怒れるゴリラの姫様よ〜他国への牽制のために戦略結婚するはずが、国が滅んだので婚約破棄します?姫を舐めるな!お前の国ごと潰してやる!〜
「ジュリエット、君との婚約を破棄させてもらう」
私の目の前で婚約者であるロミオ王子が契約書を破り捨てた。
「そんな!いきなりじゃありませんか!それに急にこんなこと言われましても困りますわ」
私は王子に詰め寄ると必死に訴えた。
「隣国の姫である君と結婚することで帝国とのピリついた関係に一手打つために婚約をしていたが帝国は先日滅んでしまった」
帝国が……?この大陸の半分ほどを支配するようなとてつもなく大きな国だったはず。それがどうして急に。
「国内部での反乱が原因だ。元々皇帝の独裁に近い支配であったからな。よって帝国が滅びたことでジュリエット、君との婚約は不要となったわけだ」
「そんな、昨日も好きと言ってキスをしてくれたじゃありませんか!」
「そんなのお世辞に決まっているだろう?君のその、ゴリラのような体つき、見た目、本当に隣国の姫かと疑うレベルだ」
確かに私は美人な姫とは言えない。足は太く、腹も太く、腕も太く、顔も豚鼻で黒髪。とても姫っぽくない。
「そういうわけだ。ジュリエット、君は明日にはこの城を出ていってもらう」
「そんな……」
ふざけないでよ。私、今まで誰からも愛されたことないのに。信じてたのに。こんなの、あんまりだよ。
「こんなの許せるわけないでしょ!」
私は王子に向かって思いっきり拳を振るう。
「ふん、体だけではなく心もゴリラだったか。アイスチェーン!」
私の拳が王子に届きそうな時王子から放たれた氷魔法が私の体を縛り付けた。
「明日まで待ってやろうと思ったが今すぐ追い出されたいようだな。こいつを城の外に連れて行け。こんなやつ追放だ」
「離して、やめて、王子、王子」
「うるさいぞ、早く歩け」
私は城の兵に腕を縛られそのまま外へと連れ出されてしまった。
「このクソ王子が!ロミオとかいうゴミ野郎が!」
私は塀の外城に向かって叫んだ。
「あんまり女のこと舐めてると後悔するぞ」
私は腹に力を込めて魔力を1点に集中させる。
「はァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァア」
私の体は炎へと包まれ筋肉は増強し、地面がドンッ!と重さで沈む。
「この国ごとあいつを殺す!」
私は炎をまとった拳を塀に叩き込む。
するとゴゴゴゴゴッ!と凄まじい音をたてて崩れ落ちた。
「ひ、ひぃ化け物だァ」
城の中を警備していた兵士たちは私の姿に恐れおののき逃げ惑う。
「何が起こっているんだ。兵の声を聞き王子たちが外に出てくる。」
「オマエ、コロス」
「化け物になったかこのクソ姫やろうが!」
私はエネルギー全てを身体強化に使っているため脳すらまともに働かない。
「アイスチェーン!」
再び私の体に氷魔法で動きを止めようとしてくるが全て私の体の炎で溶けてしまう。
ジューッと音を立てて溶けた氷が蒸発する。
「ウホ、ウホ、ウホ、ウホ」
私は四つん這いになりながら王子へと駆け出した。
「く、くそ、来るな化け物め!アイスエッジ!アイスチェーン!アイスブリザード!」
私に向けて放たれた魔法は全て私に届くことは無かった。
そして私は炎をまとった拳で王子を殴り飛ばした。
王子は遥か彼方へと飛んどいきグチャりという音が聞こえた。
「ウッホ、ウッホ」
私は嬉しさのあまりドラミングをする。
「ウッホ、ウッホ、ウッホ」
私はそのまま城を炎をまとったパンチで殴り続け、いつしか城は崩れ落ちた。
「あれ、私何しているのかしら。」
私は気がついたころには知らない場所に来ていた。
目の前には壊された建物、燃え盛る荒野が広がっていた。
「いけない、もしかしてまた国を滅ぼしてしまいましたか?」
この世には怒らせてはならない伝説の存在がいた。それは人なのかはたまたゴリラなのか誰も知る余地はなかった。