防えっちシステム
ケータイ小説を意識して、故意に短文中心に書いてみた、私としては実験的な小説です。タイトルもチャラそうに見えますが、内容的には結構真面目な初恋の話です。
別れ話は、そろりと乗せる。
ハカリの針が振れないように。
「しばらく会うのやめよ、って言ったら、‥‥ミント怒る?」
おっかなびっくり、切り出した。
いつものマックの2階席。
ミントこと根岸民人は、眉をひそめて低くうなった。
それほど意外でもなさそうだ。
「やっぱ、あーや怒ってんだな、昨日の事」
「そうじゃないよ」
「怒ってんじゃん。 昨日も思い切り殴ったろ」
「殴ったけど。でも怒ったから会わないって言ってるんじゃないのよ。
あたしは、ミントを待たせてる。
でも、待ってもらうだけの気持ちが、あたしにはないの。
このまま一生待たせたままだと、今度はミントが怒るでしょ?」
きのうミントは、あたしにキスした。
抵抗したら、押し倒された。
暴れて殴って、逃げ帰った。
おかげで今日は筋肉痛だ。
それも昨日が初めてじゃない。
だんだんエスカレートして来る。
ミントはだんだん、こわいケモノになって行く。
友達でいいと言ったのは、ミントだ。
そして交際がはじまったんだ。
実際すごくいい友達だった。
クラスの男子の中じゃ、一番話がしやすかったし。
このままずっと一緒にいたら、恋になるんだと思ってた。
でもそれは、待ってもやって来なかった。
いつまで待たせるんだ!って、ミントの目が言ってる。
二人きりになりたがる。 暗いところへ行きたがる。
何もかもを断ると、すごく機嫌が悪くなる。
だからって、ついて行ったら昨日みたいな事になる。
その気もないのについて来た、あたしが悪いと責められる。
もうだめ。 どうにもならない、この温度差は。
プレッシャーで胃が痛い。
ごめんね。
ミントを切り離して、あたしは楽になりたい。
「わかった。 オレが悪かったよ。
もうあんな事はしないから。
オレ、もっと待つから。 あせんないから」
違うのに。
微妙に伝わってない感じ。
エッチだけやめて、待機されても困るんだ。
あたしはエッチがいやなんじゃない。
あたしはまず、恋がしたい。 エッチなんて恋の付属品だと思ってるんだから。
でも今、あたしの胸にミントへの恋の在庫はないのだ。
いつ入荷するかもわかんない。
ただ手控えられても、つらいだけ。
「わかった! グループ交際にしよう!」
ミント、さらに的を外れていく。
「な? そんなら、あーやも不安じゃないだろ?
誰か友達連れてきて、ダブルデートだけにしよ?」
「だめよそれ。 誰も来るわけない。
クラスの子たち、あたしらが付き合ってんの、知ってるもん。
お邪魔虫だから、ヤダって言うよ」
「じゃあ他の学校のヤツ連れてくよ。
そいつらお互い紹介してやるって感じでさ。
そう、合コンみたいにしちゃえばいいんだよ」
なんだかおかしい。 笑っちゃう。
そこまでするか、普通。 同じクラスにいるのに。
こういう単純なとこが、ミントって可愛いんだけど。
それであたしはついつい、深情けを起こしてしまった。
「わかった。 ダブルですんのね、いいよ一回くらい試しても。
今度の土曜にやってみようか」
あたしって、気が弱いかな。 グタグタになるまで叩く勇気がなくて妥協してしまうなんて。
そして、騒動の幕は開いた。