剣闘士
太陽が、中天になると、闘技場は熱気に包まれる。
今日も満員御礼。
今か今かと、戦士達の入場を待ちわびている。
そこに、審議役が出てくる。
闘技場のボルテージが、最高潮に達する。
待ちに待った、本日のメインイベント。
賭場
仕切り人の声が、賭けの締め切りを告げる。
そして、その時が来た!
円形闘技場に、戦士が出てくる。
一方は、拍手喝采に包まれ、一部ブーイングが聞こえてくる。
もう一方は、憐れみの声と、ため息が聞こえる。
一人は、筋肉隆々の大男、一人はまだあどけなさを感じる少年。
大男は、皮鎧に身を包み得物は大きな鉄槌を持っていた。
少年は、布の服に手には剣を持っている。
少年の剣は、欠けた部分が見られる。
勝負は、始まる前に着いているようだった。
ーーーーーオルタス視点ーーーーーー
さて、今日の俺の相手は、どんな奴だ?
最近は闘士の質が落ちた。
今日の相手は、少しくらい歯応えのある奴だと、良いんだが?
たしか相手は、連勝中の奴らしいが?
軽く捻って殺るぜ♪
だが、楽しませてくれよ?
じゃないと賭けが成立しねぇからな?
しかし、ちいせいな?
なんだ? もしかして? まさか?
子供、ガキだと!
バカな! 聞いてねぇぞ?
俺の相手がガキだと!?
ふざけんな! 俺はこの街一番の剣闘志だぞ?
その相手が、ガキだと!
はぁ~、なんの冗談だ? これは?
「おい! ガキんちょ。おまえはあれか?前座と間違えて来やがったのか? 」
闘技場内は笑いで包まれる。
「おい! 審議役、ガキが間違えて来てやがるぞ!早く俺の相手を連れて来い!」
再び、闘技場に笑い声が響く。
だが、審議役は首を振る。
「はあ~、俺の相手がこのガキだってのかぁ~?」
審議役は、首を縦に振る。
「なんの冗談なんだ? ああぁ!!」
審議役は、何も答えない。
ただ、早く始めろと言わんばかりに手を振り上げる。
手を振り下ろせば、試合が始まる。
いや、死合が始まる。
「ふざけやがって、たしかに昨日、誰でも構わねぇから強い奴と死合を組めって言ったけどよお~? それでガキの相手とは、なんなんだ!まったくよぉ~?」
そして、場内に高らかに闘志の名乗りが挙げられる。
「東、鉄槌のオルタス」
「西、新進気鋭の少年剣士ダン」
おいおい、マジか?
名乗りが、挙げられやがった。
本当にはじまっちまうぞ?
「では、始めろ!」
審議役が、手を振り下ろしやがった?
しょうがねえ~、始まったからには手は抜かねえ。
なんせ、生き死にがかかってんだ。
相手が、誰だろうと倒して生き残る。
そうだ、俺は、俺様は、この一時の為にこの場にいる!
手加減なんか、できねぇ~。
この小僧、ダンって言ったか?運が無かったな?
大方、今まで相手にろくなのが居なかったんだろう~が、今回は俺様が相手だ。
まぁ、死なない程度には、手加減してやるか?
手加減出来るか、分からねえがな?
俺は、得物の鉄槌を持って、構える。
そして、一気に相手との距離を詰める。
俺は、ガタイがでかくて、鈍重に見えるがそうじゃない。
相手の小僧は、俺の胸くらいの高さだ。
痩せてはいないが、太ってもいない。
構えは、まぁ~様に成ってるが、足元が震えてやがる。
ヤバイな、こいつはまともに食らいそうだ?
でも、しょうがねえ~、打ち所が悪くて死んでも恨むなよ?
相手との距離が、あと三歩で到達する。
俺は、鉄槌を振り上げ地面を蹴り挙げたその時、踏み足の地面が、少し窪んでやがった!
「なっ」
気づいたら、前のめりになって、鉄槌を振り下ろしていた。
当然、小僧は余裕で鉄槌をかわす。
俺の鉄槌は地面にめり込み抜けない!
くそ、くそ、くそ!早く抜かねえと !
だが、俺の鉄槌の上に小僧が乗り、俺の首筋に剣を向けていた………。
「それまで! 勝者 ダン !」
場内には、歓声と怒号、そして中傷と笑い声が入り交じっていた。
俺は、恥ずかしかった。
選手の控えの間にて、長椅子に腰掛けて先程の試合を振り返っていた。
あれは死合じゃない、試合だった。
真剣にやったつもりが、相手を嘗めていた。
あの時、俺が躓いた時の小僧の、いや、アイツの顔は、笑っていた。
獲物が罠にかかった! そんな顔をしていた。
試合が終わった後も、アイツは直ぐに下がっていた。
勝ち方がどんなであれ?
喜んだり、嬉しがってもいいはずなのに?
何事も無かったように、そそくさと帰って行きやがった。
まるで、相手にされて無かったようだ?
怒ると言うよりも、呆気にとられた感じだ?
だが、次は無い!
こんど会ったら、この礼は必ずさせてもらう!必ずだ!
俺は、決意も新たに控えの間を後にする。
次の闘いはもう始まっているのだから。
だが、俺が奴に会うのは闘技場ではなく、別の場所だった。
遅くなりました。
少年奴隷編 始まります。
今年もよろしくお願いいたします。(  ̄▽ ̄)




