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五話 『それはミートですか?』


「……?」



 空が高い。

 青々とした、どこまでもどこまでも広がる大いなる群青。

 辺りには人っ子一人いる気配はなく、豊かで柔らかな自然だけがここにはあり、時間が緩やかに過ぎていく世界。


 見たこともない虫がフワフワと飛び、空では鳥らしきものがアクロバティック旋回を――。



「……………?」



 と、ぼんやりと空を見上げていたところで、ハッとシガラミトウジは覚醒した。

 アクロバティック旋回する鳥がどこにも見当たらない。

そう思ったと同時、自分がどんな状態だったのか、それらすべてを一瞬で思い出し、セットで猛烈な吐き気を覚える。


 ドラゴンに噛み潰された。そのあと死体で遊ばれたような気がする。



「いやいや、でも生きてるよな……俺、助かった……のか?」



 頭痛。

 トウジは簡単に思い出すことが出来る。ドラゴンにより受けた鬼のような惨い仕打ちを。

 あれほどリアルな感覚が夢や幻覚とはさすがに思いづらかった。

 なので辺りを念入りに見渡して、事態が現実であることを一つ一つ確認していくこととする。


「まずここは……相変わらず花畑と遠くに森があるな。俺が最初に目覚めた場所で間違いない……」


 異世界。多分文句なしの異世界なのだ。

 そうでないならあの竜の説明がつかない。

 あの体からほとばしるような威圧感は、どこからどう見てもホンモノのそれだ。


「……で、はい。この時点で俺が襲われたことは確定ですよっと」


 視線を下に移す。

 花と草。土には濃すぎる鮮血が飛び散ってしみ込んでいて、なかなかスプラッタな印象を受けてしまう絵面になっていた。

 ぱっと見、その惨状に現代美術っぽい芸術的で刹那的な印象すら受ける。


 花って水の代わりに血で育ったりするんだろうか……、となにやらサイコパスな事を考えつつ、トウジは視線を自分自身に向けてみることにした。


 痛みがほとんどない。

 そこに違和感を先程から感じまくりなので、すなわち怪我の具合の確認だ。

 本来なら一番に確認するべき箇所だろうが、なんだか怖かったので後回しにしてしまった。



「あれ…………?」



 おかしい。怪我の状態がよく分からなかった。


 目をこらして、瞳孔を開き切って、黒目を20メートルシャトルランばりに左右に往復させても、よく見えない。

 自分の姿をはっきり認識できない。



「あれ~? っかしいな~……疲れてんのかな、ボクちゃん……」



 目をごしごしと擦る。擦ろうとする。


 ――その動作すら出来ない・・・・という事を悟って、トウジの精神は我慢は限界に達した。




「ッ…………!!」


 必死で鏡の代わりになるものを探す。探す。血眼になって探し続ける。

 その場でグルグルと犬のように周り、体をブルンブルンと震わせて。


 ――そうして一分ほど右往左往して、早くもと言うべきか、ようやくと言うべきか、己の現状を正しく判断するツールをトウジは発見した。



 それは水たまりだ。


「…………」


 恐る恐る、という感じでゆっくりと目を半開きにしつつ、そこに映る自身を正しく認識して。






「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア――!?」



 トウジは声の限り絶叫するしかなかった。

 声が出なくなるまで、枯れそうになるまで力を振り絞って発狂し続ける。

 何故なら、冗談抜きでヤバ過ぎたから。







 そこには人の姿をしていない、ただの肉塊があるだけだった。



 そのまんま、肉、だったのだ。



大体一話3000~5000文字でいこうと思ってるんですが、中々調整がうまく行きませんね。

精進せねば……

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