母親の心配?
ーマーサ視点ー
ハ~、心配だわ。
以前からノーマンが息子と狩りに行きたいと私に相談していた。
私はそれには、反対だった!
ノーマンは自覚が無いかもしれないが、あの人はとにかく問題を起こす人だった。
いや、本人が求めずとも騒動や厄介ごとが彼を離さないのだ。
冒険者時代の時は本当に酷かった!
最初はごく簡単な依頼がいつの間にか大きな問題になり、とても私達が解決できる物ではなくなっていた。
しかし、そんな問題もノーマンは最後には解決してしまう。
周りを散々、引っ掻き廻して。
そんなこんなで冒険者を引退して伯爵様の騎士になり、
今は村の領主。
領主になって落ち着いたところそんな問題ごとも鳴りを潜めていた。
息子が産まれるまでは!
息子が3才の時の事故?事件?
あれを皮切りにまたもノーマンの能力が発揮しはじめたのだ!
あれはもうあの人特有の能力としか言いようがない。
今回もきっと何かしら問題を起こすにちがいない!
息子が同行すると言った時もっと反対するんだった。
私も付いて行こうかと言った時、あの人は男同士たまには良いだろうと同行を許さなかった。
あの時の勝ち誇った顔が忌々しい。
ハ~、今日何度めかのため息。
あの人はともかく、息子が心配だ。
あの子は年の割りは落ち着いている。
あの子が取り乱したり慌てているところを見たことがない。
あの子は大丈夫、大丈夫。
祈るように自分に言い聞かせる。
もうすぐ日が落ちる。
あの人は日が落ちる前に帰って来ると約束した。
だが、まだ帰ってこない?
やはり何かあったのだ!
いや、単に寄り道しているだけかもしれない?
そういえば出かける前、息子はひどく興奮していたように見えた。
いつもはすました顔をしているのにやっぱりまだ子どもなんだと安心もした。
もしかしたらあの子が何かグズっているのかもしれない?
そうかもしれない?
でもあの子がそんな事をするだろうか?
いや、きっとノーマンだ!
あの人があの子に変に父親ぶろうとして時間がかかっているのだ。
そうだ、そうに違いない!
帰って来たらやんわりとお説教してやろう。
うん、そうしよう!
家の玄関口で行ったり来たりしながらそんなことを考えていた。
「あっ、お馬さん」
使用人の上の子、リリが私に二人が帰って来たことを教えてくれた。
駆け出してなぜ遅くなったのかと問いただすのを我慢する。
ノーマンが先に降りて次いで息子が降り。
ん、息子の手には何故か子犬が?
しかも、息子は全身ずぶ濡れ?
とたんに私の顔は笑顔に眉間にシワがよる。
我慢、我慢よ。私。
ノーマンがすまなさそうにイタズラが見つかった子どものように、私に恐る恐る近寄って来る。
さあ~、弁解が有るのならどうぞ!
私は腕を前に組み仁王立ちしてノーマンの前に立つ。
ノーマンがことの次第を説明する。
それを私はただ、黙って聞いている。
話している内容は理解していた。
大狼が現れたところ迄は。
その後の話は聞いていない?
なぜなら、ノーマンが大の字で伸びていたからだ。
私の拳を受けて。