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下巻  6465文字



胃がキリキリする


毎日同じことばかり考える日々


気付いたら胃に穴が開いていた。

また祖母が危篤状態になり、葬式が重なり、

努力を中断しなくてはいけなくなった。


中断していると、これまでの徒労を思い出してしまい、

悔しくて、情けなくて、カッコ悪くて



胃の穴は広がり


救急車で運ばれた。




勝手に死んでゆく人は

死にぞこないで


頑張ってる人が

命を削る



親戚の関係者は涙ながらに訴えた。


「なぜ見舞いに来てくれない? 祖母はアレだけあなたを可愛がったのに」


なぜ僕の苦労が判らないのか?

なぜ僕の同情を引いて罪悪感をワザワザ植えつけるのか?


もしかして親戚は

僕を殺すつもりなのか?


勝手に死んでいく人

勝手に悪人に仕立て上げる人

全てが憎い


僕の苦しみ

痛み

誰も理解しない。


みんな

自分の事だけを

考えている


でも、違う

僕は家族の為に

家族を幸福に導く為に

頑張ってきた。


しかし

胃に穴が開くほど

頑張れたその本質は



家族を____



___からだ



だから勘違いだ。


誰も悪くない。


僕の努力が足らないだけ


今日頑張れば


明日報われるかもしれない。


諦めたらそこで終わる


諦めたら、本当に徒労になってしまう。


まだやれる


僕は負けない


胃の痛みは回復してきた。


だから大丈夫。


よし、頑張るぞ!


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーー

ーーーーー


4月27日

PCの時刻を見るとの9:00

いつもなら、父は、仕事に出かける時間である。


僕は、いつも父に怯えていた。

いつ、「仕事をしろ」と言われるかが、

不安で溜まらない。

何一つ成果があがらないことを実感させられる凶器の言葉、「仕事しろ」


全ての努力が無駄で終わってしまった真実を認めるのが怖い。


健康を失っただけの事実と向き合う空しさ


スネばかりかじる自分が情けなくて父に合わす顔が無かった

僕は、今日も布団のなかで、寝たふりをしていた。




突然心臓が高鳴った。

父親が、何か話しかけている


僕は、恐る恐る、布団にしがみついた。


その後何が起こったのか理解するのに、しばらく時間を要した。

突然のことで、頭が整理できなかった。

僕は、「捨てて来い!」と言われたゴミ袋を眺めていた。


次第に僕の中のゴミが、見えるようになってきた。


ただ、僕は、一番、否定されたくない相手に否定された。。。

ただ、僕は、一番、認めて欲しい相手に、認められなかった。

ただ、僕は、一番、嫌われたくない相手に嫌われてしまった。

ただ、僕は、一番、必要としていた相手が、僕を必要としていなかた。

ただ、僕は、一番、

ただ、僕は、一番、

ただ、僕は、一番


僕はもう、自分が消滅していくのを止められない・・・


「畜生畜生畜生。。。」」



僕は、何をしているのか、、、

部屋がグチャグチャになっている。

僕は何をしているのか。。

手がちまみれになっている。。

僕は何をしているのか。。。

母を泣かしている、、、



気がつくと、涙が垂らした母が、倒れていた。


僕はもうだめだ・・・。


――――自分が消滅する。。


僕は台所へかけていき

出刃包丁を取り出し、刃を強く握った。。

ごめんなさい。ごめんなさい。

僕は、この言葉を心の中で連呼した。


あなたにとって、一番大事な私が、あなたに手を上げてしまったこと

あなたにとって、一番大事な私を私自ら殺してしまうことを許して下さい・

あなたにとって、一番大事な私が親不孝であること

あなたにとって、一番大事なわたしが、不出来なことを




僕は、包丁を大きく振りかぶって、勢い良く力をこめた。

けれど、父が止めにはいり、もみ合いになった。

僕は、ゆずれない、

僕は、自分がいらない。

こんな惨めな自分は消えた方がいい。

消えなければいけない。


だから、負けられない。。。


そうして、もみ合ううちに、力が抜けて軽くなった。。。

僕の前には、包丁の刺し傷から出血している父の姿があった。。

父は、動かない、起きない。。起きてこない・・・


僕にとって、あなたは、何だったのでしょうか?

