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有難いカミサマ

作者: SAME


 「なんでこんなもんが落ちてくんの…!!ていうか、下手すりゃ死ぬでしょこれ…!」


 私は、横倒しになった自転車の上から起き上がった。

とっさに避けたからよかったものの、盛大に転んでしまったじゃないか。


 目の前にあるのは、道路を塞いで地面に突き刺さっている巨大な・・・


 洗 濯 バ サ ミ ・・・??


 さすがにプラスチックではないみたいだが、なんだか指紋がついただけでも目立ちそうなピッカピカの金属でできていて、胴体(?)の部分に楕円形の穴が開いている。

で、特徴的なのは、頭部分(?)がウサギの耳みたいに2つに別れていること、そしてその間を、

グニャグニャした金属でつないであることだった。


 うん、説明下手なのはわかってるよ?

でもこれ、どうみたって洗濯ばさみっぽいんだけど。私的には。


 「ちょっと真由ちゃん、大丈夫かい?にしても、なんだろうねぇ、これぇ?」


 近くで農作業をしていた知り合いのおばさんが駆け寄ってきた。

後ろの方から、地響きを聞きつけた村の人達がガヤガヤやってくるのも見える。


 「なんとか大丈夫―見ました?空から落ちてきましたよ、このでかいの!」


 そう言って私は天を仰いだ。

空は青い…じゃなかった、特に異常は見られない。

大体、ここは農道なので周りに高い建物もなけりゃ、こんな馬鹿でかい物を落とせそうな大木や鉄塔だってありゃない。


 「あー、これ、あれだべ?この村にも観光客呼ぼうっちゅーことで、

商工会か誰かが作ったんじゃねーの?」


 「んなもん、なんでわざわざ落とすような真似すんのさ。」


 「話題性だ、話題性。人工衛星とか利用すればできるしょや。」


 集まってきた人達は好き勝手なことを言っている。

なんでもいいけどさ、コレのせいで私の自転車、凹んじゃったじゃないか。

3万円貯めるの結構大変だったのに・・・くらえっ、怒りの回し蹴りっ!!


 「あばばばばばばばばばばば・・・ぷひゃぁ・・・。」


 突然の電撃に、思わずよろけてしまった。

農道脇の用水路に落ちそうになったところを、近所の渡辺さんに助けてもらう。


 「真由っどうした、大丈夫か?!」

 「触ったら、ビリビリって・・・あれ?!」


 びっくりしたけど、それほど強い電気でもなかった。

それより、なんだか全身がフワフワする。右肩・・・左肩・・・太ももも・・・


 「軽いっ!肩こりと筋肉痛が治ってるっ!!うっそぉ!!」


 「な、何?どれ・・・うをぉおおおおおおおおお・・・・・?!」

 「わ、渡辺さーん!」

 「渡辺さん、しっかりしれ。」「大丈夫か?」

 

周囲が見守る中で、渡辺さんはプシューっと煙を出してじっとしていたが、

突然、立ち上がって叫びだした!


 「関節痛が消えとるっ!ははは、走れるしゃがめる!ジャンプにスキップも楽勝、楽勝だー!!」


 「な、なんだってー?!」



 その後の展開については、簡単に説明しておこう。

その場にいた人は皆、変な物体に手を伸ばし、仲良く怪電流を流された。その効果はすごいのなんの・・・五十肩もリュウマチも、痔まで治っちゃうんだから、あなどれない。

 2時間後には、噂を聞きつけた『隣のさらに隣の町』からやってきた人達までも加わって、

辺りは恐ろしいほどの大混雑となった。出店まで出ていて、お祭りの様・・・。


 私も綿アメぐらいは買いたかったけれど、警察の事情聴取に付き合わされてそれどころじゃなかった・・・第一発見者も大変だよね。

にしてもさぁ、何度聞かれても、落っこちてきたって事しか分からないって。


 「それは分かっているけどね。一応、報告書にまとめなきゃならないからさ。」


 駐在さんは、目の横で指をクイクイ動かして、メガネをかけてなかったのを思い出すと、

ごまかすようにアレの方を向いた。(仕事の前にちゃっかり触ってきたのだ、このオジさんは。)


 人だかりから、わっと歓声が上がる。人山越しにちらちら見えるのは・・・横井さんだ。

そうか、長年事故で寝たきりだった奥さんをアレで治したんだ。本当になんなのだろう。すごい奇跡!

 どんどん病院やら介護センターやらからの車がやってきて、何の変哲もない農道が、大人気になっている。


 「もしかしたら、アレは神様からの贈り物なのかもしれないね。」

 駐在さんはしみじみと呟いた。


 どうなんだろう?

いくら神様でも、もう少しかっこいい物体をくれると思うのだけれど。

・・・ま、いっか。みんな幸せそうだし。



 遠藤さんとこのおばぁちゃんが、アレにしめ縄をはろうとしている。

あんな変なのが『ご神体』かぁ・・・。


日も段々落ちてきたけれど、しばらくこの熱狂ぶりは止まらなそうだ。



※※※※※※※※


 「おい、奴らまったく怯えるどころか、興奮して群がってくるぞ!

しかも数がどんどん増えている!!」


 「やはり、船外へ出て直接戦った方がいいんじゃないか?!」


 「ダメだ!この星の酸素濃度と気圧だと、こちらの方が不利だ・・・おい、電力を最大限に上げろ!

無益な殺生はしたくないが仕方がない。

早いところ、船の周りからどかさないと、いつまでたっても帰れないぞ。」


 「船長!一切効いていません!それどころか、今まで動かなかった生体まで活動を始めました!!

逆効果ですっ!」


 「わ・・・我々の致死量以上をもってしても、ダメだというのか・・・!!どうなっている。

どうすればいい?!」


 ほんのちょっとのミスだった。この先の巨大な星を観察するつもりが、機械が狂い、

この液体と個体が混在するどっちつかずの星に墜落してしまったのだ。

(この辺は電磁波が狂いやすいと警告されていたのに!)


もっとも、この船は頑丈だったから壊れはしなかった。

けれど、先端部分に設置してある星向センサーが埋まってしまい、

逆噴射で船を持ち上げてセンサーを堀りだそうにも、

いつの間にか集まってきた、この星の生物に押さえつけられて身動きがとれない。


 「きっと、珍しいんですよ、宇宙船が。

それは仕方ありません、文明がまだ追いついていないんでしょうからね。

連中が飽きるまで待ちましょう。」


 「何をのんきな。

奴ら、揃いも揃って船を攻撃しているんだぞ・・・なぜ武器を使わないのかが不思議だが。

いや、それよりなぜ、電流に臆せず外壁をたたくのだ?!

どうして外壁をつかんで離そうとしないのだ!!」


 一匹の生体が、怪しげな紐で船を縛ろうとしている。

その周りにいる集団も、浮かれた様子で協力しようとしているようだ。



何をする気だ・・・何をする気なんだ・・・奴らは何がしたいんだ?!



 ベタベタ・・・ドカンベタン・・・ドンドン・・・



 我々は、外から響いてくる外壁をたたいたり張り付いたりする音と、この星の生物の意味不明な行動に震え上がった。


意図が見えないのが一番怖い。早く、我が星の救助隊がこないものか・・・。





お読みいただきありがとうございます。



後半の宇宙人は、深海魚のような生物…という設定があったんです。

生かせなかったですが。

最後、もう少し不気味な描写できるようになりたいなぁ…。

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