酒場の飲んだくれ
「ん、なんだおっさん、何か用か?」
「おっさんとは言ってくれるな、ガキんちょ。お前冒険者に会いたいんだってな、なら今お前の目の前にいるのは何だ?」
「昼から酒飲んでる可哀想なおっさん。」
「ぐはぁ、違ーよ..いや、違くないか。とにかく俺が言ってるのはそういうことじゃなくてだな。分からないか坊主。」
「だから、何だよ。」
「チッ、分からないならしょうがない、俺こそは銀級冒険者のグリムだぜ。」
「おい、「落ちぶれた」を忘れてるぞグリム。」
「マスターは黙っとけ。」
「あんた、冒険者なのか、しかも銀級の。」
ランスは改めて男を見る。
男は薄汚れたローブをはおっているが、中に着ているのは動きに支障がでない程度のライトアーマーだった。
しかし、男の姿には冒険者を表す冒険章や肝心の得物などが見当たらず、いまいち信憑性がない。
「あんた、本当に冒険者なのか?武器も何も持って無さそうだし。」
「あんたじゃねぇ、グリムだ。はぁ、しょうがない、特別だぞ。」
そういってグリムは懐から 短刀を取り出した。
柄は黒色で、刀身は白の一般的な短刀だ。
しかし、刃の先が少し黒ずんでおり、この短刀が使い込まれた武器だと教えてくれる。その上、刃こぼれなど一切していないのだから、ランスはこれが冒険者の武器だと納得すると同時にグリムに謝った。
「すまないグリム。疑って悪かった。」
「.。分かればいいんだよ。で、坊主名前はなんて言うんだ?」
「俺の名前はランス。今日から冒険者に成るんだぜ。」
「今日から.か。眩しいな。」
「で、何で冒険者に会いたかったんだ?」
「それはだな...