第1話
私はとある貴族の令嬢モリシス。頼めば何でも欲しいものが手に入る裕福な家柄。
家なんかちょとしたお城。尖塔なんかもあっちゃったりする。そこから眺める景色がなんとも綺麗。ある意味景勝地。
でもわがまま放題で育った私は性格が破綻しているとか従者たちに陰口を叩かれている。その場面をめざとく見抜いた私はその腹立たしい若いメイドたちをパパに頼んでクビにしてやった。
その時の私の爽快とした気分たらないわ。廊下の毛足の長い赤い高級絨毯の上をスキップしたぐらい。ムカつくやからには制裁をね。こらしめなきゃ!
しかし、私にだって長所はある。有るったら有るの! あなたも制裁を受けたいの? 私ったら誰と話しているんだろう? どうかしているわ。
私はその自慢する魔法の技を五十メートル走出来そうな部屋で机に向かっていた。魔法事典をめくりながら熟読。頭に詰め込む。スラスラ入ってくるので苦痛ではない。
うん、私って聡明。そのうえ努力家だから成功するわ。私を陰で性悪つり目とか言うやつら、見てなさいよ。
十歳にして数十の魔法を行使出来る。自分で言うのもなんだけど天才だわね。うふふ。
このまま、大人になったらこの知識と技術で大物になって見せるんだから!
私は夢中で読書していた。その結果、三つの呪文を記憶した。
後は実践だ。ということで従者の女性と護衛の男性とでありえないぐらい広々とした庭に出た。スポーツ大会が開けそうなぐらい。
早速、ところどころに立った木をターゲットに呪文を放つ。木々は私に何をされるのか察したかのように風に枝や葉がサワサワ揺れている。
私は力ある言葉を呟いた。右手の手のひらは一本の木に向けられている。護衛たちは慌てて私から離れる。小走りだ。
「くらいなさい! メテロス!」
私の手からまばゆい光が生まれ雷の筋がいくつも木に直撃し炎上、ギシギシ倒れる。
私が「おほほ!」と哄笑する傍で鎮火活動が行われていた。従者も大変ね。