僕にとっえ、あなたは___


起きてこない父を母が見てしまう。。。

僕が殺したことが、母にわかってしまう。。。


あなたにとって、息子が、旦那を殺すことは、どう思いますか?

あなたにとって、息子が、旦那を殺したらどうなりますか?

あなたにとって、息子が、旦那を殺した後、生きていけますか?

あなたにとって、息子が、旦那を殺した後、死にたくないですか?


嫌だ嫌だ。

僕は心中でさびながらも

腕がとまらない自分をみていた。

母の身体を裂く刃。。

目をそむけても、目に飛び込んでる、顔

僕は一体なんなんだ?

何をしているんだ?

母さんが大好きだった。

大好きなのに。。。

嫌なのに腕は止まらない。


痛いという声が聞こえる気がする。

気がするだけで、何も聞こえない。

聞こえるのは僕の声だけ、痛いのは僕の手。・・・

もうすぐだから、もう直ぐだから。。。

楽になるから・・・




外は雨が降っていた。

僕と違って皆傘をさしている


まるで何事も無かったのように、歩いてる。

平和なやつらに、地獄を見せ付けるチャンスであると思った。


僕は、僕の人生をこの一撃で、償う。

僕は、声にならない声に全ての感情を乗せて、突き刺した。











清一はベットの上にいた。

清一は、パソコンの時計を見た。

カレンダーの日付は、4月27日、朝9時少し前


今日も清一は、布団の中で、父が会社に行くのを

待っていた。


清一の部屋に父親がいる

ドア越しに、父は喋った。

「清一起きてるか?」


清一は、返事をせず、寝たふりをしている。


父は、部屋を見渡していた。

部屋の入口は、ゴミ袋でふさがれていて、空気が閉じ込められていて

紙やら、テッシュが散乱して汗臭い異臭を放っている。


清一は、起きることなく布団に中





「ええ加減せよ」


「毎日毎日、ぐーたらして、、、

 このままで良いと思ってんか?

 いいかげんに仕事せい!」




「怖がって社会にでられん自分を情けないとを思わんのか?


「自分が変わろうとは思わんのか?


 お前と同世代の人らは、皆、社会に出てはたらいとるで、


 お前は、おちこぼれか?

 仕事せんノンやったら、家を出ていってもらうぞ。」



父は、言い終わり部屋の戸を閉め、会社に行く支度をしていた。


その間、清一は、思いつめた様子で、部屋を徘徊していた。


徘徊していたと思うと、突然、喉をかきむしり、何かを吐き出そうとすかのような、

仕草をして、


「あああああああああああ嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼あああああ嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼ああああああああああああああああああああああああああああ嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼ああああああああああああああああああああああああ嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼ああああああああああああああああああああああああ嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼ああ












