剣王バルデス
意識を集中する。
相手は殺す気でやって来る。
なら、私も相手を殺すつもりで、いや殺す覚悟で相手をしないと失礼だろう。
まさか、自分が殺される等と考えていないはずはないよな。
そのニヤついた顔を変えてやる!
剣王バルデスは革鎧とすね当てと籠手、得物は大剣。
俗に言う両手持ち『ツバァイハンドソード』
その得物を片手で持ちポンポンと音がするように肩に当てていた。
対する私は同じく革鎧の胸当てにすね当てと籠手、片手剣のブロードソードと革の盾バックラーを装備。
事前に胸当ての中に以前仕込んだことのある魔術による鉄板モドキを仕込んでいる。
「…………注意事項は以上」
審議役がいつもの話をしていよいよ始まる。
辺りがシーンと静まり返りその時を。
「それでは、始め!」
その言葉と同時に大歓声が木霊する。
私は試合が開始されると同時に相手に突っ込んだ。
普段の私なら絶対に取らない戦法。
待ち構えて相手をいなし、カウンターを食らわせる。
最小限の労力で勝つ。
それが私の我が家の戦い方だ。
ひい祖父さんから続くこの戦法で我が家は戦い抜いた。
だが、私はあえてその戦法を捨てる!
先手必勝、私は剣王の戦い方を伝聞でしか知らない。
悠長に構えていると致命の一撃を食らうかもしれない。
竜王剣にはその一撃がある。
避けようようにも避けられない一撃が。
今の私には使えないその攻撃を剣王は使えるだろう。
剣王は、竜王剣が使える。
闘気も当然使えるはずだ。
聞いた限りでは闘気を使った戦い方をしている。
だからも奥義も使えるはずだ。
その攻撃を私は幼い時から食らい続けたのだから。
ノーマンから、リリから。
だから先に動く!
相手に反撃させる暇も与えない。
神道流の速さによる攻撃。
私の速さ重視の攻撃を剣王バルデスは難なくいなす。
「ちっ、軽い剣だな。もっと腰を入れろよ」
ニヤついた顔は変わらず更に偉そうに説教つき。
軽くて当たり前この攻撃は相手を撹乱するのが目的。
本命は、これだ!
上から下から更に横払いを加えて斬撃を与える。
そこから一転して、突きを放つ。
横払いから体を一回転、更に捻りを加えた必殺の突き。
しかし、避けられた。
顔を、額を狙った突きを避けられた。
少し顔を背けただけで避けやがった!?
「あぶねえなぁ。殺す気か?」
何を今更、そっちはその気だろうに。
それが証拠に殺る気を全然隠そうともしていない。
「じゃあ、そろそろ、こっちも行くぜ」
避けられた後一端離れた私に、獰猛な笑みを浮かべたバルデスが言い放つ。
「簡単に死ぬなよ。楽しもうじゃないか」
この戦闘狂が!
バルデスが地を蹴って一瞬で間合いを無にする。
闘気による身体強化は爆発的な瞬発力を生み出す。
相変わらずふざけた性能だよ。
全身闘気持ちは。
一般人なら面食らう攻撃だが、私は違う。
こちとら子供の頃から闘気持ちと戦ってんだ。
そんな攻撃慣れてんだよ。
いきなり目の前に相手が現れたら誰だって慌てる。
慣れていても驚くが最初から想定していれば対応はできる!
目の前で大上段の構えからの振り下ろし。
「これをかわすか。いいねぇ、久々の相手だ」
バカかこいつ?
見え見えのテレフォン攻撃なんて避けれて当たり前だっつうの。
相手の態勢が整う前にこっちからも仕掛ける。
だが、避けない?
まともに切り下ろしが決まる。
「なっ」
避けないどころか素肌むき出しの腕で受け止めた。
本当にふざけた性能だよ。
これだから闘気持ちは!
