何故アイツを■■た……。
――いつかはさ、私を好きでいてよ
……大した素性も知らぬ女はそう言って、いまに咽び泣きそうなその声を血混じりながらに出し切っていった。柔弱な息は貧弱さをさらに加速させ、やがて音もしなくなっていく。
……憐れむことさえ馬鹿馬鹿しくなる女だ。控えめに言って救いようがない。何がしたかった、何をもってこんな無謀を犯したのだ。何を遺したかったのか。おそらく、そのいずれにも答えはない。それはわずかながらに理解できていた、訳が分からないからだ。
――何故アイツを■■た
……乱雑に引っ付けられた髪も色を失っていき、肌の艶さえも芳しくなく、どうしようもない人影は眼球から逃げだしていってしまう。執拗に付きまとってきた癖に今では目にもくれないのか。この愚鈍さには呆れるだけ虚しくなる。
――何故アイツを■■た
……のに、どうでもいいはずなのに。知ったことではないはずなのに。記憶を途方に亡くした意味も持たない脳が、訳も分からず何かをしつこく訴え掛けてくる。
胸が軋むほどに、誰かを懇願している。それが誰なのかはすぐに分かった――この女だ。
ただ、それはあまりにも狂人的で常軌を逸している。嫌気がさすほどにイカれている。だからどれだけ理解していようとも、痴れ者である自分はそれを認められない。認めることなど出来ない、許されない。認めてしまったら、それこそ救いようがないからだ。
――己が殺した女に恋をするなど
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