!」と巽さんに仰っていただいたので、書いてみました。
もう9月だというのに降り注ぐ日差しはまるで真夏のよう。ユイコの白い肌が反射して、より一層輝いて見える。
いつも3人で遊びにいく時とはまた違う、ちゃんと『デート』を意識して選んでくれたのであろう服装に口元の緩みが隠せない。
「デニムのスカートって持ってたんだな。見たことないから知らなかった。」
自分の好みでもあるが、本当にユイコに似合っていたから思わず口から出てしまった。
「そう!最近買って!…どうかな?」
「うん。似合ってるよ。かわいい。」
「よかったー!タクミにも後で教えよう!」
「タクミ?」
何でここでタクミの名前が出てくるんだ?俺は自分でもわかるくらい、明らかに眉を顰めた。
「会ったの?昨日、タクミに。」
あからさまに不機嫌な話し方をしてしまった。ヤバい!と我に帰り、何でもない顔をする。
「会ってないよ。電話で。今日の服装が全然決まらなくて、タクミに相談したの。やっぱり幼馴染だよね!ヒロシの好み、ちゃんとわかってたよ!」
無邪気に話すユイコに少し苛立ちを覚えたが、ユイコは俺のためにしてくれたことなので怒れない。でもやっぱり、タクミが選んだ服を着て、そしてこの格好を恐らく一番最初に見たのが『タクミ』という事実が腹立たしい。
2人のしたことは何も間違ってない。こんな小さなことに嫉妬する自分が一番許せない。
「ヒロシ?どうしたの?さっきから黙って」
ユイコがキョトンとした顔で俺の顔を覗き込む。
「あのさ、ユイコ。今日映画辞めて、買い物行かない?」
「えっ!?でもチケット…。映画終わってから買い物しない?」
「映画は来週もしてるから、次のデートにしよう。それよりも…」
ユイコの耳元に唇を寄せて、こう囁いた。
「ユイコの服、選びたい。次のデートは俺が選んだ服着てきて…。」