留守番?
目が覚める。
辺りを見回す。
まだ、寝ぼけているので、頭がまわらない。
ここ、どこだ?
キョロキョロと、周りを見ながら、頭を掻く。
段々と、意識がはっきりとしてくる。
あー、え~と、確か、ノーマンと、抱き締めて?
あれ? 抱き締められて、それで………、
思い出した!
ベッドから、飛び起きる。
うん、ベッド?
あー、ここ、自分の部屋だ。
ようやく事態を把握する。
私は今、自分の部屋にいる。
部屋の隅にには、シルバァが丸くなって寝ている。
そして、私の机に突っ伏して寝ている、ノーマンがいる。
私が意識を無くした後、ノーマンが私を部屋まで送り届けたのだ。
そして、心配して、私の様子を見ていたら、自分も寝ていたと。
ノーマンらしい。
その後、ノーマンは私にひとしきり謝り、私はノーマンを許した。
私はノーマンを許す替わりに条件を着けた。
我が家のことを、もっと教えるように。
条件らしい条件ではないが、私はもっとノーマンと話をするべきだと考えた。
今、私の家族はノーマンだけなのだから。
あの日の夜以降、私とノーマンは夜、書斎で話すようになった。
ノーマンは酒を片手に、私は水で、つまみは私が用意して。
あれ、おかしい?
これはノーマンの罰のはずなのに?
酒につまみに、話相手、おかしい?
私のメリットは?
ノーマンは酒に強くないので、ちょびちょびやっている。
ちなみに、このお酒、ブランデーに近いもので、けっこう度数が高い。
私は、前世では、酒が苦手で、付き合いで飲む程度、今世でも付き合わされるとは…、
だが、こんな雰囲気も悪くない。
うん、悪くない。
ノーマンが愚痴り始めなければ。
私とノーマンの仲は、急速に縮まったように思う。
以前のような、ギクシャクした感じが無くなった。
マーサもどこかで見ているだろうか?
私とノーマンはうまくやっていますよ。
安心してくださいね♪
新しい家族の形が出来たような、気がしていた。
これから、また、始めるのだと。
だが、そんな私の思いは、裏切られる。
1度、悪い方向に向かった流れは、そう簡単に良くならない。
数日後、ノーマンはセルラス伯に、今回の疫病の件を報告しに旅立った。
ノーマンは、年に4回ほど、セルラス伯に会いに行く。
地方領主は、小まめに、報告を行わないといけないのだ。
結構大変なんです。
そして私は、初めてのお留守番ですよ。
初めてのお留守番、初めてのお使いみたいだ。
しかし、私ももうすぐ12歳。
精神的には、50オーバー。
お留守番くらい簡単ですよ。
ノーマンが帰って来るまで、10日余り、平気、平気。
以前はマーサがいた。
でも、マーサはもういない。
屋敷には、私一人。
じゃなかった。
ベスとリリとナナ、シルバァがいる。
マーサがいたころよりも、屋敷内は騒がしく賑やかだ。
ノーマンの私に対する気配りを感じる。
実は違うのかも、しれないが。
ノーマンだもんなぁ~。
私の中での、ノーマン株は上がったり、下がったりしている。
留守番している10日間は、ぶっちゃけ何も起きなかった。
拍子抜けするほど、何もなかった。
強いて挙げれば、ナナが中級魔法の一部を使えるようになった事かと。
正直、リリには剣で、勝てないかもしれない。
まだ、7才にもならないのに。
ナナにも、そう遠くない未来、追いつかれる。
まだ、4才なのに!
この二人は異常だよ!
私も決して、才能がないわけではないのに、この二人は、凄すぎる。
そう言えば、ノーマンが二人の将来が楽しみだ。
と言っていたな。
歴史に名を残すとか何とか…、
私はどうか、と聞いたが、目を反らされた。
悲しい、実の父親に、期待されないなんて!
しかし、鍛練は欠かさない。
体を鍛え、知識を蓄えることは、将来においては重要なことだ。
前世では、知らないことが多すぎて、損ばかりしていた。
その二の轍を踏まないようにしないと。
それに、進路のことだ。
そろそろ決めないと、ノーマンが帰ったら、相談しないと。
私的には、学校に行きたい!
この世界の学校は、前世と余り変わらないかもしれないが、
(授業内容は違うだろうが、)
学校は、色々と得るものが有るはずだ。
そろそろ同年代の友人も欲しいし。
この村には、私と同年代の者がいない。
当然、異性もいない。
居ても、ちっちゃい子や、上のお姉さんばかり。
やはり、健全な精神は、同年代の異性がいて、初めて宿るのだ!
本当に真剣に、ノーマンと相談しよう。
私は心に決める。
等と、している内に、予定日よりも遅れてノーマンが帰って来た。
ノーマンは、険しい顔をして、私を書斎に呼んで一言。
「兵役を命じられた。」
「はい?」
 




