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九州大学文藝部 新入生号

引鉄

作者: 秋月渚

作者コメント:今回はワードファイル一枚分ぐらいのミステリーっぽい何かです。しかしフーダニットを求める作品ではないということだけ、最初に提示させていただきます。どうぞよしなに


「さて、ここに一丁の拳銃があります。弾倉には二発の銃弾が入っています。あなた方にはこれからこの拳銃を使ってロシアンルーレットに興じていただきます。引鉄を引く順番はこちらのサイコロを利用して決めていただきます。…………さて、順番も決まったようですね。では拳銃をどうぞ。幸運の女神があなたに微笑みますように」


「それにしても、随分と変な格好をしたやつですね」

 床に書かれた倒れた男の跡をなぞる白線と、現場写真を見比べながら後輩が呟く。ひょいと写真を覗くと、真っ赤なスーツを着た男が床に倒れている。傍らには同色のシルクハットが落ちていて、その手には漆を塗ったかのように光を反射するステッキを持っていた。確かにこんな男が街中を歩いていたら思わず二度見してしまいそうである。

「死因はこめかみに一発」

バンと指で銃を撃つふりをしながら後輩が言う。不謹慎なやつだ。

「帽子は撃たれたときに落ちたみたいですね。帽子のふちに銃弾の跡が残っていたそうです」

「撃った拳銃は見つかったのか?」

「ええ、これがそうです」

そう言って彼は袋に入った拳銃を差し出す。袋から取り出し弾倉を確かめると、そこには五発の銃弾が装填されている。

「指紋はとれたのか?」

「いえ、検出できなかったそうです」

「自殺ではないんだったか」

「ええ、彼の袖から硝煙反応が出なかったそうで、何者かに撃たれたのではとの見方が強いようですね」

硝煙反応をごまかす方法が全くないわけではないが、それには協力者が必要である。わざわざそんな壮大な自殺に付き合うような酔狂な人間がそうそういるとは思えない。

「そういえばこの男の身元は分かっているのか?」

「あ、はい、三宮優、三十七歳、大手企業の営業だったようです。奥の部屋に普通のスーツとカバンが置いてあって、その中から名刺が出てきました。写真も確認済みです」

「大手企業の営業マンがなんでこんなところに、ねぇ」

「実際ここも何に使われていたのかよく分かりませんでしたからね。いたるところから発射残渣が出てきたのには驚かされましたが」

 ああ、そういえば、と彼は何でもないような顔で続ける。

「その拳銃、改造でもしているのか引鉄が軽いですよ。先輩もちょっと確認してみませんか」


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