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1294字の短編

今日も今日とて虐待を受ける少年が居る。

少年の名はヤスオ。6歳。

今日も母親の提示する体罰を受け入れベランダに放り出される。


少年が住んでいるのはマンションの3階の角部屋である。

通りからは見上げても少年の姿は見えない位置であり少年に気が付く者はいない。。

だが、そもそも少年は助け自体を求めない。


なぜなら長い時間の暴力に耐える事で免疫が出来てしまっているのである。

耐えるのが当たり前だと認識していて仕事だと思っているのである。

そして何より仕事をした分だけの見返りが得られるからこそ耐えられるのである。


昔は何度か保護団体が家に押しかけてきたこともあった。

だが仕事を奪われることに恐怖する少年は断固として虐待の事実は認めない。


そういう経緯もあって親も虐待に対する世間の目に敏感になるのであるが、

その虐待行為も、ますます巧妙化するのであった。


殴るときは風呂場でシャワーを流しながら、その音を掻き消すのである。

もはや隣人でさえも虐待の事実には気が付くことはない。

壁越しに耳を当て澄ます等でもしない限り虐待は世間にはバレナイのである。


そうして今日も少年は、いつもの様にベランダで時間を潰す仕事をしているのである。







今日は寒いな・・・

でも、もうちょっと我慢すれば、ご飯を食べさせてもらえる。

ママの笑顔も、ちょっとだけ見れるかもしれない・・・



少年は、いつもの様にベランダで我慢をしていたら、

ベランダの端っこにゲームが落ちているのを発見した。


少年に疑問が生まれる、

だが、子供であるから深くは考えることはない。

そのゲームは少年が欲しかったゲームであった。

夢中になって少年はゲームで遊ぶ。


「このゲーム面白い?」


どこからとも無く声が聞こえる。


少年が、声の方向を見ると大きな顔を見つける。


その顔は隣の住人のベランダから、にょきにょき生えている。

そのニョキニョキと生えた顔は言う。


「それ僕のゲームなんだけど面白い?」


少年は一瞬、驚くも、ゲームをくれた人だと直ぐに理解し感謝の意を示す。


「部屋に戻る時は、そのゲームを返してね。」

「明日、また、貸してあげるよ・・・

「でも、その代わり、このことは親には絶対言っちゃ駄目だよ。またゲームが親に見つかってもいけない。

「約束を守らないとゲームを貸してあげないからね。


その顔は、少年と約束を交わした後に消えていく。




翌日。。

少年はゲームをやりたくて幼稚園から帰るなりベランダへ直行する。

ベランダから顔が生えてくるのを期待して待つこと1分・・

顔がニョキと現れてゲームを貸してくれる。

そして顔は新たにイヤホンなるもを貸してくれる。


「このイヤホンなら周りにゲームの音が聞こえることはないよ。

「押入れの中でゲームをすると、ママにバレナイよ。


そう言って顔は、少年にアドバイスをして消えていく。



そうしてゲームを返す貸すのやり取りが、毎日のように続くのであった。

ゲームは常に新しい物へと変わり、少年の好奇心を満たし続けた。


少年が小学校に入学してしばらく時間が経った頃。

ベランダに現れる顔は、新しいことを提案する。


「こっちの部屋に遊びに来るかい?


少年は躊躇もせず、お隣さん家に、おじゃまするのであった・・・






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