最強?チート?何ですか、それ?
私は今は5才です。
世の中、甘くはなかった。
転生したからには、最強だぜ、チートだぜ、前世の記憶があれば何だってできるぜ。ハハハハハーー。
ウナ訳ねーじゃん!
私はたんなる非リア充負け組男ですよ。
あとアニオタも少し入ってますけど、それだけじゃ転生世界には対応できません。
はっきり言おう。
幼すぎてナンーモ出来ん。
ちなみにこの世界の言語が全然理解できない。一年間生活しているが簡単な受け答えはできるが、早口でまくし立てられるとまったく理解できない。
決して難しいことではないと思うのだが?
この体は、主に脳だと思うが言葉を覚えてくれない。
さらにこの体は運動が苦手のようだ?
というのも私は普通に歩いているのに、何もないところで転んでしまうのだ。
なぜだ?
どうしてだ?
なんでこうなった?
自分の体をコントロールするのに四苦八苦しているのだ。
最強も、チートもない。
現実はいつも厳しい。
「ハァ」
毎日、ため息と無力感にさいなまれる。
言葉を覚えることが、体を動かすことが、こんなに大変だなんて。
そんな日々でも救いはある。
この世界の両親だ。
父親は爽やかイケメンのナイスガイだ。
いつもニコニコ笑顔を絶やさないリア充男だ。
前世の私なら、死ねばいいのにっと毒づくところだが、この世界では私の保護者だ。
父親は私に優しく接してくれた。
言葉がうまく話せなくても転んでも、優しく抱き抱えてくれる。
前世の父親とは大違いだ。
前世の父親はそれはそれは厳しい人だった。
殴る蹴るは当たり前の毎日で父親は恐怖の対象だった。
後で知るのだがそれは父親の自分に対する期待から厳しく教育したのだと母親は言っていた。
本当にそうなのか?
たんなるストレス解消が目的じゃないのか。
まぁ、前世の父親はもういい。
次は母親だ。
母親はまぁとにかく、美人だ。
おそらく皆が皆母親のことは美人というだろう。
さらに細かいところに気がつく。
気配りの人だ。
良妻賢母とはこういう人を指すのだろう。
前世の母親も優しく明るい人で私は母親大好きだった。
誰だ?マザコンなんて言う奴はマザコンけっこう好きに言え。
私の前世での心残りは母親に別れの言葉を言えなかったことだ。
元気にしているだろうか?
おっと、ちょっとしんみりしてしまった。
まぁとにかく両親は優しくていい人だ。
だからよけいに落ち込むのだが。
私は優しい両親に囲まれて悪戦苦闘しながら新しい生活を送っている。
もうすぐ5才だ。
せめてその頃には普通に歩けるようになろう。
ちっちゃい目標だけど………