表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/4

3


3



2年後。


学園に2人の編入者が登校してきた。

立派な馬車から降りてきたのは、シャーリーの双子の弟と妹。


背の高い弟、姉と同じプラチナブランドで、にこやかに振る舞う美丈夫な青年だ。

同じくプラチナブロンドで、腰まである長い髪を持つ美しい妹だった。

だが妹の方は冷ややかな顔で、どちらかと言えば姉には似ていなかった。

そのため彼らはあまり気が付かなかった。


だが、学年は違うとはいえ、美しい双子の噂は学園中にすぐ知れ渡った。

そして麗しの双子と言われ注目された。


♢♢♢


届いた手紙を読んでから、直ぐに妹は帰国の準備をした。

叔母に姉のことを話し、父からの手紙を渡した。

叔母は妹の体を心配したが、妹はもう大丈夫というので、叔母は学園への編入手続きをしてくれた。

弟はあのまま家に残った。

全ての手続きを済ませてから、妹は家に戻った。



伯爵の祖父が持っていた山岳地帯の小さな領地で、2年前にダイヤモンドが発掘された。

昔からそのような話があったが、噂だと、今まで手付かずにしていた。

だが、隣国の叔母の友人がその話を聞いて、協力者として伯爵家と共同で採掘し始めた。

それがようやく見つかり、少しずつ利益を産んでいた。

掘削して加工し、貴金属の商売を共同経営して潤った。


そう、伯爵が持っていた領地の山にダイヤが取れることを、なぜかあのブルームフィールド侯爵は知り、シャーリーと息子を結婚させ、いずれは自分たちの物にしようと企んでいた。

当時、シャーリーしか伯爵には子供がいないと思い込んでいたので、侯爵は双子の存在を知らなかった。


伯爵家の財力が潤沢になった。だが、生活は今までとは変わらなかった。

伯爵自身が、身の丈に合った生活をしていたからだ。妹は隣国から帰国し家に戻った。

編入試験の成績が優秀なのと隣国での成績を見て、学園は特待生として編入した。

昨年度から成績優秀者は授業料免除になり、二人もそれに該当した。



ある日、妹は学年上のヒューイの婚約者になったマリア嬢に呼び出された。

2年前に姉をあんな風にした本人が彼女の前に立っていた。多くの取り巻きを連れているマリア嬢は、我が物顔だった。

「あなた、編入してきて随分経つのに上級生の私に挨拶もしないなんて、なんて生意気なのかしら」

妹は黙っている。そしてシャーリーとは違い堂々と立ち、目が鋭かった。

だがその見事なプラチナブロンドを見ていると、ふとマリア嬢は、頭の隅から思い出したように気が付いた。


「あなた、あなたもしかしたら、あの子の妹?」

妹はまだ黙っていた。

するとにやりとマリア嬢が笑った。


「そう、そうだったのね。では、あの双子の兄の方もそうなの。

 ダンマリなのはあの子の妹ね。あの子、病気で亡くなったそうね、お気の毒だったわね」


今はあなたの姉の代わりに私が婚約者よ。そうとでもいうような態度をしめす。

それでも黙っている妹が気に入らないのだろうか。姉がどれほど身の程知らずだったかと言いはじめた。

だが、妹はその挑発に乗らなかった。


はっとため息をしてようやく口を開いた。

「そんな馬鹿馬鹿しい話など、聞く時間などないわ」

それだけ言って歩き去った。

マリア嬢はカッと顔が赤くなり、待ちなさいよと言って妹を追いかけ肩を掴んだ。

すると妹は振り向き、その掴んだ腕を振り払う。

そして鋭い視線を彼女に向けた。


その目は射殺すような目で、とても伯爵令嬢とは見えないほど鋭く、冷徹なものだった。

恐怖を感じたマリア嬢は慄き、手を離して立ち止まってしまった。



その後、あの編入者がシャーリーの弟と妹だと、婚約者のヒューイに話した。

最近の侯爵家は財政が少しずつ傾いていた。

シャーリーと結婚させようと企んだものの、シャーリーが亡くなってしまい婚約解消された。

息子の方はマリアと婚約できたことが嬉しかったが、侯爵はせっかくの金蔓を逃してしまった。

侯爵はマリアの家が格下で、何も後ろ盾のないことが不満だった。

それが2年後、今になって、伯爵家の噂を聞き悔しくてしかたがなかった。

そしてさらに双子がいた。



それからしばらくすると、学園祭の時期になった。

最終学年のヒューイたちは卒業するため行わなかったが、双子たちのほうは、催しものをする準備に追われていた。

クラスが別々なので、弟の方は喫茶店を、妹の方はおばけ屋敷を企画した。


そして兄妹は、前々から計画していたことを実行する。

明日が学園祭となり、前日まで妹のクラスは準備をしていた。

全ての準備が終わり明日を楽しみにして、生徒たちは帰宅した。


そして深夜、数人の者が学園に入ってきた。

手には何かを持ち、目的の部屋を探し始める。


こんな夜中に学園に来るものなど居ないはずなのに、先頭を歩くものは明かりを手に、後を歩くものたちの手には物を壊すことができる棒などを持参した。

そう()()だった。

先頭を歩くのは、レイモンド・コーツ伯爵子息。2年前、シャーリーは彼に小突かれて、そして接着剤が付いてしまった。その後彼女の横にハサミを置いた者だ。

その後ろには、ヒューイ、マリア嬢と続いた。

2年前シャーリーにあんな酷いことをした全員だった。


学園は3階まであり、1階、2階と目的の部屋を彼らは探していた。

そう彼らは、妹たちのお化け屋敷の教室を探して、せっかく作ったお化け屋敷を壊しにきたのだった。

「1階、2階も違うな、やはり3階だ。あちら側の階段でいこう」

そう言って全員が歩き出した。

明かりを持ち先頭をレイモンドが歩く。


するとしまっていた廊下の窓から、何故か冷たい風が吹いてきた。













読んで頂きありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