無邪気な笑顔?
貴女もですか?マーサさん!
弓を教えてくれたのはマーサだったのでもしかしたらと思ったら。
うん、まぁ~ねぇ~うん。
もういいよ、ホント、キニシテナイヨ?
マーサは冒険者時代に同じパーティーに居たエルフに弓を習ったそうだ。
ちなみにそのエルフは弓より剣が得意だそうな?
ならエルフたちは皆こんな芸当が出来るのかと疑問に思っていると。
エルフの中でもほんの一握りにしか出来ないそうだ。
200メートル離れた場所で貫通力の高い狙撃。
恐ろしい!
ノーマンがマーサに逆らえない原因はこれか?
……私も気を付けよう。
そんなことを考えながら家路につく。
バルボアはシルヴァがロープを使って引っ張っている。
こんな小さい体で2メートル近いバルボアを運べるのか?
なんて化け物だ!
いや、こいつも化け物で魔物だった。
ノーマンといい、マーサといい、ついでにシルヴァといい、私の周りは化け物揃いだ!
まともな人はいないのか?
家に帰ると幼い子供逹が出迎えてくれた。
従者エルクと使用人ベスの娘逹、リリとナナだ。
オー、なんて可愛い子達なんだ!
私にまとわりついて色々と聞いて来る。
その姿がまた可愛い。
うん、うん、この子逹はまともだ。
こんなに可愛いんだから!
言っとくけど、私はロリじゃないよ!
ロリじゃないからね!
大事なことだから2回言います!
だがこの時、この子逹にあんなことが出来るとは思ってもいなかった。
それはいつもの剣の稽古をしている時だった。
その日も私とノーマンが剣の稽古で、あーじゃない、こーじゃない、と言い合っていたときのことだ。
私は言い争いなんかしてないよ?
ノーマンがいつものように訳の分からんことを言って私が適当に頷いているだけだけどね。
ふと、ノーマンが私から目線を外してある一点を凝視している。
人が真面目に稽古しているのに何見てやがんだ?
と思い私もノーマンが見ているモノを見る?
そして、ギョっとした!
そこにはホウキを剣の代わりにして素振りの稽古をしているリリがいた。
私もノーマンもリリを凝視している。
何故か?
それはリリが持っているホウキに問題がある。
リリの持つホウキはリリの身長よりも高くそして重い!
私も持ったことがあるがなかなかの重さだ。
それを振り回すにはかなりの筋力を必要とする。
その重いホウキを事も無げにリリは素振りしているのだ。
身体強化だ!
見た瞬間、気がついた。
私が4年近く稽古して出来なかった身体強化を、まだ5才になったばかりの女の子が使っている!
あー、なんか涙が出てきた。
「リ、リリ!」
ノーマンがリリの元に駆け寄り両肩を抱き質問する。
「リリ、いつから振っている?誰から習った?エルクか?エルクなのか?」
少々興奮ぎみに質問するノーマン。
あー、駄目だよ。
そんなんじゃ、リリを見て見なさいよ?
リリはノーマンから問い詰められて半泣き状態。
ノーマンの質問に答えようとするものの涙声で言葉にならない。
端から見たらノーマンがリリを怒っているように見える。
あっ、マーサがこっちに向かって来る。
ノーマンも気づいた。
マーサがノーマンの前で仁王立ち
ノーマンが何か説明している。
アアアっと、マーサの右ストレートがノーマンの顔面に炸裂。
ノーマン、ダウン!
立てるかノーマン?
ああ駄目です。
気絶しています。
これはマーサのノックアウト勝ちです。
「こんな小さな子に何するの!」
マーサがリリを抱き締める。
いやいや殴る前に言いなさいな?
そして次の日から私の隣で剣を振るうリリの姿があった。
ノーマンは私に教えた時よりも熱心にリリに指導している。
そんなリリは私にこう告げる。
「お兄ちゃんは私が守ってあげる」
妹のように思っていた女の子に守ってもらう私。
有りかもしれない!
でもなぁ~、なんか違うくない?
そんな私の思いとは裏腹にリリは魔術の稽古も始める。
しかし魔術は剣とは違い全く出来なかった。
剣の才能は有るが魔術は駄目?
まぁ~、中途半端に出来るよりは一芸に秀でた方がいいよね。
私は中途半端だが。
魔術は私が教えている。
何故かって?
察してくれよホント?
リリが魔術に悪戦苦闘している時。
「出来たよ」
声のする方に振り向くとそこには、天使のような笑顔でこちらを見ている女の子が一人。
手には拳大の炎の塊!
ナナだった!
無邪気な笑顔でこちらを見るナナ。
私はめまいを起こし倒れてしまった。