そんな悪態をつきたいがそうも言ってられない。
再度、距離を保ちバルデスと向き合う。
序盤の探り会いはおしまい。
さぁ、殺し会おうか。
距離を取り互いに睨み会う。
いや、睨んでいるのは私だけでバルデスは笑っている。
「いいねぇ、おい。楽しくなってくるじゃあねぇか」
私の攻撃は効いていない。
やっぱりダメか。
闘気で身体硬化しているのだろう。
ノーマンも使っていたからもしかしてと思ったが案の定だ。
まったく、嫌になるよ。
全身闘気の使い手は素手でも強い。
おまけに獣人は反射速度も速い。
獣人は素で強いのに闘気をまともに使えるなんて反則もいいとこだ。
獣人は魔力の扱いが不得手だから魔術や闘気を使える者が少ない。
バルデスは魔術を使えるのか知らないが、闘気に関しては扱いに慣れているようだ。
さすが剣王というところか。
人間的、獣人的?には尊敬できる人物ではないが。
さて、どうする?
探りを入れてみるか?
それとも一気に勝負を決めるか?
バルデスはまだ余裕を見せてやる。
つまり私を嘗めている。
強者特有の驕りを持っているのなら私に勝機があるはずだ。
「来ないのか。なら、遊んでやるぜ」
またか?
こっちは真剣でも向こうは遊び半分なのだろう。
油断しているうちに勝負を決めよう。
本気を出されたら太刀打ちできないかもしれない。
向こうは腰を落とし溜めを作っている。
あれは一気に突っ込んでくる為の溜めだ。
ならあれを利用しよう。
神道流と竜王剣は似ているがあえて違いを上げれば。
神道流は「柔」 竜王剣は「剛」である。
二つを習った私が感じた違いだ。
思うに神道流は対人を、竜王剣は対魔獣を想定していると感じた。
とかく型を重視する神道流。
かたや威力を重視する竜王剣。
どちらに隙ができやすかは言わずものが。
私はそこに勝機を見いだす!
神道流には有って竜王剣には無いものがある。
歩方だ。
神道流には、溜めがない。
こんな感じでだ!!
予備動作なしで一気に詰め寄る。
「な、に?」
驚きの表情を見せるバルデス。
私はそれを意に介さず突きを放つ。
今度は胴体だ。
頑強さに自信が有れば必ず受ける。
衝突。
バルデスはたいして避けずに肩で受ける。
そのまま剣を横凪ぎに払ってくる。
受けるのは想定済み、剣で払うのも予測できた。
そして神道流にはそこから派生する技がある。
「こいつ」
受けられたことで動きを止めたと思っての横凪ぎだが、難なくいなすことができた。
体制を崩したのはバルデスの方だ。
そこに連続して突きを放つ!
何度も執拗に放つ。
どんなに闘気で体を固めても弱点はある。
ノーマンから教えてもらった。
『いいか? 相手が闘気で防御しても諦めるな』
『無理ですよ。父さん』
『無理じゃない。闘気は万能だが、絶対じゃない』
『ほんとですか?』
『む、父さんが嘘をついてると思うのか』
『だってこの前』『それは忘れなさい』
『いいか、絶対ではない証拠を見せてやる』
『どうするんです?』
『こうするんだ!』
そして、目の前には血だらけになったバルデスがいる。
「てめえ」
バルデスが私を睨んでいる。
その顔にはもう嘲りも慢心もない。
闘気の弱点は持続力がない事。
いや持続力はあるのだ。
ただし硬化させる場所を意識しないと意味がない。
『全身硬化は、体力を消耗する。だからよっぽどのことがないと使わない。そこに弱点がある』
『へ~、そうなんだ』
『ま、私は平気だけどな』
『嘘おっしゃい。膝が笑ってるわよ』
『あっほんとだ』
懐かしい記憶が、私に勇気をくれる。
生きる術を教えてくれる。
自然と笑みがこぼれる。
……ありがとう、父さん。
じゃない!
全然効いてないよ。
たしかに血だらけになってるけど見た目ほど重症じゃない。
て言うか、軽傷も軽傷。
かすり傷だよ!
