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撃ち落とされる骸鳩

 ーー使い魔。

 時に主の命を受けて人を攫い、時に主の望むがままに人を襲う。

 魔法使いの生み出した、我欲を体現する魔力の結晶体。

 それが、それだった。


 漆黒の甲冑に、片目だけが赤く煌く黒い兜。

 中身はなく、それ故に関節の可動域が異様に広く、だが芯となる肉体もないためしっかり立つこともできない。

 ゾンビのように倒れそうになるのを直ぐに立て直し、使い魔は黒煙を振り払って地に立った。

 

「……ふしゅうう」


 兜の口元から黒い煙が吐息のように溢れ出す。

 かつてとある世で、一つの魔城を築き上げた魔女の有する使い魔の一角。

 暗黒騎士である。


「なんなんだ、こいつは」


 骸鳩のボスの足元から無数の剣が生えて、その切っ先を現れた黒い騎士に向ける。

 と、暗黒騎士の甲冑の腹部がパクリと横一線に裂けて、


「これは私の使い魔」


 口のように言葉を紡ぐ。

 その声は先ほど聞いた女と同じもの。

 

「貴方達、骸鳩の戦力を測る為に遣わせたわ」


 ガシャリと暗黒騎士は鉄の擦れる音を鳴らしながら一歩、前に踏み出した。

 その手には身の丈ほどある大剣が握られている。


「あなた達にどれだけの力があるか見せてもらう」


 それだけ言い終えるとすっと暗黒騎士の腹部に現れた口は閉じた。


(さあ、やりなさい、私の暗黒騎士よ)


 主の命令を受けた暗黒騎士は、まるで咆哮を上げるかのように全身に力を込める。


(出来るだけ殺さずに制圧せよ)


 そうして暗黒騎士は動き出した。

 それと同時に骸鳩のボスは異能『砦の剣山』によって生み出した足もとの剣を一斉に射出する。

 だが、


「ふぅううううう」


 暗黒騎士の大剣の一撫でで、全ての剣は弾き落とされた。


(なっ)


 骸鳩のボスは愕然とした。

 長い人生を生きてきたが、自分の異能をこうも容易く捌いたものは今までいなかった。

 ありえない。

 が、直ぐに思考を切り替え、


「我らが骸鳩よ。我らが飛翔する翼に牙を立てる敵対者の侵入を確認した、最上階まで集合し、討て」


 この高層ビルにいる骸鳩の構成員へと命令を伝播する。

 これも狂った女博士、ノアの作った法具『音波拡散』の効果だ。

 それによって部下に命令を送る。と、ゾロゾロ黒子のような格好の者たちが広間に現れた。

 これもノアの作ったあの水晶の転移能力なのだろう。


「ボス、大丈夫ですか!」


「なんだこの化物は」


 骸鳩の構成員は暗黒騎士を前に身構える。が、獰猛な獣の如く一直線に駆け抜ける暗黒騎士の大剣の一振りに、現れた者たちは為す術もなく意識を次々に刈り取られていく


「な、ぐおあ」「ぐふ、が」「ごほ」


 呼び寄せた同朋はあまりにも呆気なく倒されていく。

 勿論、抵抗はしていた。

 有する異能を使い、暗黒騎士に攻撃を向けていた。

 それでもなおほぼ無抵抗と変わらないかのように倒れていく。

 

(なんなんだこいつは)


 生み出した剣を放ち、暗黒騎士を攻撃する。が、自身の最大の攻撃の連続でも全く掠りもしない。

 それどころかあの暗殺騎士は、倒れる骸鳩の構成員に剣が当たらないように剣を弾いていた。

 それが屈辱だった。


(っ、舐めるな!!)


 足元に生えた剣の一振りを無造作に掴み、悔しそうに奥歯を噛み締める骸鳩の長は、


「この俺を、舐めんじゃねえ!!」


 砦の剣山を飛び出して、一気に駆け抜け、暗黒騎士へと立ち向かう。が、


(侮っているわけではないわ。むしろ過大に評価していたかもしれないわ。まさかこの程度の組織だったとは、残念ね)


 一閃。骸鳩のボスは吹き飛ばされて、後方の壁に身を打ちつけて、倒れた。


(色々と制圧の為に準備をしていたのだけれど、そのほとんどが無駄になってしまったわ)


 暗黒騎士はあくまでも様子見の為の犠牲駒だった。

 これだけで制圧できるなどとそこまで楽観的なことは考えてはいなかった。だけど、結果はこうだ。

 

(まあいいわ。私の策に必要なものを容易く手に入れることができる、そう思えばいいでしょう)


 次々と骸鳩を狩っていく暗黒騎士。だが、次の瞬間


「!!」


 暗黒騎士の右の腕が吹き飛んだ。


(……なに)


 舞う腕を眺めて、自身の腕を切り落としたものが何かを見た。

 

(ハサミ?)


 いつの間にか浮いていた巨大なハサミが、暗黒騎士の腕を切り落としたものの正体だった。








 骸鳩の本拠地のビルの冷たい地下の研究室。

 その中で浮遊する電光掲示板に映る最上階の映像を見ているノアは、目を煌かせながらキーボードを高速で打っていた。


「すばらしぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃいぃいいいいいいいい!!! なんなのあれ!!! いいいいいいいいいいいい、ノアちゃんとってもあれがいいと思う。欲しい!! 欲しい!!!!!! そして欲しいものはゲットする」


 狂ったように叫び、


「んふふふふ、さあさあさあさあ、おいでませ、さびしいピエロちゃん♪ ピエロは恋して、恋して、裏切られて、愛殺す♪ってね」


 唄い、


「ぐふふふふふふふ、さあノアちゃんの全てを受け入れてねえ、真っ黒な狩人さん」


 笑い、


「次から次へといっぱいね」


 震える。

 その眼前の電光掲示板ではハサミに腕を切断された後、直ぐにハサミを壊す暗黒騎士の光景が映っていた。が、次から次に生み出されるノアの法具に翻弄されて、暗黒騎士は防戦一方だ。


「んふ、光線交戦抗戦好戦こうせえってね。はいぽちっと」


 電光掲示板の映像の中に一筋の光線が走り、暗黒騎士の左腕を焼き、攻撃手段ともいえる大剣を吹き飛ばした。


「はい、あと二本。邪魔なあんよもとっちゃいましょうね」


 そう言う。と、そこへ


「ふーん、成程。あなたが法具の開発者というわけね」


 幼い女の子の声が降った。



 

  


 




 


 


 



 

 

 

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