プロローグ
この小説に目を止めてくれてありがとう。
私の名前は海道 航。事情があって偽名を使うことを許して欲しい。
この本を開くことのできた君に私が体験した話を知ってほしいと思い、こうして筆を執った。
先に言っておくがこれから話す物語は全て本当にあったことである。
信じるかどうかは君次第。
確かにこれから話す物語には君の生活とは縁のない言葉が多く出てくると思う。
例えば『魔法』『エルフ』『精霊』.... 信じられないかもしれない。
でも、ばかばかしいと本を閉じる前に今までの人生を思い返してみてほしい。
夢で見たことが現実に起きたり、誰もいないはずの場所で気配を感じたり、そういった非科学的な経験をしたことはないだろうか。
もしもそれらが気のせいでなかったとしたら、君は何を思うのだろうか。
君には未来予知の能力があるのかもしれない。はたまた姿を消した精霊が君の目の前にいたのかもしれない。
君がどんなに否定しようと、特別であると私は確信している。
何故ならば、君はこうしてこの本を開くことが出来ているのだから。
これは今この本を読んでいるあなたと同じであった私が、平和な日々を夢見る物語。
私と同じ道を辿るかもしれないあなたへの警告だ。
警告といっても焦る必要はないので安心して欲しい。
コーヒーでも飲みながら気楽に読んで貰ってもかまわない。
ただ一つ約束して欲しい。
これから話すことは他の誰にも口外しないこと。
家族、友人、恋人。誰にも話してはいけない。
どこに魔族が耳を澄ましているか分からないからね。
さて....そろそろ話を進めようか。
時間は沢山あるので、物語の始まりから話そうと思う。
あれは、小学5年生の夏休み前日のことだった。