私の使っている剣は刃が潰している。
相手もそうだが殺傷力を落としてある。
その中で有効なのが、突きだ。
線でなく点で闘気硬化の弱点を付いたけど、そもそもバルデスの皮膚が硬すぎた。
深く刺さらず浅く刺さり、血は吹き出たが致命傷にならず相手を怒らせただけだ。
バルデスが私を睨み付けている。
あのムカつく笑みを消すことができたが、………ただそれだけだ。
だが、周りは違うようだ。
「うおー、あの剣王が、ケガしてやがる!?」
「瞬殺で終わると思ったがやりやがる。ガキのくせに」
「しらーねーのか。あれが『ラッキーダン』よ。いつの間にか相手に勝ってる。幸運な男だ」
外野は良いよな、好き勝手言えて。
しかも『ラッキーダン』て何だよ!
『幸運な男』そんな単純じゃないぞ。
「おめえ、死んだぞ。おい」
ゆっくりと立ち上がり剣を構えるバルデス。
すでに血は止まりなんか湯気が見える。
体も大きくなっているようだ。
ヤバい、完全に怒らせた。
中途半端な攻撃がバルデスを遊びモードから本気モードに変えてしまった。
来る!?
そう感じた時には遅かった。
目の前に大上段に剣を振り上げたバルデスがいた。
さっきの試すような感じじゃない。
威圧感が、ハンパない。
その威圧に押されるように反応が遅れる。
刹那、剣が振り下ろされる。
剣による圧力、剣圧というべきか。
今まで感じた事のないものが私に降り注がれる。
私は剣で受けるとか、盾を使うのも忘れ、横飛びっでかわしていた。
前周り受け身の要領で体制を立て直した後に、さっきまで私がいた場所を見るとその場所を中心に円を描いて陥没していた。
一番深いのは私がいた場所。
そこから徐々に拡がっていった感じだ。
なんて威力だ!
あらためて闘気持ちのデタラメな強さを見せつけられる。
リリも同じ事が出来たよな。
『行くよー、お兄ちゃん』
『来い』
『ふん!』
『どあ、あぶな』
『えへへ、すごいでしょう』
『あぶないよリリ』
『そうだぞリリ。もっと勢いよく、躊躇わず、プギャー』
『なんて危険なこと教えてるの!』
今思い出しても殺されるかと思った。
いや、今は殺す気で放たれていた。
避けれたのは運が良かった。
もし、あの攻撃をされたら避けることも受けきることも出来ないだろう。
普通なら。
「こいつを避けるのか。なら、こいつでどうだ」
バルデスの腕から肩にかけて筋肉が盛り上がったように見える。
まさか、あれが来るのか?
「避けれたご褒美だ。食らいな」
私とバルデスの距離は五メートルと離れていない。
その距離でバルデスは剣を振り下ろす。
「ふん」
そこから放たれたのは、衝撃波!!
『ソニックウェーブ』か?
この距離、目の前に迫る衝撃波。
扇形に拡がる衝撃波は地面を抉りながら私に迫る。
これを恐れていた。
竜王剣の奥義とも呼べる技だ。
私には絶対使えない技。
避けることとも受けきることも出来ない攻撃。
そして致命の一撃。
圧倒的な破壊力を持った衝撃波が私を包む。
直後に物と物がぶつかる音が大音量にともに辺りを揺さぶる。
大歓声が悲鳴に変わり、土煙で何も見えなくなる。
「………終わりだ」
バルデスは剣を下ろし呟いた。
「まだ、終わってない」
振り絞るような声で私は答えた。
辺りがもうもうと土煙が舞うなか、私は立っていた。
………………無傷で。
━━━━━━━バルデス視点━━━━━━━━
無傷だと?
バカな、手加減無しの本気の一撃だ。
本来ならズタボロの血袋のはずだ。
なのに無傷?
何かしやがったのか?
ノーマンみたいに魔術が使えるみてぇだが、何の動作もしてねぇし詠唱もしてなかったはずだ。
無詠唱ってやつか?
