危機一髪
総理大臣官邸に急ぐ、既に警告は伝えたものの、自体があまりにも急激に推移した為、官邸の危機管理室はまだ立ち上がり切っていなかった。
総理に事情を説明し、迎撃ミサイル発射の許可を求めます。
話を聞いた総理は机に向かって歩き始めます。
「君とのつきあいは楽しかったよ。出来ればもっと長く続けたかったが…。」
「総理?」
「短い総理生活だったが、君と一緒に仕事が出来て良かったよ。」
総理が電話機の受話器を取り、
「防衛大臣を呼んでくれ、あぁ大至急だ」
「総理」
「自分の政権と全人類なら私は全人類を選ぶさ、指令破壊が間に合うか確認を頼む。」
「ありがとうございます。それでは。」
中央コントロールルームに戻ると、副局長が駆け寄ってきます。
「ダメだった、1発漏れた。自衛隊は?」
「総理の許可は取れた。総理に連絡しよう。」
東側から進入許可が出て、AWACSが全速で飛行しながら軌道を測定して伝えてくる。
射程範囲ギリギリであり、この射程で迎撃出来る事自体が軍事秘密に当たるが、もはや躊躇する余裕はなかった。総理の命令で迎撃ミサイルが発射された。
その数分後、無事に迎撃ミサイルの1発が命中し、ミサイルは破壊された。
東側の国は、もし実際にミサイルが落ちていれば原因が解っていても反撃せざるを得なかっただろうと言っていた。世界はギリギリのところで核戦争の危機を免れたのである。
数日後、国会では集団的自衛権の不適切な行使だとして野党に責められる総理の姿が有った。
恐らく政権は持たないだろう。だがテレビの中の総理はとても清々しい表情をしていた。
このような議論が出来る事自体、世界の平和がどうにか保たれた証拠なのだから。
私も局長の座に居るのはそう長くは無いだろう。
だが、新たな暮らしもきっと悪くは無いだろう。
この平和な世界で暮らせるのだから。