くじ引きに1等が入ってないという決まりは無い。
早めに書くとか言っときながら新作に手をつけてこの始末。
すいません、ほんとすいません。
「あ、あれ可愛いですね。」
「んー?」
「どれどれ?」
りんご飴をぺろぺろと舐めながら歩いていくリリィと日向達。
尚、男性陣はりんご飴を舐めるリリィの様子を直視出来なかった模様だ。
「あの、くじ引きの景品です。」
「あー、あれね。」
「でもあーいうのって決まって当たりが入ってない物じゃない?」
「そうなんですかね?」
「いや、そんな事ないぞ。去年も一昨年も俺は2等を当ててる。」
女性陣の会話に急に桶田が参戦する。
「え、本当に?1等は?」
「1等はねえけど...」
「なーんだ。」
「せっかくだし、みんなでやってみませんか?」
「でも、あれ高いよ?」
「じゃあ、私が出しますよ。なんか、お父さんから凄く渡されて...」
そういいながらリリィがバックから取り出したのは封筒。
かなりの厚みがあり、1000円札で入っていたとして7.8万円分はあるだろう。
「ま、まってリリィちゃん。さすがにそれは男として駄目だ。自分で払うよ。な?」
「お、おう。」
「あ、当たり前だ!」
「そうですか...?」
「えっと...私達も自分で払うわ。バイトで結構お金はあるの。」
「日向さんは?」
「私も大丈夫よ。とりあえず並びましょうか。」
「はいっ!」
(あぁ、可愛い。)×7
表情がコロコロと変わり、度々笑顔になるリリィをみて他のメンバーも癒されるのだった。
暫くして、リリィ達の順番が回ってくる。
「はい、残念。次のお客さん、1回500円だ...よ...」
リリィをみて一瞬固まる出店のおじさん。
しかし、7人の冷たい視線ですぐさま再起動する。
「さ、さぁ誰が挑戦するんだい?」
どうやら何も無かったことにするらしい。
「全員で!」×8
全員一斉に500円を差し出す。
それを見て一瞬驚くものの、また再起動してくじを取り出して、机の上に置く。
「さぁ、1人1回ずつどうぞ。」
「じゃあ、みんな引いてからいっせーので開けよう。」
「いいですね。それじゃ、私から行きます。」
リリィが先陣を切ってくじを引く。
くじは三角に折られており、開くと中に番号が書いてある仕様らしい。
「それじゃ行くよ?せーの...」
「残念...4等...」×6
「わっ!1等です!」
「また2等かよっ!?」
どうやらリリィは1等を当て、桶田がまたもや2等を当てたようだ。
「お、大当たりだ!おめでとうエルフの嬢ちゃん。1等はこの中のゲーム機から選んでな。」
「えっ...」(リリィ)
「2等のボウズはこの中からな。」
「えっ...」(桶田)
リリィが欲しかった物は2等にあったぬいぐるみ。
桶田が欲しかった物は1等にあったゲーム機。
...リリィと桶田の欲しい物は完全に逆である。
「「...」」
「あの、交換しませんか?」
「マジでっ!?ありがとうリリィちゃん!」
「えぇっ!?桶田ばっかりずるいぜ!」
「うるせっ!この2等のくじは俺が引いたんだよ!」
「ぐ、だったらもう1回!」
「はいよ、あんたら元気いいな。」
「こいっ!......ぐぁ!また4等!」
吉春が4等を2連発しているのを横目に、2等の景品のぬいぐるみを受け取るリリィと1等のゲーム機を受け取る桶田。
その顔はどちらも至福と言った感じだ。
(...あれ?そういえばいつから僕はぬいぐるみが好きになったんだっけ?)
一瞬疑問が頭の中に浮かぶが、すぐにその考えは消えた。
「ありがとうリリィちゃん!まじで!」
「こちらこそ。可愛いぬいぐるみです、ふふふ。」
「だぁ!!またはずれだぁぁ...」
さり気なく後ろで吉春が3連敗しているが、嬉しそうな2人には届かない。
残りの5人は完全に蚊帳の外だ。
「と、とりあえず移動しましょ。なんか物凄く視線を集めてるわ。」
無論、視線を集めているのは幸せオーラ前回のリリィである。ただし+αで桶田がいるが。
そんな幸せ全開の2人...正確には桶田の元に一人の男性がやってくる。
「おい真治、いつまで経ってもこないじゃねえか...って、それP〇4じゃねえか!?くじ引きで当てたのか!?」
「んー?...はっ!なんか凄く幸せな気分に包まれてた!あれ、翔太兄?」
ちなみに真治というのは桶田の名前だ。
「おう。それで、それはどうしたんだ?」
「くじ引きで俺が2等当てて、こっちのリリィちゃんが1等当てて、お互いに欲しいものが逆だったから交換した。」
「ん...?」
未だに幸せな状態から帰ってきていないリリィをみて翔太と呼ばれた男性が固まる。
「リリィちゃん、そろそろ帰ってきて。石像が大量生産されちゃうよ。」
「ほぇ?日向さん?」
「ぐぅっ!?」
ぽわ〜とした笑顔を向けられて日向が悶絶する。
が、なんとか耐える。
「さ、さぁ移動しましょう。...私のSAN値が削れる前に。」
「あ、委員長ってそういうネタ知ってるんだ...」
さり気なく虎太郎が突っ込むが、それに反応する余裕が日向にはない。
「あ、あそこに美味しそうな焼きそばが...」
元に戻ったリリィが、焼きそばの屋台を見つけて離れていきそうになるが、翔太を引っ張っている桶田を除く全員がリリィの前に立ちふさがる。
「とりあえず何処かに座りましょう?それに、リリィちゃん。っていつの間にかりんご飴無くなってるけど!?」
「あ、はい。さっき食べ終わったのでそこのゴミ箱に捨ててきました。」
「いつの間に!?」
そんな会話をしていると、今度は翔太が再起動する。
「あれ?目の前に天使が現れたと思ったら、真治に引き摺られてる?」
「おー、翔太兄。目、覚めた?早速で悪いんだけど、みんなの案内頼む。」
「お、おー?OK、把握した。なぜお前がこんな美少女軍団と一緒にいるのかは後で問いただすとして...皆、俺はこいつの従兄弟の桶田 翔太だ。
ちなみに、俺の焼く焼きそばはめっちゃ上手いぞ。それだけは期待してくれていい。
んで、こいつに今日は場所取りを頼まれてな。出店の近くの場所を既に確保してんだわ。まぁ付いてきてくれや。」
「ちょっと怪しい人だけど信頼してくれていいよ。」
「そうね、少なくとも桶田よりは信用できるわ。」
「俺も桶田なんだが...」
「あら、失礼しました。真治君よりは、ですね。」
「...俺ってそんなに信用ない?」
そんな事を話しながら歩いていく一同。
そして目的地に到着する。
「ここが俺のやってる出店だ。」
そこには今は焼きそばを焼いている人がいないにも関わらず長蛇の列を作る出店があった。