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第四騎士団

ファイはまだ仕事の途中とのことで私は彼の後をついていくことになった。


ついていっていいのか?という疑問もあったが傍にいないと守れないと言われてしまえば頷くと同時にこの世界ってよっぽど危険がいっぱいあるのかと思った。

まあ、そもそも異世界にきて頼れる人間が初対面のファイしかいない段階で私の選べる手段は極端に狭い。ていうか、ファイのいう事を聞く、ファイから離れて彷徨う、くらいしかない。

聖女って称号は美少女ちゃんの手に渡ってしまったので私は普通の、しかも異世界の常識も知らないわけわからん女、なのである。

ていうかそもそも『聖女』が彼女ならどうして私まで送られてきちゃったのか意味が分からない。


「不安?やっぱり俺のことは信用できない?」

「え?そんなことはないよ」


考え事をしているのが不安になっていると思われたのか、心配された。

だが、彼の言う通りで不安がないわけじゃない。むしろ見知らぬ地で一人放り出されて不安でない方がどうかしている。

でも、困ったような、悲しそうな彼の姿を見ると不安になってても仕方がないかな、と思うのだ。

当然のことだが人の悲しそうな顔を見るのは、嫌だ。

それに、私が否定したことによってファイが嬉しそうに笑ってくれるのならばそちらの方がいいと思う。だって嘆いても不安でいても、戻る方法はない。

流されている気はしてる。でも異世界に飛ばされた段階でもうどうにでもなーれ状態になってしまうことくらい許してほしい。しかもどう考えても私は間違いで落ちてきたっぽいし。


だって美少女ちゃんめちゃくちゃ歓迎されてたし、元々二人聖女としてこの世界に飛ばすつもりならもう一人である私を探すはずだ。でも、彼らは探さなかった。ということは、私は間違いとか手違いで飛ばされてきてしまったのだ。呼び出す人間以外を巻き込むなよ!と叫びたいがやっちゃったもんは仕方がないし、そもそもファイの言う通り元の世界に帰れないのならそんなこと叫んだって帰してもらえるわけもない。


「こちらの手違いでした、すみません。でも帰れないから。頑張れ」


って言われるだけだ。なら、少なくとも必要としてくれるし養うとまで言ってくれたファイについていくのは当たり前だろう。

元の世界なら知らない人についていかないけど異世界だしね。この世界の何一つわからないんだから頼れる人間に頼らないとにっちにもさっちにもいかなくなる。へたするとのたれ死ぬ。それは嫌だ。


「ここが俺の職場」


と、またも考え事をしているうちに彼の職場に到着したようだ。

今まであったような扉と全く同じに見えるが、彼曰く違うとのこと。


「ここ、花が彫られてるだろう。これが第四騎士団の詰め所って意味」


言われてみれば扉には小さな花が彫られていた。が、元々花のことなど全然わからない私なのでそれが異世界のものか自分の世界にもあるものなのかわからなかった

でもとりあえずその花の形さえ覚えていれば最悪迷子になっても彼に会えるだろうと覚えておくことにした。


「大丈夫、行こう」


ファイの優しい手のひらに導かれるように扉の先へと足を進める。

扉を開いてはたしてそこにあった光景は、



たくさんの男たちが腕相撲したりのんびりとお茶を飲んでいたりバカ笑いしあっていたりというなんとも普通な光景だった。



騎士という言葉がなんとなく高貴なイメージやイケメン勢揃い!という想像をかきたてるのでそんな考えが頭の中にが浮かんでいたのだけど普通に10代くらいの青年もいれば40代くらいのおじさんもいた。

もちろん想像の中にあった優雅に紅茶をすする薔薇を背負ったイケメンはいなかった。あれ?これは騎士じゃなくて王子様か?


が、


「うわっ?!ファイ団長が女連れ!?」

「おいおい、しかも手までつないでやがるぞ!」

「赤飯だ!赤飯の準備をしろ!!」

「いやいや、実は団長に惚れ込んだ令嬢で手を繋がないと自害してやるって言ったのかもしれないぜ」

「それはない。だって前にそういわれた団長がその令嬢の両手足を縛って担いできたことあったし」

「じゃあやっぱり赤飯だな!」

「おめでとう団長!お披露目パーティはいつだ?」

「バカそんなもんより先に結婚式だろうが!」

「気が早いぞバカ共。まずは子供の名前からだ。男女五人ずつでいいか?」


と、余程ファイが女連れでいることが珍しいのだろう。

部屋にいるガタイのいい男たちが慌てだした。しかも頓珍漢な方向に。

最初が「女連れ!?」って驚いているのに最後には子供の名前を考え出すとか頭の中どうなってんの?!動揺しすぎでしょ!


「嫁だ。俺より上の存在だと思っていろ」

「?!」


って思ってたらとんでもないことを言い出したよこの人?!

しかし突然の爆弾発言に対して周りの反応は


「赤飯は遅かった!ウエディングケーキ作れウエディングケーキ!!」

「いや既に嫁ならウエディングケーキは遅いだろ!」

「えっ、じゃあ俺ら団長よ結婚式に呼ばれなかったって事…?」

「ケーキ食べたいし騎士団で結婚式やればいいんじゃない?」

「それだ!」


となるだけだった。嫁発言にはツッコミないの!?


「甘ったるいものは嫌いだ」

「よーし野郎共!ウエディングケーキはビターチョコレートにしろー!」


いや、そうじゃないでしょ!!


主と言ったら聖女と関連付けられてしまってややこしくなり、結果彼女に迷惑がかかるかもしない

ならば身内として紹介しよう

気軽に言い寄られないようにしよう

嫁なら安全だ


みたいなファイの思考回路です。

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