我が家の番狼?
あの初めての狩りから一月が経ちました。
あの子狼に名前を着けました。
「シルヴァ」
我ながらいい名前だ。
しかしノーマンは。
「平凡だな?もっとこう、なんかあるだろ?」
「じゃ~、何て名前にします?」
「そうだな。アラランカルってのは、どうだ!」
「長くて言いにくいわ。却下!」
マーサがダメ出し。
「じゃ」「シルヴァで良いわ。ゴロもいいし。凛々しい感じがするし」
ノーマンが次の名前を言う前にマーサが被せて私の案に賛成する。
「でしょ!やっぱりシルヴァでしょ!」
「そうね~。シルヴァいい名前だわ」
「いやだから、俺の」
「シルヴァに決定ね」
「じゃあ、今日からお前はシルヴァだ!」
「ガウ」
「俺の意見は?」
という訳でシルヴァに決まりました。
子狼シルヴァは大変賢い狼で、お手、お座り、待てはもちろんトイレの場所も簡単に覚える優れもの。
いや~いい狼を拾ったものだ。
だが、私はこの子狼にとっては親の仇にあたる。
それが少し気がかりだ。
あの日、初めての狩りの日。
大狼を倒した後にシルヴァに会った。
シルヴァは大狼に近づいて弱々しく哭いていた。
それを見てノーマンは子狼を殺そうとした!
「ま、待って」
「なぜ、止める。今は小さいがすぐに大きくなって人に危害をあたえるかもしれないぞ?」
「で、でも?」
何て言えばいい。
可哀想だから?
小さくて可愛いから?
ウーン、ありきたりだ。
そう悩んでいたらシルヴァは私の足下に来て顔を足にこすりつけていた。
か、カワイイ。
「家で飼いましょう。父さん」
「本気か?」
私は即決していた。
ノーマンはやれ危険だ、母さんに何て言う、
魔獣なんだぞ!危なすぎる、等と言い私を説得するが私は聞く耳を持たなかった!
シルヴァが上目遣いで私を見る。
眼を潤ませて。
か、カワイイ。
何度でも言おう。
カワイイ。
カワイイは正義だ!カワイイは最強!
カワイイは正義!カワイイは最強!
大事だから2度言います。
ノーマンは私の頑な態度に驚きやがて折れました。
「わかった。好きにしろ」
「ありがとう、父さん」
その後、大狼を魔術火球で燃やし埋葬する。
そのまま土葬にするとアンデット化するそうだ。
そして、血まみれの私は水魔術で全身を洗う。
寒い!
まだ季節は初夏だが全身水浸しはさすがに寒かった。
そんなこんなで時間がかかり家につく頃には日も暮れていた。
マーサとの約束は日暮れ前に帰ること。
大丈夫かな、怒ってるんじゃあと心配する私にノーマンは。
「心配するな。父さんに任しなさい!」
と帰る前は威勢の良かったノーマン。
そして、母マーサの拳に撃沈。
父親の威厳は皆無だった。
私は、シルヴァをじっと見る。
シルヴァは、何?と小首を傾げる。
か、カワイイ。
思わず抱き締める。
カワイイは正義、カワイイは最強!
カワイイは正義、カワイイは最強!
私の心配を余所にシルヴァは良く私になついていた。
何処に行くにもシルヴァは付いてくる。
少々、煩わしく感じることもあるが、そのたびに上目遣いで私を見るその姿が。
カワイイ!!
うん。カワイイから許す。
やはり、カワイイは偉大だ!
世の中は、もっとカワイイで溢れるべきだ!
カワイイ万歳、カワイイ最強!
カワイイ万歳、カワイイ最強!
は、いかん、いかん。
シルヴァは母マーサにもなついている。
しかし良く見ると私に付いてくる時は尻尾をフリフリさせるのに、マーサの時はピンとまっすぐに立っている。
あれはなついているというより怖がっているんじゃ………
そしてノーマンは、威嚇されていた。
「あいつは、なんで毎回、毎回、私を威嚇するんだ?」
「そうですか?」
「そうなの?」
「ガゥ?」
小首を傾げるシルヴァ。
やはりカワイイ。
「おい、シルヴァ」「ガルルルゥ、ガゥ!」
「なついてますね?」
「なついてるわね?」
「ガゥ?」
「いや、もういい」
つまり現在の我が家の力関係は?
マーサ>私>シルヴァ>ノーマン
哀れノーマン……




