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ほとんどただの説明会

「エルフィ?大丈夫?」

「どうしたの?叫び声が聞こえたけど...」

(やべ...どうしよう...てか、ここって異世界ってことでいいのか?)


鶲は戸惑っていた。

何故なら中身が入れ替わったと説明した後にどうやって対応しようと普通の道を歩むことが出来ないと察したからだ。


ならいっその事、記憶喪失という事にして振舞ったほうが楽なのではないか。と


「あ、あの...大変失礼なのですが...どちら様でしょうか。あと...私は何なのですか?」


鶲がトイレのドアを開けると3人のエルフの少女が愕然とした顔でこちらを見る。

3人のうちの気の強そうな1人が声荒らげて鶲に問う。


「あ、あんた!まさか本当に記憶が!?」

「えっと...はい。自分が何者なのかもわかりませんし...名前も...今覚えているのは多少の言語の意味、日常品の使い方ぐらい...です...」

「まじかぁ〜、なぁ、これマジやばくね。」

「流石にやばいって。下手に刺激したらどうなるかわかんねぇし、エルフィの親御さんにでも...」


そこまで言ったところで3人が顔を見合わせ、暗い表情をつくる。


「あ、あの。どうかしましたか?」

「あ、いや...えーっと。実はエルフィの親御さんってちょっと...」

「ちょっと苦手でして...」

「「私も...」」


「じゃあ、家の場所を教えて頂いたら自分で行きます。こんな事になって申し訳ないです。」

「え、まじ?いや...てかあんた、変わりすぎっしょ...」

「え?」

「いや...」


最後の方は鶲には聞こえなかったようである。




「ここがあんたの家だよ。」

「えっ...」


(こんな家...知らない...)


ちなみに家の場所は前の世界で自分の家があった場所だった。更に周辺の家があった場所も現エルフィ家の土地になってしまっている。


「じゃ、あとは頑張って。私らはここで」

「あ、はい。ありがとうございました。」

「いいって事よ。またな!」


3人が去っていき、鶲は意を決して家のインターホンを押す。


ピンポーン

「はい、どちら様でしょうか。」

「あ、あのエルフィ...です。」

「はい?エルフィなら...我が家の名字ですが?」

「え...あ!えっと...ちょ、ちょっと待ってください!」

「うん?その声はリリィか。鍵は空いてる筈だが...」


ガチャリ、と音を立てて家の扉が開く。中から出てきたのは若い男性。耳が長いのでエルフ...たぶん父親であろう、と鶲は思った。


「どうしたんだ?そんなところで固まって。」

「あ、えっと...実は...」

「?」

「記憶が無くなってしまいまして...」

「は...?」

「今までの記憶が無いんです...なのでとりあえず、えっと...」

(どうしよう...あの人たちの名前聞くの忘れてた...)

「3人の同級生と思われる方達に家まで案内してもらって...それで...」

「ちょ、ちょっと待つんだリリィ!ほんとに記憶が無くなったのか!?」


男性が鶲...改めリリィに掴みかかる。父親と思われるその男はリリィが記憶を失ったと聞いて取り乱す。だがその表情の中には...


(どこか喜んでる...?)


「記憶喪失か...とりあえず家に入りなさい。落ち着いて話をしよう。」

「あ、えっと...おじゃまします...」

「ここはお前の家だ。」

「あ、そうでした...」





「記憶喪失って、どのくらいまで記憶が残っているんだ?浅い症状ならすぐ治るだろうが...」

「えっと、言語に関することと日常品の使い方ぐらい...ですかね...」

「思ってる以上に深刻だな...名前も覚えてないのか?」

「はい...」

「まず、お前の名前はリリィ。リリィ・エルフィだ。」

「リリィ...エルフィ...」

「それでだな...一応エルフ族の次期族長の筈だった...」


(一応?)


リリィは気になったが、口に出してはいけない気がしたので、スルーした。


「こうなると、事がどう運ぶかわからん。あぁ、そうだ、俺の名前はロイズ、お前の父親で...お前の母親は現エルフ族長だ。」


(結構やばいやつじゃんこれ...)


「それで...だな。いや、何でもない。今する話ではないな、あとは学校とかのことだが......」


その後は常識や、この世界の状況等がリリィに詳しく説明された。

この世界には普通の人間以外に、エルフ、ドワーフといった亜人が存在している。

数100年前に日本で集落が見つかり、保護され、少しずつ溶け込む形で繁栄してきたらしい。

なかでもエルフは寿命が長く、平均的に頭が良いので、現代社会の発展に尽くされているのだとか。

だが、話の中でリリィが最も驚いたのは、魔法が存在していることだった。

科学が大きく進歩した世界で魔法が使えるのは大した事ではないというのが、色んな物語ではあるが、そうでもない。とリリィは考えた。

万が一に備えて、この世界で生活することを決心したリリィは魔法を覚えようと決心する。


あと、学校は前の世界と同じ場所で通学は普通に徒歩。

学年は高2。その当たりはだいたい元の世界と同じらしい。


自分の部屋と言われた場所に行き、扉を開けリリィは絶句した。


(なんだこのベッド...それになんで風呂とトイレがあるんだ...ここはホテルか!)


