表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/6

【文章】 魅せ方を考えてみる

 これは小説全般の基本(?)かもしれませんが、設定を隠しながら書いて行くことで小説らしさを演出することができます。個人的には、作者が巧妙に落とし穴を作って読者を騙すような感覚です。もちろん読者も落とし穴に気をつけながら歩くので、読者が何を感じるかを想像しながら落とし穴を隠さなければなりません。


 例えば、前回「時計」から連想して「長針、短針×カップル」をお題に書いた拙作ですが



「愛別離苦」 「僕は必ずまた君に会いに来るからっ!」「絶対……絶対よっ!」「あぁ、絶対だ。それまで待てるかい?」「うん。また会えるって信じてるから」「もう時間だ。行かなきゃ」「ねぇ、電池が切れてもまた会えるわよね?」「それはどうだろう」長針は短針にそう言った。 #twnovel



 この場合、登場人物が長針と短針であることは隠して、ただのカップルの会話からスタートしています。こうすると読む側は「カップルの会話なんだな」と思う訳です。そこで最後に登場人物を明かすことで、「えっ、長針と短針?……あっ、なるほどね」と驚かせることができます(できてるか自信はありませんが)。


 ではどうやって隠しながら書いていくか、もしカップルの方を隠して書いたらどうなるかを例にして、書くのが難しいですが、考えてみます。



 まずは「①初期設定」を考えます。この場合は「長針と短針が登場すること」が該当します。ここから単純に「長針と短針がいた」と書いてもいいのですが、最終的にカップルだということに繋げられそうかというと、難しいところです。



 そこで「②ストーリーに必要な鍵」を考えます。この「ついのべ」のストーリーはまだ無いじゃないか、と思われるかもしれませんが、既におおまかな枠組みはできつつあります。それを簡単に書くと、


長針と短針が登場する

???(カップルだとは分からないが、後から考えてみればカップルとしてあり得る状況である)

実はカップルだということが読者に分かる


となります。この「カップルだとは分からないが、後から考えてみればカップルとしてあり得る状況である」ことが「ストーリーに必要な鍵」なのです。ここで「これは面白い!」と思う鍵を見つけられるかどうかが、出来に関わってきます。



 ではどうやってそれを見つけるかですが、ここで私は連想を思い返します。「時計」の連想から今回関連するものを抜粋すると、おおよそ下のようになります。


時計 → 長針、短針 → 競争

時計 → 長針、短針 → 兄弟

時計 → 時計台 → 待ち合わせ → カップル

時計 → 時計台 → 修理工 → おじいさん


ここから考えられる展開としては、


・長針と短針が競争している → 実はカップル

・長針と短針が兄弟(だと思わせる) → 実はカップル

・長針と短針が(カップルとしてではなく)待ち合わせ → 実はカップル

・長針と短針が修理されている → 実はカップル


などが考えられます。ここは素直に3つ目を鍵に採用するのが良さそうです。



 これでストーリーはほぼ決まりました。


長針と短針が登場する

待ち合わせしている(カップルだとは分からないが、後から考えてみればカップルとしてあり得る状況である)

実はカップルだということが読者に分かる


 あとは「③擦り合わせ」です。長針と短針がカップルとしてではなく待ち合わせしている状況を考えます。


 最初に登場する長針と短針は、ただの時計の針、もしくはその擬人型としての設定しか持っていないので、時計の針自体の特徴、特質から考えます。


 時計の針が待ち合わせ、とくれば、12時などに針が重なる瞬間が、まさに待ち合わせっぽいですよね。即採用です。するとストーリーはこうなります。


長針と短針が登場する

重なる時間に待ち合わせをする

実はカップルだということが読者に分かる



 これに「④味付け」をしていけば、もう「ついのべ」は完成です。このストーリーを基本にしながら、アレンジを加えていきましょう。ただし味付けする時の注意ですが、うっかり設定を書き漏らしてしまわないようにしてください。自分が読むときは脳内補完してしまいがちになるので、必ず見落としが無いかチェックしながら書いていきましょう。


 今回紹介したのはあくまでも一例(というか困った時の逃げ道みたいに使ってます)で、他にも色々な方法があると思われます。自分なりの魅せ方を研究してみてはいかがでしょうか?



 ちなみに、できた拙作はコチラ。



「正午」 「どうせまた正午に会うんだし」そう言って長針は短針と別れた。彼にとって別れは日常茶飯事。人間は別れを悲しむが、それが彼には分からなかった。だが暫くすると、突然長針の脚から力が抜けた。電池が無くなったのだ。そして長針は知った。愛しい人に会えない悲しさを。 #twnovel



会話から入ってみるのも、書き出しの方法の一つです。最初から悲劇を書こうとした訳ではないのに、こうして意図せずに悲劇になったりするのが「ついのべ」の面白いところだな、と思ってます。

拙文をお読み頂きありがとうございます。

誤字・脱字、またご意見がありましたら感想にお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