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不純同性交遊

 一瞬、ダメかなと思った。

 間壁先輩の方が、あたしより背が高い。

 抱きついてみると、体にも厚みがある。

 本気で暴れられたら、最後だ。


 でもここでやめるわけにはいかない。

 中途半端な事したら、言いふらされて破滅する。

 第一、苦労して名人芸を授かったのだ。

 ここで使わなかったら、あたしはれんさんにやられ損じゃないか。


 先輩は、空いてる方の手であたしを押しのけようとした。

 あたしはそれを左右に逃がしながら、先輩を壁に押し付ける。

 唇は離さない。 引いては浅く、踏み込んで深く重ねる。

 逃げる時追わない。 緩んだら締める。

 タイミングを読んで、波のようにリズムをつけて、しつこく。


 「あっ、ン、んんん‥‥」

 叫び出しそうになる相手の唇を、あたしの口で何度も塞ぎなおす。

 「静かにしてください」

 触れ合ったままの唇から囁く。

 「ミ♭はあたしが預かってます」

 先輩の体から、急に力が抜けた。

 「まだ部長には伝えてませんから」

 先輩が全く抵抗しなくなった。

 ‥‥勝った。


 目に涙をいっぱいためて、ヨロヨロ出て行く先輩に、

 「鍵は閉めておきますね」

 静かに、声をかけた。

 

 やった!!

 これ、めっちゃ快感。

 やみつきになったらどうしよう。


 ひとりぼっちの音楽室で、ガッツポーズを3回やった。

 まだこれは、ただのスタートだ。

 この先9月までもたせるのが大変なのだ。

 でも、とにかく今は一勝した。

 今夜はジュースで乾杯だ。


 鼻歌気分で戸締りをしていると、うしろからツンツン肩をつつかれた。

 「あ‥‥吉行先輩」

 ポニーテールに、猫科の動物みたいな小顔。

 アルトのパートリーダーの吉行さんだ。

 明るくて元気な人だが、あたしはあまり話したことがない。

 

 合唱部というのは、パートごとにいろんな決まりがあって、カラーも違う。

 それぞれのパートでまとまってしまうのだ。

 アルトの先輩とは、まだあまり触れ合う機会がない。


 「ふふふふふふう〜ん」

 突然意味ありげに笑われても、思考回路がつかめなかった。

 「あんた、なかなかワルじゃないの」

 吉行先輩は、あたしの顔を覗き込んだ。

 

 「見てたわよ。あのマカちゃんを降参させるなんて、やるじゃない。

  場数も踏んでるわね。

  ね。女の子とえっちしたことある?」


 うわ。 なんじゃこの人は。

 いきなり人の腕を取るなっての。

 その腕の取り方が、なんか全然普通じゃない。

 脇の下から手を入れて、肩に体でしなだれかかる感じ。

 

 いやな予感。

 この人、本物なんじゃないかしら。


 「なんて顔してるのよお」

 吉行先輩、きゃらきゃら笑って肩にもたれかかって来る。

 「大丈夫、誰にも言わないから。

  キンギョちゃん、アルトに来ればよかったのにねえ。

  アルトはそっちの同士がいっぱいいるわよ。

  ソプラノなんて、マカちゃんのヒステリーにびくびくしてて可哀想」

 

 「あの‥‥。 吉行先輩。

  あたしは場数とか踏んでないし」

 「うわあ、肌がきれいねえ、キンギョちゃん」

 先輩、人の話を聞く気ゼロだ。

 「首筋なんて、真っ白‥‥」

 顔を近づけないで下さい。


 ヤバイ、やばいぞ。

 攻撃の仕方は習ったけど、逃げ方は教わってない。

 れんさーん!


