第4話
悪役令嬢……こんな酷な立場に立たされるなんて。しかも事典の活躍で記憶を取り戻せなければ確実に死亡じゃない!
私は運が悪いのか、それとも良いのか、あるいは両方か。
かたずけが終わったシーンとした部屋で私は机に向かっていた。もちろん魔法を極めるためだ。
役立ちそうな呪文は片っ端から記憶する。毒消し呪文から麻痺なおし呪文まで。
しかし、私はこう思った。攻略対象キャラをこてんぱんのぼこぼこのげしげしにすると私捕まるよね。どう考えても………。
国を相手取って戦うのはカッコいいけど危険過ぎやしないか。軍隊を差し向けられたら……それを返り討ちにしたらおたずねものにだってなるだろうし、家族、一族の身だって危ない。
私だけならともかく両親やら親戚やらが迷惑するぐらいなら良い。最悪処刑されるだろうし、あるいは人質にされるかもしれない。拷問だってあるだろう。
思索しただけで頭が痛くなる。頭痛なんて久しぶりですよ。まったく。
私はそんな考えを一時退け、読書に励む。これで生死が決定するのだ。必死になって当然である。
私は部屋を透明呪文で姿を消しひそひそと例の土地に向かう。そして辺りに誰もいないのを確認して巨大破壊呪文を唱える。標的は高い山。緑の青々とした山だ。
森林浴でもしたくなる感じだ。私は「ごめんね」と呟いた後、力ある言葉を放った。
「ストログマス!」
私のつき出した両手の平に力強い何かが集まってくる。そしてそれは解き放たれた。凄い爆音共に木々が吹き飛び地面は消え去り、呪文の威力により山が一つ消失した。
私は申し訳なさを気にしつつこの呪文を連発できるようになればたいていの奴はやっつけられると自信を深めた。
まあ、その後、音を聞きつけた兵士やらメイドやらパパまでが駆けつけた。私は透明呪文の効き目で誰にも気づかれず自室に戻った。
やっぱり私って天才! とても高度な呪文も理解し使役できた。
後は……そうだ。もう少し大人になったら家を出れば良い。つまり、冒険者だ。そうすれば逝去はなし。
幸せのハッピーエンドが待っているはず。むふふ。
そうと決まれば魔法を頑張りつつ、筋トレとかマラソンとか始めて体を鍛えないと。
なんとか早死にを回避してやるわ!