奇声を上げた。



清一は椅子を投げつけて窓ガラスを割った



清一は、鬼の形相で、部屋を破壊する


ゴミ箱をけとばし、パソコンを殴る。。


窓ガラスが割れた音で、両親が駆け寄ってきた。


両親は、清一をみるなり、放心状態で動けない


清一の暴走はとまらず。。

物を壊していった。


清一の顔は相変わらず鬼の形相で納まる気配はなく、、


破壊された物の残骸で手を傷つけ、、血の色で手は染まり、




母は、泣きながら止めに入った。

「お願いやめて!」


その声に清一は反応せず、


母は、なおも止めようと、勝太を後ろから、抱きめようとしたが、


清一は、大きく身体をうねらせ、、


母は、清一の身体から振りほどかれて、近くにあった、タンスの角に頭をぶつけて

意識をうしなった。。








父は、妻を抱き起こし、必死で、呼びかけていた。


程なく、その事実に気づいた清一は、

暴走がとまった。


勝太は、静かになり、落ちつきを取り戻したかにみえた。

が、今度は、白目になり、喉を押さえ、まるで気道をふさがれたかのような、

鈍い獣のような声を発していた。

十秒程で、その奇妙な現象続いた。清一の目から涙がこぼれるのと同時に

終わりを告げた

清一は、台所に走り、。

出刃包丁を取り出し、すぐさま大きく振り上げた。


「うわああああああああああああああああ」


清一は、

振り上げていた包丁を、めいいいっぱい振り下ろした。


その時、父が、清一の自殺を止めにはいった。。

清一の懐に、一気に入り込み、


包丁を持った腕をわしづかみにして、力いっぱい

壁に叩きつけた。


ゴツン! ゴツン!



「辞めるんだ! 清一!」

父の大きな声が、家全体に響きわたる。


「ああああああああああああああああああああ嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼ああ


父の声に反応するように、

声にならない奇声を発する清一。


取っ組み合いになり

テーブルの上に用意された朝食は散乱した。

散乱した食材を踏みつけながら、、、

二人は力一杯、争った。


ブスリ!



取っ組みあいの末、

父の腹部に包丁が刺った



出血があふれでる。



その場に倒れこんだ父


清一は、父に呼びかける。


倒れたまま、起きてこない。


散乱した食事の上に血が流れるのを清一は、見つめていた






その場に一時の静寂が流れた。


冷蔵庫稼動音しか聞こえない。

その冷蔵庫の稼動音も止まったとき


清一は、自身の部屋のタンスにそばに行った。。


母親の前まで行き足を止めた。。、


「ごめんごめんごめん。」




清一は母に最後の

会話をしていた。


話が終わると、清一は母に向けて、大きく包丁を振り上げた。


清一の顔は、悲しげで、苦痛にゆがんでいた。





「せいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいちいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい


父は、残った全ての力を引き出し、声をあらげだ。


清一は、父の命が、まだあることを知った。

清一は

包丁の持ち方を逆手に変えて。幸せそうな、顔つきで、

力いっぱい自身のヘソへ、めがけて振り下ろした。


「グア」清一の顔を歪み、大量の血を吐き出した

父が駆け寄った時には、足の踏み場も無いほどに血が一面を覆っていた。





__________

_______

___

_





救急者のサイレンの音がマンション響く


3人を乗せた、救急者は、ほどなくてして、病院へととうちゃくした。


医者は、


母は軽傷父は、しばらく入院すれば回復することを告げた。















清一は、面会謝絶で、私達は医者の診断を待っていた。



待っている間。

父は、事件をずっと思い返していた。

兆発が事件の引き金になってしまった。

清一の考えを知る手間を省いて、先走った行動が全ての元凶だった。


父は悔やんでいた。悔やむしかできなかった。



________________

_________

_____




六時間前、病院。


「先生どうなんですか?

 あの子容態は?」

 



医者は、深刻な顔で説明をはじめた。


「腹部の刺し傷は問題ははありません。

 一ヶ月もあれば回復するでしょう


 問題は、こちらです。

 このレントゲンを見てください。

 

 詳しい検査を待ってみないと判断は難しいのですが、


 状態は、F5 末期の胃ガンです。

 がんの進行かなり進んでいて、全身に転移していると言っていいでしょう。。。


 治療法方は、まず、胃の全摘出になるでしょうが、

 抗がん剤や、薬剤療法で、ガンの進行のスピードを遅らせる以外に方法は

ありません。

 

 早くで、3ヶ月、長くて1年が余命ということです、


 告知ですがどうなさますか?

