ある日の日常?
おはようございます。
気持ちいい朝ですね。
私は、10才に成りました。
今日も早起きして村の街道を走っています。
朝から畑に向かう農夫に挨拶しながらカワイイお供をつれて走ります。
カワイイお供、シルヴァは私の後から村人に挨拶します。
村人も気さくに挨拶を帰してくれます。
私のいつもの日常、体作りの一環です。
6才から今日までずっと続けてきた鍛練の一部です。
「今日は気持ちいい朝だな。シルヴァ。」
「ガウ♪」
シルヴァも機嫌良く元気に返事を返します。
シルヴァは本当に頭がいい。
私の言葉が分かるようだ?
マーサは大狼の一部は人間の言葉を理解できる個体がいると教えてくれた。
シルヴァもそんな個体の一体かもしれない?
しかし、シルヴァは出会ってから一年近く経つのだが体は小さいままだ?
他の狼や、犬ならもっと大きくなって成犬に近い大きさに成るはずなのに?
シルヴァは、成犬と幼犬の間で成長が止まっているようだ。
それに大狼の特徴、銀色の体毛も今はまだない。
縦髪にうっすらと銀色が有るだけで全体的に灰色がかっている。
まぁ、個体差が有るみたいだからシルヴァは成長が遅いほうなのだろう。
それに今のままほうがカワイイからこっちのほうがイイ。
成犬じゃない成狼に成ったら今の可愛いシルヴァが居なくなってしまう。
それは嫌だ!
どうか、今の可愛いシルヴァでいてくれ!
そんなことを日々想いながらシルヴァと走る。
走り込みから帰って来て頭から水を被って汗を流す。
うん!気持ちいい。
シルヴァにも魔法で出した水をかける。
シルヴァは体を震わせて水を切る。
「気持ちいいか?」
「ガゥ」
うれしそうに答えるシルヴァ。
汗を流して朝食をとる。
一家団欒の風景。
ノーマンが私に畑の様子や、村人のことを聞いて来る。
私はそれに有りのままを話す。
ノーマンは頷いたり質問したらりする。
そんなやり取りをマーサは見ている。
時にはノーマンと一緒に質問したり。
時にはノーマンに突っ込みを入れたり。
時にはノーマンに拳が飛んできたり。
そんなたわいない日常の朝が楽しい。
その後は、マーサや使用人ベスと一緒に家事を手伝う。
最初の頃は嫌がられたが、やがて独りで生活する時に何もできないのは嫌だというとマーサもベスも何も言わなくなった。
それどころかどんどん家事の量を増やしていく!
自分から言い出したので文句は言えないが少しは減らして欲しい。
家事をしている私をマーサは笑顔で見ている。
『ほら、頑張りなさい』
口には出さないがそんなことを言っているような気がする。
ノーマンは朝から村の巡回。
しばらくして帰って来たら村の陳情や伯爵への報告書、警備計画や税収報告の予定書、等々やることが沢山有る。
大変だね、大人は。
そして私はマーサと一緒になって村の子どもに読み書きや、算数を教えている。
私は6才の時には読み書きも算数も出来たので、5、6才の子どもに教えている。
私より上はマーサが教えている。
そんな時にはシルヴァは部屋の隅にちょこんと座って聞いている。
驚くことにシルヴァは簡単な足し算や、引き算が出来るのだ!
私が不意にシルヴァに質問したら最初は泣き声で数で答え、しばらくすると床を爪でガリガリと削って数字を描いて答えたのだ。
凄すぎるぞシルヴァ!
そして、小さな子どもたちとワイワイ騒いでいたらマーサがやって来たので説明すると、誉められるより前に私とシルヴァは床を傷つけたことを叱られた。
そっちが先ですかマーサさん?
そしてシルヴァには子どもたち同様に砂のノートが渡された。
午後からはノーマンの剣術と魔術の授業。
私はノーマンから4年間習っているのだがノーマンは人に教えるのが下手だ!
ノーマンの剣術は『竜王剣』と言うアルマルス王国では誰もが知っている剣術だ。
この竜王剣は魔力を使って身体能力を向上させ、また、剣に魔力を乗せることで切れ味を増すのである。
要するに、ただ闇雲に剣を降り続けても意味がなく、魔力を上手く剣に使えなければいけないのだ。
最初の頃は、型から始まり型を体に覚え込ませ、その後に魔力を剣に伝える方法を学ぶのである。
型を覚えるのは、わりかし簡単だった。
転生前も記憶力には自信があったがこの体も物覚えはいいようだ。
あの大ケガのあとはイメージ通りに身体を動かすことができる。
まさに怪我の功名だな!