 「ねえ、今度うちに来ない?」

 鍵を返しに職員室に向かう道々。

 べったりくっついちゃった吉行先輩が囁いた。

 「土曜日に、アルトの子たちが何人か集まるのよ。

  キンギョちゃん来てくれたら、みんな喜ぶわ。

  ソプラノでいじめられて、かわいそってみんなで気にしてたんだから」

 「そうですか?」

 確か、つわりだとからかったのも、アルトの人だったけど。


 「泊まるのが無理なら、夕食だけでもいらっしゃいよ。

  みんな弾けちゃって楽しいわよ。

  男の子が嫌いな子ばかり集まって、大愚痴、大暴露大会になるのよね。

  ピアノ・パーティーって言うのよ」

 「ピアノを弾くんですか?」

 「違うわよ。だからあ、来て見たらわかるって」


 「でも、あたし夕食の食事当番なんですよね」

 なんとか断ろうとして言うと、

 「まあ。ヒトデナシの強姦魔のお兄さんに食べさせるものなんて、作んなくていいわよ!」

 「き、聞いてたんですか」

 お兄ちゃん、ごめん。

 ちょっと罪状が重くなった。

 

 吉行先輩は、小ずるそうな表情で唇をなめた。

 「いいけどねえ。 マカちゃんに言っちゃおうかなあ。

  あんたが出てった後、キンギョちゃんたら、ガッツポーズを3回もやったわよ、って。」

 ‥‥ふえ〜ん。オニですか。


 

 土曜の夜、実は食事当番はなかった。

 食事の支度自体、サボろうということになったのだ。

 親戚で不幸があって、両親は飛行機で北海道まで飛んでってしまった。

 一食くらいパンでもかじっとくからいいや、とお兄ちゃんは言った。

 あたしの帰宅時間を何度も確認したところを見ると。

 また茉理さんを引っ張り込むつもりかも。


 吉行先輩は、一戸建ての家に、お姉さんと二人で住んでいた。

 両親とも音楽家で、演奏旅行が多く、ほとんど不在だという。

 お姉さんはもう社会人で、姉妹そろって小顔でネコ科っぽい。

 お姉さんが運転する車で、先輩は駅まで迎えに来てくれた。

 「みんなもうそろってるわよ。

  ちょっとすごい事になってるけど、驚かないでね」

 

 吉行先輩が玄関を開けて、あたしを招き入れると。

 奥から、とんでもない集団が湧いて出た。

 「いらあ〜っしゃい!」

 「きゃああああキンギョちゃんだあ」

 その場で尻餅つきそうになったほど驚いた。

 全員が下着姿なのだ。

 それもただの下着じゃない。

 

 スケスケだの、ヒラヒラだのは、まあ許せる。

 でも絶対これ、とんでもない下着だってば。

 あの‥‥通販とかでしか売ってないヤツ。

 着たままコトに及べる、フラチ下着。

 こんなの、実物見たの、初めて‥‥。


 メンバーはあたし以外、全員アルトの人だ。

 3年生のナンバー2花井先輩と、ナンバー3の紫堂先輩。

 あとは2年生が3人。

 あっ、うちのクラスの星野ちゃんまでいる。

 とにかく衣装がすごくて、目のやり場に困る。


 「あのね、姉が通販の会社で仕事してんのよ」

 吉行先輩がにこにこしながら、紙袋を一つ、あたしにくれた。

 「ということで、キンギョちゃんも着替えてね」

 「ええっ!あたしもですか?」

 「当たり前じゃないの!一人が普通のかっこしてたら、あとの人が恥ずかしいわ。

  第一、それじゃピアノ・パーティーにならないし」

 「だから、なんでピアノなんですか?」

 「この下着よ」


 吉行先輩は、前開きの下着のカーテンみたいになったところを、ピロンとめくって見せた。

 わ!そんなことしたら、胸もお腹も全開で丸見え!

 「ね。ピアノのカバーみたいでしょ?]

 た、確かに。アップライトのピアノのカバーと形が似てる。

 「あたしも姉貴も着替えるから、安心してね」

 それのどこに安心の材料がある?


 おへそのところにチョウチョが飛んでる、ピンクのひらひら。

 えーん。スケスケなのにブラが付いてないよう。

 おまけに、このパンティーの裂け目はなんなのさ!

 あたしらのアソコはティッシュですか?

 こんなの着せて、どうしようって言うんだ!

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