対の世界の真実
時間が圧倒的に足りない泣
『意味が、結果が同じ世界』
何故俺はそう思ったのか、それは『同じであり同じで無い部分』クラーロが言ったこの言葉に違和感を感じたからだ。
対の世界、それは神が表と裏の法則に基づき作った二つの世界。
表と裏の法則、それは神さえ変えられない絶対の法則の一つ。
科学、それは俺の元いた世界に存在しこの世界には存在しない文化。
魔法、それはこの世界に存在し俺の元いた世界には存在しない文化。
同じであり同じで無い世界、それは対の世界を表現した矛盾する言葉。
クラーロはこう説明してくれた。
だが、この世界の常識について説明してくれていた今、この世界の『同じであり同じで無い部分』と言ったのだ。
俺はその言葉で今まで気付いていなかった対の世界の事について気が付いたのだ。
⋯⋯いや、間違った考え方をしていたのだと気付いたのだ。
「何故、その事に気付いたか聞いてもいいか?」
クラーロがにやけた顔を元に戻し真面目に聞いてきた。
「⋯⋯それは、俺が、二つの世界を知っているからだ」
「⋯⋯どういう事だ?」
「そうだな、もっと分かりやすく言うと、俺が、元の世界の事を知っている上でクラーロの対の世界の⋯⋯この世界の説明を聞いたからだ」
「⋯⋯なるほど、転生者であるから気付いたと」
クラーロは納得した。
「俺が元いた世界からこの世界に来た転生者じゃ無かったらこんな事は考えなかっただろう」
「元いた世界を知るからこそ気が付いた⋯⋯か」
「そうだ、この世界と俺の元いた世界その違いを知っているから気付いたんだ」
「だが、私は同じであり同じで無いとしか言っていなかった。何故、この事に気付いた」
「それはクラーロがその言葉を何度も使っていたからだ」
「それが、どうしたんだ?」
「何度も同じ事を言っていたのに、さっきクラーロは世界ではなく、世界の部分と言った」
「⋯⋯確かに言ったな」
「それで分かったんだ」
「同じであり同じで無い世界、本当は、同じである部分と同じで無い部分が存在する世界の事を言うのではないか?」
クラーロは少し驚いた表情を見せ「⋯⋯あぁ、その通りだ」と答えた。
「やはりな、だから気付いたんだ。対の世界は意味が、結果が同じ世界だと」
「⋯⋯ふっ、恐れ入った。まさか対の世界の本当の真実に気付かれるとは思わなかった」
「気付いたのは偶然だがな」
俺は苦笑した。
「気付いた事、その事実が凄いと言っている」
「確かに俺はこの世界の事に⋯⋯というか対の世界の事に気付いた。でもこの事は別に知る必要のない事、何だろ?」
「⋯⋯」
クラーロは目を見開いて固まった。
「⋯⋯どうして、その事にまで気が付いた。いや、この後説明するつもりだったが」
「簡単な事だよ、恐らくこの事に気付くのは転生者である俺だけだ。神や神の使いを除いてだが、この世界の住人も俺の元いた世界の住人も知る事が出来ない真実だ。
なら別にこの真実は知る必要のない事だと理解するのは難しくない」
「⋯⋯お前、頭が良いとは思っていたが頭の回転も速いんじゃないか?」
「そうか? 自分ではよく分からないがな」
この時、ルーナは気付いていなかった。
神が与えた能力がソフィアブック以外にも存在する事を。
だが、ルーナがそれに気付くのは二年後の事である。
人生で今が一番充実してます。
趣味があるっていいよね。