表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/53

レスビアン・パーティー

 「キンギョちゃん、かわいー」

 「見た目より胸あるんだねえ」

 広いリビングに引っ張り出されて、みんなに囲まれた。

 うわー。ハダカでいるより恥ずかしい。

 

 「大丈夫、すぐ慣れるわよ。

  さあ、食事しよ!」

 テーブル一杯に、ピザやオードブルが並べてある。

 信じられないことに、お酒まである。

 「キンギョちゃんには飲ませちゃダメよ。

  おうちに帰る人は、醒める暇がないからバレちゃうよ。

  お泊りの人だけ、ナイショでね」

 お姉さんがみんなに飲み物を配った。

 この人は、なんとSM女王の格好をしてるじゃないか。

 乾杯をしてから、食事が始まった。


 「ねえ、オトコ嫌いなんだって?」

 花井先輩がさっそくくっついて来た。

 「吉行ちゃんに聞いたわよ。

  お兄さんに犯されたんですってね。

  あたし、可哀想で泣いちゃった‥‥」

 ははは。お兄ちゃん、広まってますスイマセン。


 「あたしもねえ、去年まではカレシもいたし、まともだったのよ」

 花井先輩がしみじみ言うと、

 「この子のカレシって、テナーの久住よ!

  あのゴン狐!」

 紫堂先輩が横から割り込んだ。

 「なによ!自分のカレシだってバスのツルベでしょ」

 「ツルベって言うな!」

 うわ。カレシってわりと至近距離で調達してるな。


 「それがひどいのよ、久住って!

  ファーストキスだったのに、2秒で舌入れて、4秒で下半身触ったのよ」

 「あたしは胸だった。

  しかも手つきがこうよ!モキュモキュ」

 「どあっはっはっは」

 テ、テンション高いな。


 それをきっかけに、それぞれが自分の体験談を話し始めた。

 「フケよ。フケがひどかったの。

  肩のとこが真っ白で、ベーコンの脂身みたいなの!

  うじ虫かと思ったんだから」

 「どんだけよぉ」

 「うちはおツユが凄かったんです。

  ベッドでチューしたら、滝みたいな唾液が咽喉までだあああっと。

  もーお、このまま溺れて死ぬと思った」

 「ツバで溺死っ」

 「あーはははは」

 「笑い事じゃなかったんです。

  そのうち、あたしの鼻から出てきて」

 「唾液が!」

 「イヤーッ!」


 よかった。このレベルの話なら、なんとかついて行けるぞ。

 あたしとミントが揉めたところと、精神的には変わらない。


 ここにいる人たちは、全員がレズなわけじゃない。

 年頃になって、えっちに興味が出てきて。

 でも、オトコは異星人みたいで、体を解放するのは怖い。

 そのキモチは、女の子なら誰でも持ってる。

 すっごく、わかるんだけど。

 だからって、手近な女の子で代用するのは、どうなんだって気がする。


 「キンギョちゃんは、カノジョいるんでしょ?」

 吉行先輩が、皿にポテトチップを追加しながら、シースルーから透けて見えるあたしの乳首をモロにつまんだ。

 「きゃあっ」

 気をつけないと、この人だけは真性のレズだと思う。

 それにしても、‥‥“カノジョ”?


 「オトコが苦手なのに、あれだけ立派なキスをするってことは、誰かいるのよね?

  ど〜このオネエサマに仕込まれたのか、言いなさい」

 「お、オネエサマ‥‥」

 オニイサマだよ!

 大林先生の血縁だよ!

 あんたらがハートマーク付けまくってたオトコだよ!

 ‥‥そう言ってやったら、この人たちどんな顔するだろう?

 オトコ嫌い返上して、大騒ぎするかな。


 「えー、キンギョちゃんキス上手なの?」

 「吉行先輩、ホントですか」

 「ホントホント。

  なにしろあのマカちゃんがメロメロだったんだから」

 いや、それはミ♭で脅したからだし。

 「えー!間壁先輩って、レズじゃないじゃん」

 「オトコ好きよねー。あの子」

 「すごーい。教わりたーい」


 「ね、あとでキスしてねキンギョちゃん」

 「あたしもっ」

 「じゃ、あたし3番!」

 並ぶなよ。

 冗談がすぎるというか。

 冗談の方向性が限定されてるとこがこわい集団だな。


 すると、吉行先輩がスックと立ち上がって言った。

 「だぁめです!

