因子について
今回は前の話より長いです
「因子というのは、魔法とはまた違う、異世界の力の事です」
「力?」
「はい、魔法を使用するためには魔力という物が必要なのですが、因子は魔力を必要としない力です」
『魔力』俺はその言葉に疑問を抱いたが話が途中そうなので、とりあえず『魔力』という言葉を頭に入れながら話の続きを聞く。
「因子とは、生物の元々持っている力、能力とも言えるでしょうか」
「元々持っている力?」
「特徴、と言ってもいいかもしれません。例えば、貴方が知ってる生物で例えるなら、犬が分かりやすいかも知れないですね」
「犬ですか」
「犬は優れた聴覚と嗅覚を持っています、嗅覚に関して言うなら、人間の約七十倍だそうですよ」
「七十倍⁉︎」
確かに犬の鼻は人間よりいいとは良く聞くが、まさか人間の七十倍も嗅覚が鋭いとは思わなかった。
「その優れた犬の能力をもし他の生物が使えるとしたら?」
「他の生物が使う?」
俺は首を傾げた雰囲気を出して疑問の声を上げる。
「先程、因子とは生物の元々持っている力、能力と言いました。異世界ではその因子を、他の生物が取り込む事が出来るのです」
「取り込む事が出来る?」
「つまり、犬の因子を人間の月原さんが取り込むと、犬の能力を持てるはずのない人間の月原さんが犬の能力を持つ事が出来るというわけです」
「なるほど、つまり、俺で例えると、人間以外の生物の因子を取り込むと、その取り込んだ生物の能力を俺が使えるようになる。という事でいいのか?」
「はい、その通りです」
俺は、素直に凄い事だと思った。だが、凄いと思う事、感心出来る事には必ず疑問が生じるものだ。
今回も、俺は凄いと思ったと同時に疑問を抱いていた。まぁ今回の疑問はとてもシンプルなものだったが。
「確かに、因子という物がある事は分かった。だが、その因子ってどうやって取り込むんだ?」
そう、因子を取り込む方法が今の説明では分からなかったのである。
「あっ、説明し忘れてました」
と神様が軽く舌を出して軽くお辞儀をした。
⋯⋯かわいいな。俺は思わず見惚れてしまった。
しかし、神様は俺が見惚れてる事なんて気付かずに話を進める。
「因子を取り込む方法は二つあります、一つ目は、生まれた時に既に因子を持って生まれた場合です」
「因子を持って生まれる?」
「はい、例えば、親が犬の因子を持っていた場合、その子供にも犬の因子が受け継がれる可能性があります」
「可能性があると言うことは、受け継がれない可能性もあるのか?」
「その通りです。受け継がれる可能性は高く見積もって三十パーセント程といったところでしょう」
「それは、低いという訳ではないよな?」
「その通りです。因子を受け継ぐ条件があるんですよ」
「条件?」
「生まれてくる子供との相性ですね。相性が悪いと因子は受け継がれません」
「相性?例えばどんな」
「例えば、因子を持っている親が母親の場合で、生まれてくる子供が男の子だった場合、因子は受け継がれません。その逆もまた然りですね」
「なるほど、生まれてくる子供と性別が違う親が因子を持っていた場合、受け継がれないという訳か」
「その通りです。因みに両親がそれぞれ違う因子を持っていた場合は、必ずどちらかの因子が受け継がれます」
「なるほど、生まれてくる子供が女の子だと母親の因子を、男の子だと父親の因子を受け継ぐってことだな、確かに条件を考えると三十パーセントという数字は的を得ているな」
つまり、両親が因子を持っていた場合はどちらかの因子が受け継がれる、しかし生まれて来る子供の性別の確率は五十パーセント、半分の確率で変わってくる。
でも両親二人とも因子を持っていたら、生まれてくる子供がどちらの性別でも因子自体は百パーセント受け継がれる。
しかし、受け継がれる因子は両親の片方しか受け継がれないのだ。
つまり、両親二人とも因子を持っていたとしても受け継がれる因子が片方である以上、確率は五十パーセントという事になる。
そう、両親二人とも因子を持っていたとしても、受け継がれる可能性そのものは半分、五十パーセントなのだ。
なので、両親のうち因子を持っているのが母親で、生まれてくる子供が男の子の場合、因子は受け継がれない。その逆もまた然り。
したがって、受け継がれる確率が更に下がり、三十パーセント程になるのは必然というわけか。
「はい、その通りです。月原さんは頭の回転が速いですね」
「これでも、大学行くために勉強頑張ってたからな」
まぁその大学には結局行けなかったんだけどね。
「後、俺、漫画とか小説とかゲームとか結構好きだったから、先を読むのが少し癖になっているのかも知れないな」
まぁその漫画とか小説とかの主人公みたいな事に、自分がなるとは思ってなかったけど。というか十八歳で死ぬとは思ってなかったけど。
「なるほど、あっ話が逸れてしまいましたね。もう一つの因子を取り込む方法は、高位の生物からの信頼を得て、体の一部を体内に取り込む事です」
「体の一部を取り込む?」
「はい、高位の生物に限るのですが、絆を深め、信頼を得て、その高位の生物に認められると、絆と信頼の証として体の一部を渡してくれる事があります。それを体内に取り込む事で、その生物の因子を受け継ぐ事ができます」
「高位の生物に限るということは、そこまで因子を取り込んで受け継いだ生物は多くないという事か、高位の生物と言うほどだから数はそんなに多くないんだろ?」
生物とは言わずに、わざわざ高位の生物と言っているのだから希少なんだろうと俺は勝手に思っていた。
そして、神様は、少し悲しい表情を浮かべながら口を開いた。
「⋯⋯いえ、確かに多いという訳ではありませんが少ないという訳でもありません、例えば、町に千人住んでいるとしたら、三百五十人ぐらいは因子を持っています」
俺は、神様の答えに何か違和感を覚えた。
そして、俺は何に違和感を抱いたのか最初は分からなかったが、因子の取り込む条件を思い出して、違和感の正体に気がつく。
「多くないか?」
そう、因子を持っている数が多過ぎるのだ。只でさえ因子が遺伝する確率が三十パーセント程しかないのに、その数はおかしい。
確かに数字だけ見れば町の人数の約三十パーセントが持っている計算になるが、それはあくまで町の百パーセントが因子を持っていないと成り立たない計算だ。
受け継がれる確率が三十パーセント程でその数は更にあり得ないのだ。
ならもう一つの方法が俺の思っていた程、希少ではないのか?
「なら高位の生物の数が俺の思っているより多くて、その高位の生物と絆を深めて信頼を得たものも沢山いるという事か?」
「いいえ、それも違います。確かに高位の生物から絆と信頼を得て因子を受け継いだものもいます。でも、高位の生物はそもそも数が少ない上に、滅多に他の生物と関わらないので、その高位の生物から他の生物が因子を受け継ぐ事自体、稀なのです」
俺はその話を聞いて余計に内容がわからなくなった。
「じゃあ、何でそんなにも因子を持ってる奴が多いんだ?」
素直な疑問を神様にぶつけてみる。
「そ、それは」
そう、口を開いた神様の表情は酷く落ち込んだものだった。
異世界の主人公の名前が決まったーー
次の投稿はなるべく早く投稿したいと思います。
あっ、ちなみに異世界の主人公の名前が出てくるのは、もう数話先かもしれないです笑