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隣町へ?

領主代理になって、はや、2ヶ月が過ぎた。

当初心配していた、麦の種うえも問題なくすんた。

疫病や、兵役で人手が足りなかったが、そこは村人の結束により、無事終える事が出来た。


本当に村人の皆さま、ありがとうございます。

そして、お疲れさまです。


私も、慣れないながらも、お手伝いさせてもらいました。

前世では、稲の田植えや、稲刈り等は経験したことが有るものの、麦はまた、別物でした。

農夫の皆さまには、かえって迷惑をかけたのではと思いましたが、皆さん笑って、楽しそうにしていました。

本当によかったです。


村人が微笑ましかった本当の理由は、リリやナナ等の小さな子供達が、率先して手伝っていたからですが?


普段から、村人の子供は農作業を手伝いますが、進んで手伝い等しませんよ?

子供達も、今が大変な状態だと認識していたのでしょう。

かわいいものです。

本当にチョロいもんです。


子供達には農作業を手伝ったら、お菓子を挙げる約束をしていたのだよ

真剣な表情で必死に手伝う姿はちょっとあれでしたが?

これも領主の努め、ちょっと卑怯かと思ったが子供が必死に頑張れば釣られて大人も必死になる。


作戦は成功。

懐は痛かったが。

この世界のお菓子はとても高価。

おいそれと口には出来ない。

行商人から、砂糖を買い占め、ベスと共にしばし菓子作りに没頭、前世の記憶を頼りにクッキーを作る。


この世界のクッキーは歯触りが悪い。

生地がボロボロのパサパサ、それにあまり甘くない。

そこで、羊や山羊のミルクでバターを作り生地に練り込む。


お菓子作りは前世でも得意だった。

この世界で作ろうとは考えてなかったが?

こんなところで役に立つとは。

それにこの世界にも、羊や山羊がいたのが良かった!

牛は、似たような物がいたが、食用で肉が目的。

ミルクも採れるが、味が薄い。

何かが違うのだろう?


ベスが私のクッキーを味見。

こんなに甘いクッキーは食べた事がない。

と褒めてくれた。

リリとナナも絶賛!

とても喜んでくれた。


マーサにも作ってあげたかったな。


勿論、村の子供達も喜んでくれた。

次いでに、大人達にも振る舞う。

皆に喜んでもらえた。


本当に楽しい一時を過ごせた。


そんなこんなで、農作業も一段落し、後は冬支度に備えるため隣町まで買い出しに。


人数が減ったとはいえ、疫病騒ぎで春先から夏場一杯は、ほとんど何も出来ない状態が続いたため、蓄えが心配。

この冬を越えるための物資が不足していた。


隣町の買い出し。

私は、隣町リンドには数える程しか行ったことがない。

そしてその時は、ノーマンやマーサがいた。

今回は、私一人。


そんなわけないがな。


今回は、私とベスとリリとナナ、それに荷物持ちに村人の数名が、買い出しに出る。

残念ながら、ジルはお留守番。


これは苦渋の決断なのだ!

別に、ジルの事をのけ者している訳ではない!

私じゃなく、リリやナナになついているのが、気にくわないわけじゃない!

本当だよ、本当だから。


本当は、狼の魔獣であるジルを連れて行くのは、騒動が起きるのではと思い。

また、館を留守にして誰もいないのは問題があるし?

ベスを連れて行くのは、私が心配だから付いていくといい。

それだとリリやナナにお留守番させるのは、かわいそうだから一緒に。

必然、番狼でもあるジルはお留守番となったのである。


まぁ、ジルならそこらの魔物相手に負けるはずもなし。

それにジルは、人の言葉が分かるし、簡単な受け答えも出来るので、問題ない。

村人もジルが、言葉や文字書きが出来るのを知っているし、大丈夫でしょう。

緊急時は、伝令役も出来る。

なんと便利な狼か!


まぁ、私達が出かける時には、ジルはシュンとしていたが♪


別にいい気味だと思ってませんよ。

お土産買って帰るから、それで許して貰いましょう。


隣町までは約1日、日が昇って、日暮れには着くほどぐらい、急げば半日程で着く。


馬車でゆっくり隣町まで。

急ぐ必要もないので、リリとナナの相手をしながら、のんびり行く。


リリとナナは、これが村を出るのが初めて!

当初は、キャーきゃー、騒いでいたが、ベスに怒られ小さくなる。

そして、また少しすると、キャーきゃー言い始め、またベスに怒られる。

それをしばらく繰り返し、騒ぎ疲れたのか?

ナナはオネム。………かわいい。

リリは私に質問責め。ちょっと鬱陶しいがかわいいから許す。


途中、休憩がてら昼食を。

街道から少し逸れて、皆で食べる。


ああ、こういうのも良いもんだ。


前は、私も興奮していたからこんな事考えもしなかったが、今は違う。

今は、ちょっとした事が違って感じる。

マーサがいなくなったからだろうか?


マーサの事は、悲しいが。

悲しんでばかり要られない。

私はちゃんと別れを済ませた。

だから、後ろを見るより前を向いて行ける。

別にマーサの事を忘れる訳じゃない。

時折、思い出すだろうが、それでいいと思う。


それでいいと思う。


ちょっとセンチになった。

前はこんなじゃなかったのに?

私がうつ向いていると、ベスが心配して声をかけてくる。


いかん、いかん!


周りに心配させてどうする。

こんなんじゃ、マーサに叱られる!


大丈夫、大丈夫だから、と笑顔で答える。


考えてみれば、まだ、11才の子供が、母親を亡くし、父親は戦地に赴き、更に己は、父親に代わり領主代理をやらさている

普通に考えれば、私は同情されて当たり前なのか?

しかし、この世界では死が珍しいものではない。

村の外に出れば、魔物や魔獣が出てくるし、盗賊、山賊も珍しくない。

村の中でも、安全ではない。

今回のように、病で亡くなることもある。

ちょっとした怪我でも、命に関わることもある。


私のような境遇の人間も少なくないはずだ。


私よりも酷い人は沢山いる。

私はまだまだ、恵まれているのだ。

甘えてはいけない。


私は自分に言い聞かせる。


休憩を終えて、馬車に乗り込む。

ベスはまだ、私が心配なのか?もう少し休むように言うが。

遅くとも、夕暮れ前には町に着きたい。

少しゆっくりし過ぎた気もするので、先を急ぐ。


そんなに心配しなくても、大丈夫ですよ。ベス?


敢えて口には出さず、笑顔で返す。

それで、気づいてくれたのか、ベスはそれ以上何も言わなかった。


「ありがとう」


聞こえるか、聞こえないか、小さな声でお礼を言う。

今度は、ベスが笑顔で返してくれた。


リリとナナはスヤスヤと眠っている。


馬車の車輪の音と、馬の蹄の音、辺りの虫の鳴き声が耳に届く。


そして、夕暮れ前に、隣町リンドに着いた。


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