  ハツモノは、まずアタクシがお味見いたします!」

 言うが早いか、あたしの上に覆いかぶさってきた。

 歓声と悲鳴で大騒ぎ。


 これってパーティー乗りだよね。

 あたしだって、親しい友達とはふざけてチューしたことある。

 でも組織的にやってるとこが、ウザイ!

 でも、みんなの前でぶん殴るわけにも行かず。

 あたしはおとなしくキスされた。

 ついでに、口の中にあったプチトマトを、舌で押して相手の口の中に転がしてあげた。

 まあ、余興だし。


 吉行先輩の目がまあるくなった。

 「このコ‥‥。プレゼントくれた」

 こらこら、わざわざ出して人に見せるんじゃない!

 大騒ぎになった。

 いちいちうるさい人たちだ。


 「あたしもあたしも」

 さっきからチューハイをガバガバ飲んでいた花井先輩が、あたしを押し倒した。

 そのあと何人もが襲い掛かってきた。

 笑いながら、体中触ったり、キスしたりする。

 なにしろ、ソレ用の衣装だから。

 着たままで、どこにだって手も舌も届いてしまう。

 みんな酔ってる。

 あたしはシラフだってのに!


 最初はキャーとか、ヤダーとか大声で騒いで見せたけど。

 だんだん、それどころじゃないと思い始めた。

 マズイ。息が乱れて来た。

 これって、子宮には少しも来ないのに、呼吸には来る。

 あたしは両手で口を覆った。

 うっかりしたら、とんでもない声が出るんじゃないかと思ったのだ。

 襲ってる連中も、だんだん没頭して黙ってしまう。


 ちょっと。これ、冗談で済むの?

 逃げようとしても、これだけの人数に乗っかられてると動けない。

 この人たち、どこまでやっちゃうつもりなの?

 このままキズモノにされたりしたら、シャレにならない。

 これって、ある意味リンチなんじゃないだろうか?

 ソプラノのイジメより、いくらかでもマシだと言えるんだろうか?


 「ほらほら、いい加減にしなさい。

  こわがって涙ぐんじゃってるじゃないの」

 お姉さんがみんなを止めてくれた。

 ああ、天の助け。


 ところが、お姉さんはSM女王の衣装にぴったりの笑顔で唇を引き上げて、言った。

 「そんなのより、アタシのドレイの方が楽しいに決まってるじゃない」

 お姉さんは、手に持った鞭の先を輪っかにして、あたしの首に掛けた。

 後ろから肩に手を回し、首の鞭を引いて、あたしを寝室まで歩かせた。

 ‥‥ウソだろ。

 これはいよいよ冗談じゃない。 



 「おねえちゃん!ヒドイ!横暴!」

 「独り占めしないでください!」

 みんなが後ろからブーブー文句言ったけど、女王様は取り合わない。

 寝室の鍵をかけ、あたしをベッドまで引きずって行った。

 「上がんなさい!上がって!」

 首をぶら下げられてるので、手探りでベッドに上がる。

 ‥‥神様‥‥。


 「あんた、バージンでしょ」

 いきなり言われて、ギョッとした。

 「レズでもないわね。どうしてホントのこと言わないの?

  カッコつけてたら、大変なことになるわよ。

  この家は、バイブとかローターとか、お道具が揃ってるんだから」

 「‥‥わかるんですね」

 「わかるわよ、この道何年やってると思ってんの」


 お姉さんは、煙草に火をつけた。

 ベッドに座って煙を吐く姿が、スタイルとマッチして映画みたいだ。

 「女同士だからって、油断してたでしょ」

 「はい」

 「ふざけて一緒にやっちゃうのよね」

 「‥‥はい」

 あたしは素直に認めた。


 実際、間壁先輩にキスするとこから、そこまで真剣じゃなかった。

 あれが、緑川部長を落とせと言われたのなら、もっと悩んだはずだ。

 さっきのプチトマトだってそうだ。

 男子部員には、酔ってたってできない。

 ちょっと調子に乗ってた。

 

 「冗談だろうがマジだろうが、セックスはセックスよ。

  それで深みにはまっちゃう子はいっぱいいるのよ。

  空気読んで、周りに合わせちゃう子が一番危ないの。

  いやなものは、いやって言いなさい。

  平気そうな顔するんじゃないの。

  こんなことで、一生棒に振ったら笑えないじゃないの」

 ホントにそうだ。恐ろしいことだ。


 「この部屋に30分いていいわ。

  あとはなんとかごまかして帰りなさい」

 あたしはやっと気がついた。

 このお姉さん、パーティーをあおってるように見えるけど、実は監視役なのだ。

  

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