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次の日、学園祭の当日。
朝早く、準備のため生徒が学園に登校してきた。
しかしそこだけがちがった。
教室では学園祭が始まる前なのに、大勢の生徒そこで立ち、釘付けだった。
そうあの夜、彼らがその後どうなったのか。それがこの場を表していた。
彼らはそのまま一晩その場所で過ごさなければならなかった。
彼らが2階から3階へ向かう階段を登り始めた時、冷たい風が吹いた。
窓ガラスは閉まっている。だが、寒々しさを体に感じた。
暗いため階段を登る足元に目を向けていた。
手にライトを持ち、ゆっくりと足元から暗い階段の上を見る。
その時、見たことをあまりの恐怖で全員の声が出なかった。
そう、階段の上にはシャーリーがいたのだ。
死んだはずの彼女が。
あの時と同じ姿で。
制服は接着剤が付いてベトベト。違うのは、髪が肩上まで短く、ざくぎりに不揃いなだけ。
そして青白い顔をして俺たちを見ていた。
彼らはベトベトになった彼女までしか知らなかった。
暗いのに、何故かシャーリーの顔がはっきりと見えた。
驚きと恐怖で足の震えが止まらない。
シャーリーの目は真っ赤に染まっていて、そして俺たちを睨んでいた。
俺の後ろにいたマリアが恐怖で叫び声を上げ、登り途中の階段を降りようとした。
足元が暗く踏み外した。彼女から全員が躓き、その場から転がり落ちた。
痛みを感じるがのろのろと起き上がる。
彼女はゆっくりと階段を降りて彼らに近づいてきた。
恐怖と痛さで混乱しているが、彼らは廊下を駆け出した。
来た時とは違う廊下を走っているとは知らず、ひたすらその場から逃げ出した。
先頭を走っていた奴が、急に何かに躓いた。そのため将棋倒しに全員が倒れ、もがいた。
シャーリーは俺たちを追いかけてくる。ゆっくりと、足音もせずに。
なぜか俺たちはその場から逃げられなかった。
起き上がり、駆け出そうとしても体自体が動かない。
一瞬だけ動いたが、次には動けなくなった。何かが体中に絡まっているそんな感じがした。
暗くてわからない。そしてとても嫌な匂いがしていた。
もがけばもがくほど、それが体に付き纏う。
そして後ろを振り向いた時、シャーリーが近づいてきた。
あまりの恐怖で全員が叫び声を上げた。そして目の前が真っ暗になった。
その後は覚えていない。
学園際の教室。
昨日の連中が、あのまま一晩過ごしていた。
早くきた生徒が、先生に連絡して大勢で駆けつける。
彼ら全員が、その場から動けず、固まってしまい剥がれない。その上、一晩中泣いたのか、顔はボロボロ、痛々しく、あざだらけだった。頭から転んだため、その場から剥がすのには服を裂かれ、そして髪を全員が切らなければならなかった。それは婚約者のマリア嬢も。
彼女は大泣きしながら見ている生徒の前で、長い赤茶の髪をシャーリーよりもはるかに短く切った。
その他は頭に付いたものが取れないので、全員髪が無くなった。
ようやく剥がされ病院に行き、どうしてこのようなことになったのか、問いただされた。
その結果、全員退学は免れたが、3ヶ月の停学が決まった。
もうすぐ卒業する彼らにはこれからの人生に自ら傷をつけたようなものだった。
その後の人生は惨憺たるものになるだろう。
マリアは婚約が解消され社交界には出られなくなった。
侯爵だったヒューイも侯爵家自体が財政難で没落した。
そのほか全員が廃嫡された。
冷たい風が吹く小高いにところに人影があった。
3人がその腕に大きな花束を抱え立っていた。
ゆっくりと、その抱えた花束を墓石の上にそっと置く。
3つの花束からは甘い香りが風に流れる。
立っているのはシャーリーの双子の兄と妹、そしてあの時シャーリーを助けてくれたハリー殿下だった。
じっと墓石を見る3人の後ろ姿は、悲痛な思いを胸に抱くように見える。
彼らはその下に眠る彼女をじっと見るだけだった。
そして言葉には出さなかったが、彼女が今度生まれてくるならば、違う人生を送ってほしい。
兄妹たちは、また自分たちの姉として、でも、今度のようなことのないことを望んで。
完
未熟な物ですが、読んで頂きありがとうございした。