使えるのは変態のウィリスだけだと思ったが。
奴も使えるのは自分だけだと言っていやがった。
あのジジイでさえ詠唱してやがったんだぞ。
あんなガキが使えるはずがねぇ!
それとも技の衝撃音で聞こえなかったか?
奴は盾を前に出し剣を後ろにしている。
さっきのように飛びかかるつもりか?
しゃらくせい。
どんな魔術を使ったのか知れねぇが、二度はねぇぜ。
ひしゃげて終わりだ。
今度も手加減無しだ。
「潰れろ、このガキ」
力任せに剣を振り下ろす。
オレの得意技、今までこれで何でも勝ち取ってきた。
勝利を、金を、名声を、そして、女を。
これからも勝ち取る。
誰にも邪魔はさせねぇ。
口うるせいジジイも、お人好しのノーマンもいない。
オレが、最強だ!
「やめろ!バルデス」
ヴィリスが何か言ってやがるが聞こえねぇな?
あのガキが悪りぃんだぜ。
オレを本気にさせちまったんだからな。
本当なら適当に戦って、半殺し程度に痛め付けて降参させるつもりだったんだ。
まぁ、やり過ぎて死んじまうかもしれなかったかもな?
ああそうなると結局は同じか。
悪りぃな、やっぱおめえは死ぬしかねぇわ。
竜王剣奥義『竜王咆哮牙』
咆哮牙が奴にぶつかり爆音とともに土煙が舞う。
いつも通りだ。
やっぱ、オレは最強だ。
自然と笑みがこぼれる。
「フ、フフ、フハハ、ハッハハハー」
━━━━━━━ヴィリス視点━━━━━━━━
やりすぎだあのバカ犬!
何て技をだすんだ。
あんな物使うなんてあの子を殺す気ですか?
いくら何でも大人げない。
これだから獣人は一度頭に血が上るとみさかいがなくなる。
いや、あの子が想定よりも強かったからなのか?
……でも今のは。
もしかして最初から殺す気だったのでは。
戦う前から少しおかしいと思っていたが手加減せずに殺す気だったのか?
私は少しだけ力を出して彼の力量を計れと言ったのに。
………後でお仕置きが必要ですね。
ノーマンがいない今、奴は調子に乗りすぎた。
躾、いや調教しなくては。
それにしてもバカみたいに笑っていますけど、大丈夫ですか?
さっきも油断して血塗れになったのをわすれていますね。
しょうがないバカ犬ですね。
だからあの人『リュウゴ』さんから筋肉バカ、脳筋だの言われるのです。
だからバルデス。
気づいていますか。
彼は無事ですよ。
土煙が晴れて人影が見えますね。
盾を構えたあの子が。
「なっ、ふざけんな。さっきといい。今といい。何で吹っ飛んでねえ。何で死んでねぇ。おかしいだろうが、おかしいよな?死ねよ。死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ねよ━━━━」
やっぱり、殺す気満々じゃないですか。
それならしょうがないですよね。
調教確定です。
精神が壊れない程度に痛め付けて、ああ、多少は自我も残しておきますか。
獣人は肉体は頑丈ですが、精神は人族よりも劣る場合が有りますからね。
このさじ加減が難しい。
でも、多少壊れても大丈夫でしょう。
何せ脳筋なのですから。
でも、さすが『拳神リュウゴ』の血筋ですね。
ノーマンには劣りますが素質は中々。
しかも、あんな魔術の使い方をするなんて。
楽しみですよ、この先が。
さぁ、見せてください。
あなたの戦い方を………
※※※※※※
くそ、反撃するだけの間を与えてくれない。
バルデスは力任せに剣を振るっている。
ただの力任せなのに剣を振るう度に周りの空気を震わせている感じだ。
かすっただけでも大ケガしそうだ。
いや、大ケガするだろう。
バルデスは闘気使い。
しかも、全身に闘気を纏える。
加えて長身で筋肉質、闘気が使えなくてもあの大剣を食らえば即座に戦闘不能だろう。
当たりどころが悪ければあの世行き間違いない。
更に悪いことに只今絶賛、発狂中だ。
「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね
いい加減食らって、死にやがれ━━ 」
目は真っ赤に染まり毛が逆立って見える程の怒りようだ。
そんな奴の猛攻を私は防いでいる。
剣でいなしている訳でも、盾で受けている訳でもない。
私の切り札の一つ『結界魔術』だ!
