幸SIDE
今現在十二時半。やっと午前の授業が全部終わって解放されたトコ。ってことで縁ちゃんと愛ちゃんに会いに行こーっと!
(転校生の話も聞きたいしね~!どんな子が来たんだろぉ?)
提出物を出しに職員室に行ったら偶然聞いちゃった転校生の話。
小声で話してたけど俺ってば普通の人よりも耳が良いから大抵の音なら何でも聞き取れちゃうんだよね。
「A組の様子見た?転校生の暁君と出雲様の組み合わせヤバくない?」
「分かるー!てかてか、あの感じだったら愛兎様と幸様も相まって絶対最高よね!」
「その四人組気絶レベルで好きだわ私。」
ピクリ、と誰かの会話に反応する。
転校生ってば縁ちゃんともう仲良くなってるんだ。
…ふーん。
「それは…嫌だなぁ。」
四人組って聞こえたけど何で一緒になる前提で話されてるんだろ。ムカムカするや。
スッキリしない気持ちのまま二人の教室を覗き込めば、そこはブリザード吹き荒れる極寒の地と化していた。
おぉ、と感嘆の声を上げる。
「暁君は男子達と一緒に食堂行ったらー?やっぱり最初は男の子の友達が必要だとアタシは思うなー?」
「今日は縁さんと食べようかと思ってて…縁さん、一緒に昼食良いかな?」
「私は別に構わ「縁さんー?!もう下の名前で呼んでるわけ?!」
「親しみを込めて呼ばせて貰っているんだ。ね?縁さん。」
「こ、こんにゃろう…。」
白髪の愛ちゃんと赤髪の男子生徒のリアル紅白合戦が行われていた。
しかも二人はニコニコ笑顔で話しているのに空気だけが凍っているという器用さ。
「ねぇねぇ君達。あの愛ちゃん達の状況説明して貰っても良い~?」
「きゃっ、さ、幸様!!」
「話し掛けられちゃった…!」
彼らを遠巻き見ていた女の子達に話し掛ければ顔を赤くして俺を見上げる。彼女達が話してくれたのは俺にとっても実に面白くない話だった。
急に来た転校生に俺達の大切な縁ちゃんを独占されるなんて俺だって噛み付く。
(飼い犬はご主人様に手を出されると犬に変わるんだよ…てね。)
俺に気付いた縁ちゃんに手を振ると、一緒に振り返ってきた転校生。
その目には明らかな嫉妬が含まれていた。
あは。
最高に楽しくなってきたね。