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【文章】 意味深に見せかけよう!

 意味のない文章は読む価値がない、と私は思います。


 もう少し優しく言い換えるなら、ただ言葉を並べるだけならコンピューターだってできるのだから、並べた言葉に込める意味を考えなければ、それは無価値なんじゃないの?という感じ。


そのリスは木登りが苦手だったが、美味いと噂の木の実がどうしても食べたかった。そこでリスは梯子を作ろうと考えた。でも出来るのは不恰好なものばかり。それでも試行錯誤を重ね、ついに美術品くらい立派な梯子が完成した。早速リスが足をかけると、次の瞬間パキリという音が……。 #twnovel


 このTwitter小説は私が書いたものですが、元になったテーマはまさにこのことなのです。いくら綺麗に整えたところで、目的から離れてしまっては役に立ちません。


 これは自分の経験でもあります。私は以前は特殊能力を持ったキャラがひしめく世界が舞台の小説を書いていましたが、それは結局のところ、自分の書きたいものとは違っていました。ただ単に、読んでくれる人を集めようとして、エンターテインメント的な小説を書こうとしたのが動機だったのが失敗だったのです。

 つまり最終的な目的が無ければ、その場しのぎに言葉を並べた所で目的地には着けないのです。R15なシーンだけで視聴者を獲得しようなんてアニメだって、結局は一期で終わってしまうものです。それよりはまだギャグアニメの方が数倍マシです。どう笑わせるかを追求して既成概念を揺さぶったりする、突出した笑いを持っている作品は十分に有意義でしょう。


 話がそれてしまいましたが、とにかく私は意味の無い、あるいは見えないものに、作る必要性を感じないのです。特にこれをTwitter小説を読んでいて感じます。そうでない作品もあるのですが、そういう作品はどちらかというと少ない気がします。具体的に例を挙げるのは避けますが、


”幽霊が男に襲いかかった。すると男は歌を歌い出した。その音色で幽霊はすっかり落ち着いた”


みたいな「だから何?」感に溢れたTwitter小説が多い気がするのです。


 文章を書くということは伝えたい何かがあるはず。それが無いのは書くだけ無駄、と断言してしまってもいいくらいです。別に面白いオチをつけろなんて言わないし、価値観の違いと言ってしまえばそうかもしれません。でもそんなのが評価される世界なら、私は今すぐに筆を折ってやります。


 ならどうすればいいのか、というのを、ちょっと強引に説明していくことにします。では、さっきの例に意味を持つように手を加えてみましょう。


 具体的に「だから何?」感を列挙すると、


・なんで歌い出したのか?

・なんで歌で落ち着いたのか?


という感じ。普通、幽霊に襲われたら驚いたり悲鳴を上げたりするものですよね? それに歌といっても、知らないバラードに突如聞き入る人なんかそうそういないはずです。


 だからこれを補うには、


・男はプロの歌手だった

・その歌は幽霊が生前聞いていて好きな曲だった


とかが考えられます。で、それを取り入れると下のようになります。


”幽霊が人気歌手に襲いかかった。すると彼は歌を歌い出した。その音色で幽霊はすっかり落ち着いてしまった。そう、その曲は幽霊が生前好きだった曲だったのだ。”


 これで完成……なんてハズはないですよね? まだ情報を足したために生まれた「だから何?」感があるのです。


・なぜ歌手はその歌を歌ったのか?

・なぜ人気歌手が狙われたのか?


 この世界には幾千万の歌がある訳ですから、そこから幽霊の好きな歌を偶然当てるなんて芸当は不可能に近いのです。それに、さっきは「男」という不特定の人物だったから特に気になりませんでしたが、「人気歌手」となったことで、どうして襲われたんだろう、と読んでいる方は思うはずです。


 だからさらに情報を付け足す必要が出てきます。


・その歌手は幽霊の生前を知っていた。

・幽霊は人気者が嫌いだった


 そこからさらに掘り進めていくと、こんな感じになります。


”その幽霊は人気者が嫌いだった。生前は少ない友人達と教室の陰にいるような、そんな生徒。だから彼は人気歌手を襲うことにした。しかし意外にもその歌手は、ある歌を歌い出した。それを聞いた幽霊は動きが止まった。その曲は生前に友人達と歌っていた、くだらない替え歌だったのだ。 #twnovel”


 これでこの文章によって「人気者を疎ましく思っていた幽霊が、人気者になった友人と再会して感じた感情」が伝わる訳です。( 「#twnovel」については、「『ついのべ(Twitter小説)』とは?」を参照のこと)


 ただし、この文章も完全に情景を描き切っている訳ではありません。


・なぜ動きを止めたのか


 それが明示されないまま、終わっているのです。これは、あえて書かないことでそこを読み手に考えてもらう、という私の好きな、そしてとても意地の悪い手法です。もちろん、それは恐らく自分の仲間しか知らない替え歌を歌ったということから、かつての友人だったと悟ったのだ、と考えることはできますが、もしかしたら替え歌がくだらなすぎて呆れたのかもしれないし、逆に替え歌にノリノリになったのかもしれません。

 このように、読み手ごとに違った「意味」を生み出すことができるのが、この手法なのです。


 そういう読み手の気持ちを考えながら書くことで、意味のある深いTwitter小説、のようなものになるのではないでしょうか?

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