 息子さんは、成人ですから、、医者のわたしから、告知するという選択肢もありますが。」





_______________

____

__




私は、妻に頼まれ、あの子の部屋へ、服を取りに行った。


部屋に入り、私は驚いた。。


床に散乱していたゴミは、株や仕事の研究資料だった。


私がゴミ扱いした、そのゴミ袋の中も、あの子がこれまで7年


かけて、積み上げてきた、徒労の跡が垣間見える。


わたしは、あいつの苦しみを気づいてやれなかった。


いや、気がつこうと努力もしなかった。


ただ、甘やかされて育ち、自立心もなく、日々、楽をしていると思っていた。


いつか人様に迷惑をかけるだろうと、そして、一人寂しい将来が待っているだろうと


勝手に決めつけていた。


あいつが、影で、苦しんでいるいことにも、気がつかずに。。。


将来が不安なはずなのに、何ひとつ愚痴ることなく。。


あいつは努力をしていた。


私は、くやしい。もっと早く、このことに気づいていれば・・。。

あいつを追い詰めた原因は、私にある・・・











______________

___________

_____

__

親子3人、仲むつまじい姿がそこにはあった。

父は、すれ違った日々を取り戻すように、

自分の全てを語り。

清一は、幸せそうに、会話をする。

母の冗談を織り交ぜながら。。



「正直、病気で死ぬって言われてもあまりショックではなかったなあ。」

「ほら、もともと死のうとしてたし」

告知した後の清一は、ケロとしていた。。

告知を聞く前から、すでに、気づいていたかのようである。

親がどれほど、気をつかい、告知を切り出すのに苦労しているのも

全部、清一に、先読みされていた様だ。



「余命は近いの?」



「株とかマネーゲームって、普通の人生じゃありえ得ない速度で期待と絶望繰り返すんだ、5年くらいやってただけなのに、

50年は、長い時間を生きたような気がしてたんだ、。

 病気になってあたりまえかも。。」


清一は、はつらつと、話しているようで、

自分の苦労話を自慢するような話し方をしている、


「けれど株に手を出さない方がいいね。

 僕のように負けず嫌いな性分だと、同じ目にあうかもしれないからね。

 父さんも、母さんも、やっちゃ駄目だよ?」。


清一は、他にも、今まで、話すことは、なかった、学校のできごとも

私達に話してくれた。

そうすることが、清一にとって

死の運命を受け入れる準備だったのかもしれない。


5ヶ月を過ぎ、清一の元気も気力も無くなってきた。

痛みに耐える日々が酷くなっているようだ。

苦痛に歪む清一の顔を見るのは、とても耐えられなかった。

痛み止めの効き目も、小さくなっている


私達は、この試練を乗り越えられる自信はなかった。

日に日に衰弱しているあの子をみるのは、拷問でしかない。

苦しくて逃げたい気持ちだった。


そんなある日、

満月の夜



清一は、屋上に出たがった。

9月で、外は、それほど寒くなかったとはいえ体調を考えると

少し迷ったが、私達は清一を車椅子乗せ

屋上までつれていった。




夜空には、満月が力強く輝いていた。

3人はしばし、、眺めていた。まるで、月から力を貰っているように・・・

乗り越えるための力を・・・

しかし、やがて雲ガかがげり、満月がみえなくなった。


満月の光は遮断されたお陰で、星が、幾千も輝いていた。




「やべー!!感動した・・・


私達は、きょとんとした。


「すごいよ。1度は暗闇で空は絶望になったのに、

 良ーーーく見ると、星は一杯だ。まるで、絶望なんて、。最初から存在しなかったみたいだ。


清一は、そう言って目を輝かせて空を見つめていた。。


私達は、精一のその目の輝きに時間を忘れてしまっていた。



「高いところを見上げると首が、だるくなるよね」





私達が空を見ていない事に対しての不満を清一は感じ取っている。


少し汚い地べただったが気にせず寝転ぶことにした。


私達はあの子に、せがまれるように空を見る。


3人は、空と一体になっているような気分になった。




その時、流れ星が流れた・・・


「そういえば、流れ星って「大気圏に突入した隕石が、燃え尽きるんだよね。」



「でも、燃え尽きても、それは、確かにに存在していて

 何かを地球に運んだんだよね。」


「僕も、あれと同じで、死んだとしても、消えてしまうわけじゃないんだよね。

 かならず、僕のカケラが残っていて、自然の一部になるんだな。

 ある意味すごいな、この広い世界と、ひとつになるわけだから。。」


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