結界魔術は、制御が難しい。
例えば、家一件を結界で覆うのは難しくないがこれを小さくしていくととたんに制御が難しくなる。
更に、小さくすればするほど魔力をバカ食いするのだ。
それに立方体で覆うのは簡単だが平面に展開すると制御できない。
平面に展開すると大きくしようが小さくしようが直ぐに霧散してしまう。
ノーマンに教えてもらった時は『物理シールドだ!』とやってはみたもののあえなく失敗。
しかしこの結界魔術はほぼ不可視であるし、ある一定の衝撃を越えなければ壊れない優れもの。
これに盾をカモフラージュに使えれば防御に関しては心配がなくなる。
レティとの稽古でそれとなく使っていたがつい先日、やっと使えるようになったのだ。
それを今、私の前面に展開している。
第三者からは私が盾を使って攻撃をいなしているように見えるはずだ。
ただ、弱点が二つある。
一つはさっきも言ったが魔力をバカ食いすること。
通常の結界魔術よりも恐ろしい速度で魔力を失っていく。
正直、十分も持たない。
だから一瞬、一瞬出したり消したりしている。
これは魔力以上に、精神的にキツい。
そして、もう一つ。
これが今一番心配だ。
やっぱり、さっきも言ったがある一定の衝撃を受けると結界魔術は消えてしまう。
そう耐久値があるのだ!
バルデスの攻撃があの衝撃波よりも上回る攻撃をされたら結界魔術が消えてしまう。
イコール死である!
今の私は、魔力が切れるか、結界が消えるか?
二つに一つである。
正直じり貧だ。
打開策がない! ………ことはないと思う。
大規模魔術を使って闘技場を混乱させて逃げるとか。
バルデスに向かって壁系統の魔術を使って動けなくして逃げるとか。
遮二無二に何も考えずに逃げるとか。
逃げることばかりだな?
だってしょうがないだろう。
半端に攻撃してもたぶん通じない。
と言うか攻撃できないしさせてもらえない。
魔術もどれくらいのが効くのかわからない。
こんなことなら攻撃魔術の性能をもっと詳しく調べれば良かった。
この一年、攻撃よりも防御ばかりを優先したからしょうがないのだけれど。
やっぱやっとけば良かった。
後悔後にたたず。
しょうがない、バルデスの息が上がるのを待つしかない。
でもその前に、魔力が尽きるかも?
どうする?
反則覚悟で攻撃魔術を使うか?
でも、使った瞬間魔力が切れて意識を失うかも。
意識を失わずに朦朧となっても死んでしまう。
どうする、どうする?
ヤバい、ヤバい、ヤバい!
完全に詰んでる。
このままだと死ぬしかない。
まだ死にたくないのに。
でも、このままじゃ。
そんな葛藤は、唐突に切れた。
結界魔術が消失した。
私はバルデスの渾身の一撃をくらい空に浮かんでいた。
攻撃を食らった瞬間、意識を持っていかれることもなく自分が空を飛んでいるのがわかった。
そして地面に体を叩きつける。
受け身も取れない。
体が動かせない。
ヤバい、起きれない。
このまま死ぬのか?
「やっと、当たりやがったか? 手間取らせやがって、今止めを刺してやる」
バルデスが、一歩、また一歩、近づいてくる。
嫌だ、死にたくない!
死にたくない、死にたくない、死にたくない。
体は動くことを拒否しているようだ。
もう、ダメなのか?
これで、終わり、か。
そして、私は意識を失った。
お読みいただきありがとうございます。
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