エルフ族長の家なら当然か、とリリィは諦めることにした。

明日学校でどうしようかと思ったが、親が連絡して、事情を説明してくれるらしく、変な事にはならないだろう。とリリィは思っていた。

そう、思って()()。過去形である。

そんな事は知らずその日のリリィは必要最低限の事をして眠りについた。




翌日

学校につき、職員室へ行く。記憶喪失の件で先生と話しておくためだ。


コンコン

「失礼します。」


担任の教師と思われる人物がわからず、入った後にそのことに気づいたリリィは焦った。


「あら、エルフィさん。おはようございます、それで記憶喪失というのは...」

「あ、えっと。おはようございます。記憶喪失の件は...本当です。」


ざわざわ...

と他の教師が騒ぎ始める。


「そう、なら改めて自己紹介させてもらうわ。あなたの担任のサリーよ。あなたと同じエルフ族。」

「あ、えーっと...リリィです、宜しくお願いします。」


リリィがお辞儀をする。焦ってお辞儀をしたので、適当になってしまったが、美少女がやるとどんな動作も可愛くなってしまう。

教師の男性陣は胸を打ち抜かれたかのように苦しんでいた。

それを見た他の女教師は......何も言わないでおこう。


「貴方のことは知っているわ。それじゃ、そろそろHRの時間だし、行きましょうか。」

「はい!」





教室ではまだみんな席についておらず、話をしている。リリィが記憶喪失というのは伝わっていないようだが、リリィの話は話題にでていた。


「なぁ、エルフィさん。昨日も学校休んだよな。」

「あぁ、何かあったんじゃないか?」

「てか、4組の奴が悪党3人組とエルフィさんが一緒にいるの見たって...」

「まじか、またかよ。流石にやべぇんじゃねぇの?あの人、次期族長だろ?」

「らしいけどね。であの人妹いるんじゃなかったっけ?」

「そうなの?知らねぇわ。てか、お前はなんでそんな事知ってんだよ。」

「秘密」

「なんだそりゃ...」


ガラガラ


扉が開き、サリーとリリィが教室に入る。


キーンコーンカーンコーン

HRの鐘が鳴り、みんなが席に着くが遅れて入ってきたリリィをみて、クラスがにわかに騒ぎ始める。


「はい、みんな静かにして頂戴。HRを始める前に突然ですが、先日リリィさんが記憶喪失になってしまいました。記憶が戻るかどうかはわからないらしく、右も左もわからない状況らしいです。みんなでサポートしてあげてください。では、エルフィさん。」

「はい、リリィ・エルフィです。記憶喪失になってしまって、皆さんの顔も覚えていません。ですが、これから頑張っていきますので宜しくお願いします。」


ざわざわが一層ひどくなる


「じゃあ、リリィさんは桶田くんの隣ね。」

「えっと...」

「はいはーい!俺、桶田!よろしく!」


桶田と言われたその少年は普通の人間だ。ちなみに先のやりとりの話をしていた男子である。


「あ、えっと。宜しくお願いします。」


またもその仕草に打ち抜かれる男子達と女子達のやり取りが繰り広げられる。

リリィはある意味では兵器である。

ちなみにだが、席の位置は1番後ろの窓側。主人公ポジションだ!


「それじゃ、HR始めるわよ。」

「起立。例。」



HRの後、授業が始まるまでの5分間。その5分間にエルフィはクラスメイトに囲まれていた。


「なぁなぁ!エルフィちゃん!記憶がなくなったってまじ!?いろいろ教えるから学校終わったら一緒にどっか買い物にでも...」

「あ、えー...と」

「てめぇ、桶田!抜けがけは許さんぞ!」

「なんだよ!俺は善意で言ってるだけだ!他意は無い!」

「嘘付け!」

「ほんとだ!」

「あんな奴らほっといてさぁ、俺と一緒に映画でも見に行こうぜ!奢るからさ!」

「こらぁぁああ!あんた達!リリィちゃん困ってるでしょうが!すぐ授業始まるんだから準備しなさい!」

「「「イエッサー!」」」


なかなか纏まりのある3人組である。


「あ、あの、ありがとうございます。どうしたらいいかわかんなくて...」

「いいの、いいの。私は池田(いけだ) 日向(ひなた)。このクラスの委員長をやってるから、困ったことがあったら私に聞いて。」

「わかりました。宜しくお願いします。」

「うんうん。ほら、あんた達もさっさと席につきなさい。」


委員著に沈められたほかの学生達はみんな席に戻っていく。

その光景を見たリリィは頼りになる委員長だと感心したが、一部の女子生徒達は知っている。

その委員長が恋愛対象として見ているのが"女性"であること。そしてなかでも"エルフ"は彼女の中では最もお気に入りだという事を...

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