しかし、魔力を剣に伝える方法が難しい!
ノーマンが実際に見せて説明するのだが、この説明が下手なのだ!
「いいか。こう体から魔力をだな。ズオオォ~と出してだな。腕にググゥッと集めて。そして、ズバンと降り下ろすのだ!」
え~今の説明で理解出来ますか?
ハッキリ言おう、私には理解出来ない!
て言うか皆これで理解出来るの?
私が理解出来ないとノーマンに言うと。
「そうか?父さんはおじいちゃんに習ったが、まぁあれだ。おじいちゃん曰く、センスがないと分からないそうだ。」
うん!待て。
それはあれか。
私にはセンスがないと言っているいるのか?
というか、センスがないと分からない剣術を息子に教えるのはどうなんだ!
「う~ん、父さんはお前ぐらいの歳には出来たぞ。お前は出来ないのか?」
「出来ません!」
「そうか、お前は剣の才能が無いのかも知れないなぁ~。は~。」
なんだそのため息は!
それに剣の才能が無いだと?
お前の教え方に問題が有るんじゃないのか?
正直、剣術は型を覚えてからは行き詰まっている。
そして、魔法の方はと言うとこちらは正直頑張った!
異世界にいるのだから魔法だけはなにがなんでも物にしたかった!
そして案の定ノーマンは教え方が酷かった。
「よし、いいか。まず、手のひらに魔力を集めるんだ。こうだ!」
「えっこう?」
「違う。こうズオオォ~とだな。」
「ズオオォ~?」
「そうだ!そして、ポンっと出すんだ。」
「ポン?」
こんな感じです?
正直、全然分かりません。
ノーマンの教え方は万事こんな感じです。
どうして擬音ばっかりなんだ!
魔法に関してはポンコツなノーマンに代わってマーサが教えてくれた。
「いい。魔法はイメージが大切なの?」
「イメージ?」
「そうイメージよ。頭の中に火の玉をイメージするの。」
「火の玉?」
「そうそして、手のひらに火の玉を浮かべている姿をイメージするの。」
「火の玉を浮かべる?」
「目を閉じて思い浮かべるの。さぁ、やってみて?」
「目を閉じて、思い浮かべる?」
私は言われるがまま目を閉じて両手を前に出した。
「そう集中して、って出来てるわよ!」
「へっ、出来てる?」
マーサに言われて恐る恐る眼を開けると。
手のひらに火の玉が!
「オ、オオー、で、できた!」
思わず絶叫していた!
初めての魔術、初めての火の玉!
これを喜ばずにいられようか?
「ダメよ!集中しなさい!」
「えっ?」
我に帰って、手のひらを見てみるとそこには拳大の火の玉が頭ぐらいの大きさになっていた。
「おわっ!」
「くっ、ウォーターボール!」
マーサが咄嗟に、水魔法の初歩魔法ウォーターボールを私にかける。
威力は低めで私は全身ずぶ濡れ、火の玉も消えていた。
「集中を切らしたら危ないのよ!」
「ごめんなさい」
集中を切らした魔法は暴発する。
始める前に注意されていたが魔法が出来た喜びに我を忘れていた。
マーサにしこたま叱られたがその後も魔法の練習に付き合ってくれた。
完全に火の初歩魔法ファイアーボールが出来た時には、一緒に喜んでくれた!
魔法が出来た喜びはマーサと一緒に喜んだことと、ノーマンの寂しそうに私達を見ていたことを忘れない。
その後魔法は順調だった!
ノーマン曰く『お前は剣の才能は無いが、魔法の才能は有る』そうだ。
ノーマンは私に剣の才能が無いのを悔しがったが、私は剣術を諦めてはいない!
魔術も出来た、なら剣術だって!
しかし、剣術はやはり魔法のようにはいかなかった。
ちなみに魔術は中級魔法迄は使えるようになっていた。
この年で中級は凄いらしい。
私も少し天狗になっていた。
そして午後の剣術、魔法の稽古が終わる頃には日も暮れて、夕飯に。
夕飯の後には、就寝するまで本を読むのが日課になっている。
本は凄く高価な物だが、ノーマンが私にと誕生日にプレゼントしてくれた!
ノーマンありがとう。
そして、私はシルヴァと一緒に就寝。
明日も、この日常が続くように祈って。