家族?
ノーマンが目の前にいる。
私はノーマンと目を合わせないように、横を向いている。
「見てたのか?」
ギクッ、思わず体が反応する。
ど、どうする。
正直に答えるか?
『はい、見てました。』
ばか、バカ、ばか、真っ正直すぎだ!
そんなこと言えるわけがない。
じゃ、しらをきるか?
『な、なんのことか? たまたま、通っただけで』
あほか、俺。
俺の寝室は2階。
書斎は1階。
トイレは1階の反対側。
たまたまなわけがあるか!
どう答えたらいいか迷っていると。
「は~、恥ずかしいところ見られたな。」
頭の後ろを右手で掻きながらノーマンは言った。
ノーマンの目尻が赤かったのが見えた。
「見てたんだろ?」
「はい」
観念して答える。
「そうか。見られたか」
ノーマンが顔を上に向けている。
「おまえには、恥ずかしいとこばかり見せてるな?」
私は首を真横にふる。
「いいさ。自分でもわかってるんだ。あんまり、父親らしいところ、見せてないもんな」
ああ、ノーマンがブルーになってる。
さらに何かぶつぶつ言っている。
明らかにダウンしている。
こんなに弱っているノーマンは初めて見る。
「と、父さん。あのさ?」
こちらから、声をかけてみる。
「は~、なんか飲むか?」
全然こっちの言葉を聞いてない。
それに私はトイレに行った帰りですよ?
またトイレに行かせる気ですか?
しかし断るのもあれだしな。
私は首を縦にふって返事する。
書斎でノーマンから水を貰う。
「ほら」
「あ、ありがとう」
ノーマンが私を見ている。
な、何ですか?
何か付いてますか?
あんまりじろじろ見ないでください?
ちょっと居ずらい。
「こうして二人でいるのは、久しぶりだな?」
ノーマンが唐突に語り出す。
「あの狩り以来だな?あの後は、マーサが二人で行くな!って散々怒られたもんな」
そして、ぶつぶつと呟く。
「俺だってな。父親の威厳というのをだな。解るか?わからんだろうな」
なんだろう?
何が言いたいんだろうか?
私はノーマンの半ば独り言のような会話に相槌を打ちながら、聞いていた。
「やっぱりダメだよな~。俺は父親なんて知らないし。は~」
うん?
父親を知らない?
「父さん。父親を知らないって、どういうことですか?」
「うん?言ってなかったか?」
いやいや知らんがな?
初耳ですよ?
ていうか私。
家族のことあんまり聞いたことないですよ?
「そうか、そうだったな。おまえにはまだ話してなかっな? 我が家はな…………」
そして、ノーマンは我が家のことを話してくれた。
以前、ノーマンのじい様こと私の曾祖父が有名な冒険者だと、教えてもらったがそれ以外はなーんも知らない。
まず、ノーマンの両親はもういない。
ノーマンが産まれて半年程で母親が。
そして、父親も後を追うように亡くなったそうだ。
死因は病気らしい?
詳しくはノーマンも知らないらしい?
その後ノーマンは祖父母に育てられた。
祖母はノーマンが12の時に、おそらく老衰で亡くなり。
ノーマンは成人するまで祖父にみっちり鍛えられたそうな?
剣も魔法も祖父譲りなノーマン青年は数年で上級冒険者になったとか?
そうな孫の活躍を祖父は楽しみしていたが。
ノーマンが20才の時に亡くなった。
その後ノーマンはマーサと出会い。
冒険者として出会い。
そして引かれあい。
紆余曲折があり二人は結婚。
私が産まれたと。
途中かなりはしょりました。
だって、マーサが出てきた辺りからノロケ話になって行き。
『自分がどれだけ彼女を愛していたか?』
『自分は彼女の為なら死ねる!』
『本当は一緒に死にたかった!』
『なんで俺をおいて行ったんだ!』
と、段々熱くなって行き最後に号泣。
私はノーマンの肩に手をおいて。
「父さん、つらかったんだね?」
と言うと。
ノーマンは私を抱き締めて号泣。
い、痛い、痛すぎる!
そんな強く抱き締めないで!
ほ、骨がきしむ!
く、苦しい。
い、息が、息がで、で、できな。
私は、失神した。
 




